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新規事業が創出されないのはすべて、経営とミドルマネジメントの責任。若者の邪魔をするな

・大局観のなさと準備不足
・若者に責任を与えない人事慣行

日本企業の新規事業がスケールしないたった2つの理由、「失敗を恐れず」の誤解

新規事業が生まれない責任を現場に押し付けるな

経営層もミドルマネジメントも、なぜ新規事業を「評価」する立場に立っていると勘違いするのか。

新規事業とは未知なる領域に挑戦することだ。現場は当然その答えを知らない。知らなくて当たり前。だが、ミドルマネジメントも経営層も知らないのだ。

知ったかぶりをして偉そうに、現場が出してきたアイデアをただ評価するだけで新規事業が生まれるわけがない。

今の日本に必要なのは、経営層が自ら新規事業に対しての「義務」を意識し、果たすことだ。

 ここで言う「義務」とは、重要な決断を下すために蓋然性(確からしさ・確実性)の高いエビデンスを集め、ビジネスとして成り立つのかを見極めることを指す。

これらの科学的アプローチを駆使し、新規事業の投資対効果や、マルチプル(時価総額÷EBITDA)、TSR(株主総利回り)、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROIC(投下資本利益率)といった経営指標への影響を割り出して、挑戦すべきかの判断材料にする。

 これが、ビジネスにおける真の「見極め」だ。

新規事業は総合格闘技だ。しかしその全ての能力を持つ人材はいない。既存事業の分業の中では間違いなく育っていない。

だからこそ経営層は、新規事業に共に挑む仲間としてただ評価するだけでなく、現場担当者が走れるように自らもサポートする側にいることを明確に意識しなければならない。

経営層こそ大局観をもて。

新規事業においてミニマムスタートでPoC検証を繰り返すことは必要だ。

事業成長の蓋然性を明らかにするためにこそ、小さく仮説検証を繰り返し、そこからインサイトを得ることで思考を繰り返す。その先でしか論理的に蓋然性を組み上げることはできない。

現場にはひたすらにPoCを行う行動を意識づけることと、それを加速させるために心理的安全性の高い挑戦ができる環境をつくることが経営の仕事になる。

そして同時に、そこからビジネスとしてスケールさせる絵、つまりグランドデザインを描くのもまた経営層の仕事だと認識すべきだ。

収益化に直結しない実験だからこそインサイトが得られる。それこそが「探索」であり、その遊びがなければ破壊的イノベーションは生まれない。しかしまた同時にそこから得られたインサイトを元に大きな絵を描くことも重要だ。

しかしそれができる人材など、社内にほとんどいない。ビジネスの全体像をみて、未来に思いを馳せた経験など、既存事業ではできないからだ。

だからそれは経営の仕事なのだ。それを経営がまず自覚しなければ、新規事業など到底生まれない。

既存事業で優秀な経営層も、新規事業にとっては「3歳児」だ

だからといって、大局観の持てる経営層なんていない。既存事業で成果を出して出世してきた経営層は既存事業のプロであって、新規事業のプロではないのだから。

経営層はそれを自覚しなければならない。あなたたちに新規事業を評価することなんてできないのだ。必要な能力やスキル、経験が違うのだから。

ミドルマネジメントも同様だ。既存事業の兵隊になるべく教育を受け、実践してきた世代の凝り固まった価値観は、新規事業にとっては足枷でしかない。

経営層にもミドルマネジメントにもいえることはただ一つ。

若者の邪魔をするな。

今の日本に必要なのは「中高年世代が抱え込んだまま持て余している権限を手放す」というスタンスだ

若者世代に責任ある立場を任せ報酬で報いる評価制度、前例のない挑戦を評価し推奨する人事制度、グーグルが実践するような、業務時間の20%を未来に資する取り組みに費やすことを許す働き方など、若者の創造性を引き出す取り組みはいくらでもあるはずだ。

 変革をドライブするのは若者世代であり、中高年世代の役割はその若者の変革意識に火を付ける「点火プラグ」に徹することを強く勧めたい。

これからの日本の未来を描くことができるのは若者だけだ。

憂国の士たちが未来を目指して既存の価値観の打破を目指した明治維新を思い返してほしい。

アメリカのペリー提督が浦賀に来航した嘉永6年(1853)に、西郷隆盛は24歳、吉田松陰は23歳、大久保利通も23歳、福沢諭吉は19歳、坂本龍馬は18歳、高杉晋作は14歳だった。

当時の平均年齢は50歳前後だったことを鑑みれば、30代に破壊的イノベーションを成し遂げたといえよう。

時代の変化が激しい現代において、50代60代には新しい未来の扉を開く力はもうない。潔く退くべきだ。40代はロートルだ。自分たちの価値観はもはや時代遅れなのだ。

ボクらがすべきことは、20代30代が自らの未来を自らの手で切り拓くための環境を作り、背中を押すことだ。



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