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ライティングとサウナの意外な共通点

「なんでこんなライティング・ゼミを
始めちゃったんだろう」

もうひきかえせない。
申込みも済んだ。
料金の44,000円も支払った。

でも思ったほど書けなくて悩んでいる。

2000字の記事を書かなきゃいけないのに
また687字しか書けていない。

信じられない。

書き始めていい感じに
書けていると思ったのに
まだ半分も進んでいない。

2000字なんか400字詰めの
原稿用紙6枚くらい
書けばいいんだから
できそうな気がするが、

まだ2枚目あたりで
止まってしまった。

富士登山で
5合目から始めたのに、
まだ6合目くらいな感じ。

ゴールはまたまだ先で
かなり絶望的な状況だ。

見えているのに
たどり着けそうにない。

いっそ今から違うことを書き直そうか、
いや、ここまで頑張ってきたんじゃないか、このまま書いてしまえ!
というところで頭の中で
行ったり来たりしてぐるぐるする。

天秤はどちらにも傾かず、
シーソーが上がったり下がったり、
そんな状況だ。

一旦書き始めるとすいすい書けるのに、
また止まっては走る。

間隔の短い信号機に
全て引っかかるような
一向に進む気配がない。

表記されてる文字数を見ても
ほとんど進んでいない。

このライティング・ゼミ
冬休み集中コースは
毎週月曜日の23:59までに
提出しないと、
受け取ってもらえず
フィードバックの対象にならない。

それで昨日は日付が変わって出したので
記事の受取りはダメになったのだが
今日も提出があやしい。

例え間に合ったとしても
採用基準に満たないと
編集部からOKはもらえず
掲載されることはない。

こんな悩んで書いた記事が
受かる自信は全くなかった。

そうやってもう何回落ちたんだろう。

他の受講者の記事は
どんどん掲載されるのに、

一人だけ取り残されて
迷子になっている気分だ。

だからもう、
ここらで書くのを辞めたい。

別に書かなくても
誰からも何も言われない。

お金だってちょっと奮発したけど、
ここまで勉強させてもらったのは
充分に元が取れたと思う。

あとは自分のペースで
好きに書いたらいい。

むしろ書かなくてもよくて、
こんな苦しみからは
解放されて楽になりたい。

友達と入ったサウナもそうだった。

この暑さに耐えられず
一刻も早く出たいのに
友達や他の人は出る気配がない。

我慢大会がいきなり始まった感じ。
なのに自分からは辞められない。

ダイエットするための筋トレもそうだ。

あんなに苦しいならやらなくてもいい。
何とか生きてるもん。

そりゃあ、
ちょっと前に憩室炎にはなった。

腸の中の憩室ってところが、
炎症を起こした。

激痛と絶食して
1週間おかゆしか食べられなかった。

でも今は生活できている。

好きなあんこを食べるし、
揚げ物だって食べる。

我慢することはない。

だけどあと2回残っていた。
この課題さえ出せば
あとは楽になれる。

そう思ったら吹っ切れたのか
気分が軽くなってきた。

お昼に気分転換に買った本、
原田マハの『本日は、お日柄もよく』
を読もう。

家路へのバスの中で座って読む。

しばらく読み進めていくと
おかしなことにに気付く。

バスの景色が大分進んでいる
もうすぐ家に着くのだ。

誰かが景色を早送りしたのか
いつのまにかワープしたみたいに
もうページが半分過ぎている。

急いで家に入る。
続きが気になり残りを読む。

部屋の中が薄暗くなり
寒くなってきたたけど
いいところだからやめたくない。

ページをめくる手が
止まらない。

どんどん読めるのだ。

「なんだこの本! 読める! 怖っ!」

思わず本を置いた。
めちゃくちゃ読めるのだ。

ライティング・ゼミで
おすすめされた本だが、
その凄さが分かる。

書くことがどういうことか、
ライティングをやってきたから
この凄さが分かったのだ。

今なら書ける!

そう確信して、
そのまま課題に取り組んだ。
2000字の記事を2時間くらいで書いた。

書く前にもう一度読み返した。

「どうか掲載されますように!」

祈るように送信ボタンを押して
結果を待った。

受験生が結果を待つように、
大人になって受験生の気持ちを
再び思い出した。

そして、
結果発表のコメントが届いた。

「Web天狼院書店に掲載します」

やった!
受かった!
載せてもらえる!
待ちに待ったコメントだ!

仕事中にもかかわらず
ガッツポーズをした。

改めてフィードバックしてもらえた
メッセージを読む。

安心した。
夢ではなく現実だ。
ちゃんと掲載もされている。

そして次の日も勢いよく提出でき、
2日間連続で掲載された。

全ての課題を出して
終わってみると、
サウナから出てきたような
爽快感がある。

あの我慢した後の
扇風機を浴びながら飲む
冷たいコーヒー牛乳。

筋トレで鍛えた筋肉は裏切らないように、
ライティングも裏切らなかった。

書けば書くほど、その力はついたのだ。

だから2年後にまたしても
ライティング・ゼミ2月コースを
受けることにした。

あれだけ書くことから
解放されたかったのに、
また書くことに縛られたくなった。

今度は4ヶ月掛けて
16回の課題提出に取り組む。

前回より長い期間だ。

さぞ、解放された時の気持ちは
いいに違いない。

再び申込みボタンを押して
ライティングの世界へ飛び込んだ。
《おわり》

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