孤独死・無縁死よりも怖いもの。
昨日、NHKの『無縁社会〜無縁死3万2千人の衝撃〜』という番組が再放送されていました。
全国放送の大事な枠を使って9年前の番組を再放送するわけですから、NHK的にもこの問題が今さらに深刻化しつつあるという意識があるのだと思います。僕もまったく同感です。
番組では解説の方が、「孤独死自体が問題ではなく、死んでから何週間も気づかれないということが問題」とおっしゃっていました。それについても僕も全く同じ思いなのですが、もっといえば、「気づかれない」ということにもまして、死の前の長い期間を『死んでも気づかれないくらいに生活が「孤立」していたこと』のほうも大きな問題なのでは?とも思います。
人間は、「人」の「間」で生活してこそ人間です。
人の間での生活がとぎれてしまう「孤立・孤独」は人間の尊厳や人生の質を大きく損なうものです。
先輩医師の堂園晴彦先生は
「人間がかかる最も重い病気は『孤独』である。」
とおっしゃられています。
また、公衆衛生学的にも「孤独」が健康にとっての最大の阻害因子であることが指摘されてきています。
考えてみれば、無縁死・孤独死はある意味結果でしかありません。たとえ高齢独居の末の孤独死でも、それまでの生活が地域の人々の中で毎日笑いながらイキイキとした人間関係を築いていたけど、死ぬ瞬間は一人だった、というのケースもあります。そういうケースは、『孤独死だけど最期まで幸せな人生』と言えるかもしれません。
逆に、「孤独死が不安で高齢者施設に入った(入れられた)」けど、施設では他の方々との人間関係を築けずやっぱり孤立してしまい、最期は病院に送られて死亡。こうした、いわゆる「孤独死」ではないけど、「死ぬまでの長い期間『孤立』してしまっている人」も多く見られます。
もし仮に「無縁死・孤立死率」の都道府県別ランキング発表されたりして、国を挙げて無縁死・孤立死率を下げよう!とキャンペーンが張られたら、全国各地で
『独居高齢者は早いうちから「療養病院」や「高齢者施設」に入りましょう。』
という施策が流行するかもません。
もちろん、そうした施設が人と人の絆を育むようなところならそれは素晴らしいのですが、介護施設は「介護が業務」であって、それ以外のこと、高齢者間の人間関係構築、などは疎んじられてしまうことも多いものです。
(写真はイメージです)
ただ、この記事(https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no586/)にあるとおり、
「日本福祉大学が行った調査によれば、孤立高齢者の4人に3人が「満足孤立」(同居者以外との対面・非対面接触が月に1~2回以下で、かつ生活に満足している)に該当するとしています。」
月に1〜2回しか外界と接触がないにも関わらず、みんな「満足」していると…。
今や「孤独・孤立」は大気汚染の空気のように社会に広く浸透してしまっていて、当の本人さえ気づけないことのほうが多いのかもしれません。
しかも、国立社会保障・人口問題研究所が2017年実施された『生活と支え合いに関する調査』によれば、
「高齢の独居男性」の15%が「普段の会話の頻度が2週間に1回以下」
とのこと。会話が2週間に一回以下、ってかなり酷い事態だと思うんですけど。。。高齢独居男性の15%がそうなっていしまっているくらい、この「無縁社会」の問題深刻化しているのですね。しかも当人にさえそれが自覚されない。
もしこの問題の根幹に、戦後〜高度経済成長時代で形成された『個人主義』の行き過ぎがあるのなら…、そしてそれ故に「当の本人さえ気づけない」くらいにまで「孤独・孤立」が空気のように社会に広まっていってしまっているのなら…。
いま我々の世代が取り組むべき課題が自然と見えてくるような気もします。
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)