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「伊丹堂のコトワリ」Kindle版発行の経緯

さて、このたび発行の運びとなった「伊丹堂のコトワリ」の発行の経緯、ということなんですが、その元になった『オムレット』から話すと長くなりますので、そちらは割愛します。

とにかく『オムレット』の後は、インターネット上でエッセイ的なものを書いていたんですが、そのうち『オムレット』の中でやっていた「伊丹堂の蛇足」という、伊丹堂と獏迦瀬の対話という書き方が気に入り、これの続きとして「倫理ってなんなんだー」を書いたのが、2001年。

いまから思うと『オムレット』から、その続きのエッセイに至るまでには、相当なブランクがあったような気がするのですが、こうしてふりかえると、
『オムレット』が1999年、それから黒猫房さんに声をかけられて、倫理の話のもとになった「臓器移植」の話を書いたのが、2000年、「倫理」を書いたのが、2001年ですから、けっこうなハイペースでものを書いてましたね。

その間、まあ一時は社会的に消えた形になりつつも、黒猫房さんの「カルチャーレビュー」で2006年まで「伊丹堂のコトワリ」を連載してました。今回の電子書籍にはメインとなる三本(倫理・正義・美)を加筆・訂正してますが、これ以外のテーマのものがいまでもバックナンバーで読むことができます。

2006年以降は、仕事が忙しく手をつけてませんが、2010年のいわゆる「電子書籍元年」の波にのって、一時的に「伊丹堂のコトワリ」を電子書籍化してみました。このときは内容にもやや不満があり、また『オムレット』を漫画家として先に電子書籍化する必要もあるという考えがあったので、いったん白紙になりました。ここからが本当の「ブランク」で、10年ほど経過するわけです。

電子書籍自体も、2010年当時はまだ誰もが手にするという状況でもなかったので、メインの媒体としてはまだまだという感じでしたが、さっこんは特にAmazonのオンデマンドがセットとなった状況でいよいよメインストリームになってきたということで、遅ればせながら参入ということになりました。

また内容的にも、大きく変化したところもあります。

これはコロナ、ウクライナという社会情勢の変化の中で、内容を深めていったという点が大きいです。

「倫理〜」については、内容というより、語りの外形を変えています。これまで哲学愛好家を対象としてカッコつけて語っていたような、雰囲気的な言い回しをすべて平易な、誰でもわかる、というようなレベルで推敲していきました。

「正義〜」については、内容が大きく変わっています。この「正義〜」自体がそもそもこの前に書いている「政治マンガ」のなかの伊丹堂対話「政治ってなんなんだ〜」を前提にしていましたので、この「政治〜」の内容をほぼ取り込むような形で新たに書き下ろしました。そして、その折もおり、ウクライナ紛争が勃発、それについて言及する中で、「正義」という言葉も、初出とは正反対な様相を得てきました。詳細は電子版をごらんください。

「美〜」については、ほぼ固まった内容でしたのですが、このブランクの間に、実はデザインの講師を経験し、これをテキストの一部として「美とは何か」という講義をしていましたので、初出時よりそのときの経験を含んだ、深みが出ているかと思います(笑)。

ということで、ぜひ『伊丹堂のコトワリ』をよろしくお願いします。


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