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普通の風邪を5類感染症にするこの国がいかに世界からズレているのか?



こんにちは、医師&医療経済ジャーナリストの森田です。

先日、武見敬三厚生労働大臣がこんな驚愕の発言をしたのをご存知でしょうか?

「普通の風邪(旧型コロナ含む)を5類感染症に格上げする」

と…


動画はこちら↓



詳細な解説はこちら↓
https://yanai.theletter.jp/posts/c6ab8b10-4b00-11ef-9d1c-3503a557eb18


普通の風邪を5類感染症に?
って言われても何のことやらさっぱりわかりませんよね。

一体これにはどういう意味がああるのでしょうか?

実はこの方針には、

この国の公衆衛生と保険行政がいかに狂っているか、
いかに世界からずれているか、

が如実に現れているのです。

今回はこれについて解説しようと思います。



5類感染症とは?

 
さて、5類感染症とは何でしょうか。

感染症はざっとこんな感じで分類されています。


出典:日経新聞/https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA203XP0Q3A120C2000000/


最も危険な感染症が1類。エボラとかペストとかですね。
エボラは感染したら致死率50%と言われていますし、ペストはかつてヨーロッパの人口の1/3が死亡したと言われていくらい危険な感染症です。


その次が2類で結核・SARSなど。ずーっと下って5類がインフルエンザ・梅毒などです。(上の表では新型コロナが新型インフル等…となっていますが、このあと5類に分類されました)

では、普通の風邪は?

実は普通の風邪は、この中に入っていません。
というのも、旧型コロナウイルスやライノウイルスなど普通に「風邪」と言われるようなウイルスや細菌はたくさんあるのですが、そのようなウイルスや細菌はエボラなどとは違って軽微な風邪症状を呈する程度なので、感染症の分類にも入らない、「無類」の感染症なのです。


社会の対応としては、1類感染症が発見されたら流石に全例入院で隔離とか、消毒・交通規制まで可能と、非常に強力なものとなっています。

で、5類のインフルエンザまで下ると全くそこまでなくて、定点医療機関での感染発生動向調査程度。地域の中で決められた一部の病院が、「その日は何人インフルエンザ患者が来たよ」という報告を毎日国に上げていく、それだけです。患者さん側は特に何もすることはありません。

その程度だったら、普通の風邪も5類に格上げしたって別にいいんじゃないの?

と思われるかもしれません。

しかし、これは全くその程度の軽いものではないのです。

以下、それについて解説していきます。



世界の状況



というのも、世界は全く違う方向へ動いているからです。

新型コロナのパンデミックで、世界の国々はロックダウンやマスクの強制など、人権を侵害するような強制措置を取ってきました。

しかし、世界の人々は今、それが本当に必要だったのか、人権を侵害するほどまでのことだったのかについて振り返り、検証しています。

米国のファウチ氏は、日本における尾見さんの位置に当たるような人です。彼は先日アメリカの国会・下院公聴会に呼ばれ、共和党女性議員マージョリー・グリーンから、「あなたのことを博士だとは認めない」「博士号は剥奪されるべきだ」さらに「あなたは投獄されるべきだ」と強烈に非難・糾弾されました。
このことはニューヨーク・タイムズ紙などでも大々的に報じられ、批判が展開されています。

また、WHOのパンデミック条約(次回パンデミックが発生したときにWHOが加盟各国に対してワクチンや感染対策などに対する権限を強化する条約)も、各国から「そんな条約いらない」という反対意見が多く出て、結局合意に至らず「交渉延期」となっています。

パリ五輪の会場や大谷選手のメジャーリーグの試合を見ても、観客は誰もマスクをしていません。

つまり、世界は今回のコロナ騒動はとっくに「終わり」にしていて、感染症に神経質になることをやめ、逆に当時のことをしっかり反省するモードに入っているということです。



日本の状況


では、日本ではどうでしょう?

大手メディアの報道を見る限り、そのような「当時を振り返りしっかり検証する」ような報道は全く見当たりません。

尾見氏への批判の言葉も全くありません(尾見氏は講演で自らの業績を誇らしげに語っています)し、コロナを終わらせるどころか、2024年の夏でもまだコロナの恐怖を煽ろうとすらしています。


パリ五輪の映像を見られたら感じると思いますが…日本の街なかの依然マスク率の高い風景とパリでは、まるで別世界のようです。


行政の対応


行政の対応も同じく世界と逆行しています。

世界がマスクを外し、感染症に神経質になることをやめている中、日本政府はパンデミック対策行動計画として、

日常的に誤情報・偽情報(?)を監視してYoutubeやツイッター(現X)の投稿を削除する

という戦時中のような情報統制の計画を発表しました。

そして今回、武見厚生労働大臣が自ら

「普通の風邪(旧型コロナ含む)を5類感染症に格上げする」

と宣言したのです。

つまりこれまで野放しだった「普通の風邪」を国家の監視対象にする、

ということ。

感染症に神経質になることをやめている世界の潮流とは真逆に、感染症の発生に神経を尖らせ、あたかもその呪縛に自ら取り込まれようとしているような方針です。


医療全体主義へ?


このような世界と日本の方向性の違い、下手をするととんでもないことになるかもしれません。

僕は、コロナ禍が始まったばかり、緊急事態宣言真っ只中の2020年の4月にこんなことを書いています。

医療による恐怖は、まるで国民全体を徐々にカゴの中へ誘っているのかのようだ。
もちろん、今は緊急事態だから仕方ないのかもしない。ただ、一旦進んだ時計の針は戻せないのも現実。一度許してしまった権利の制限は、今後様々な形で進んでいくだろう。
もちろん、清らかな医療者は「医療による恐怖で世界を支配する」なんてかけらも思っていない。しかし、コロナパニックは「医療的な恐怖で世界を動かせる」ことをにわかに証明してしまったのだ。
これまで何百年もかけて人類が一つずつ獲得してきた様々な社会的な権利。それらを一時的にとはいえ一気にむしり取るという前代未聞の体験を、いま僕たちは「コロナ」を理由に経験している。医療は、これまで誰も持ち得なかった「国民の人権さえも制限できる巨大な力」を持ってしまったのだ。「命を守る」の殺し文句がこれほど効果を持つとは。。。
この力を利用しようとする勢力は確実に現れるだろう。それが国家なのか巨大資本なのかGAFAなのか、それともその全部なのか。それらが牙を剥いた時、果たして我々医療者はその巨大な力に抵抗できるのだろうか。いや、上手に牙を剥く彼らは、我々医療者が気づかないように…医療者を盾にして国民の目をそむけながら、手を進めるだろう。

そう、医療は感染症に神経を尖らせることで「国民の人権さえも制限出来る巨大な力」を持ってしまったのです。

そして世界はそれを反省し、時計の針を元に戻そうとしているのに、逆に日本は時計の針を進めようとしている…。

今はまだマシなのかもしれません。でも10年後、この真逆の方向性がこのまま変わらず、両者がどんどん乖離していってしまえば、世界と日本の間にはは巨大な世界観の相違が具現化されてしまうかもしれません。


あるべき医療の姿


本来「医療」というものは、過度に人々の生活に介入するべきではないのです。
もちろん、エボラのような強烈なウイルスがやってきたときにはそれも必要かもしれませんが、今回問題になっている「普通の風邪」は本来医療の対象とするべきではないはずです。

日本以外の先進国の人々は、普通の風邪程度では、(たとえインフルエンザでも)ほとんど病院に行きません。もし病院に行ってもほとんど検査せずに、「自宅で寝ていて下さい」と言われるだけです。

その代わり、
「熱が非常に高いとか、ご飯も食べられないとか、脱水症状が激しいとか、そういう緊急事態の予兆があれば医療は本気で対処するのですぐに来て下さいね」
と緊急時の対応を保証をしてくれるのです。

普通の風邪のように基本的に自分の免疫で解決出来るものには敢えて介入せず(そのほうが個人の免疫が強化される)、緊急時の対応は絶対に保証する。これが本来あるべき医療の姿です。

今回政府が出した「普通の風邪も5類感染症に」という方針は、明らかにこれとは真逆の、すべてを国家の管理下に置こうというもので、その意味でも、本来「医療」が目指す方向とは明らかに逆方向に向いていると言っていいでしょう。

パブコメ書こう!


政府は今、この方針に対してパブリックコメントを募集しています。


政府がパブリックコメントを募集している今が声を上げる最後のチャンスです。


世界標準のように感染症に神経質になることをやめるのか、

感染症に神経を尖らせ、人権を制限する方向に向かうのか…


軌道修正するなら早いほうがいいに決まっています。
つまり、今しかないのです。

前回の「パンデミック対策行動計画」のときは、パブコメが史上最多?の19万集まり、政府筋は肝を冷やしたと聞いています。

今回は20万超えを目指して頑張りましょう!


以上、「普通の風邪を5類感染症にするこの国がいかに狂っているか、世界からズレているのか?」でした。


注:この記事は投げ銭形式です。
  医療は誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」
  という信念なので医療情報は基本的に無償で提供します。
  でも投げ銭は大歓迎!\(^o^)/
  いつも一人で寂しく(しかもボランティアで)
  原稿を書いているので、
  皆様の投げ銭から大いなる勇気を頂いております!
  ありがとうございますm(_ _)m




■僕の本




■内容(はじめにより抜粋)■
2019年に始まった新型コロナウイルス騒動。
医療業界をはじめ行政やメディアに先導されたこの騒動は、残念ながら「経済を壊し」「人々の絆を断ち切り」「自殺数を増加」させてしまった。
私は経済学部出身の医師という立場から、このような過剰な感染対策によるデメリットを憂いていた。そしてそれを問題視する発信を続けてきた。だが、この「過剰にコロナを恐れてしまう風潮」は2022年になっても依然として継続している。
2022年1月の全国高校サッカー選手権の準決勝では、選手2人に新型コロナ陽性反応が出たとのことで関東第一高校が出場を辞退した。
まるで「コロナに感染したら社会の迷惑・厄介者」と言わんばかりの対応だ。感染してしまった当該生徒の気持ちを察するに余りある。
コロナ騒動が始まってもう2年も経っているのに…
社会の過剰反応は当初と何も変わっていないように感じる。
今後もこのような風潮が続くのであれば、それこそ「新しい生活様式」となって社会に定着し文化になってしまうのだろう。
私はそんな「家畜」のような生活を、感染を恐れて人との絆や接触を断ち切るような社会を、絶対に子どもたちに残したくない。
そんなやりきれない思いが日々高まってゆき、我慢できなくなったのが、本書を書こうと思ったきっかけだ。

■タイトル・内容の過激さから数々の出版社から書籍化を断られクラウドファンディングによる自費出版となった本書。
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)