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ジャズを通した日台間の交流

台湾でたくさんのミュージシャンと知り合い話していると、彼らが日本のジャズミュージシャンと積極的に交流していることが分かります。台湾人ミュージシャンが日本に行くこともあるし、日本人ミュージシャンが台湾に来ることもあります。
ジャズという音楽は、アンサンブルを自由に組めることが特徴です。そのため、殊更バンドを組んでいなくても、ある一回のライブのためにアンサンブルを組んで、リハーサルをして本番に臨むということが容易です。

ここでは、僕が見たり聞いたりした台湾人と日本人ジャズミュージシャンの交流のシーンを紹介します。

安カ川大樹 & 林煒盛

台湾に来ている日本人ミュージシャンを初めてみたのは、Jazz Spot Swingで知り合ったベーシスト安カ川大樹でした。彼はこのジャズバーのマスター桑原さんと大学の同窓で、年に何回も台湾に来ては、この場所とそのほか2箇所程度のライブを行っていました。
そして彼が最も信頼していたミュージシャンがギタリスト/ベーシストの林煒盛でした。その林煒盛が台湾で最も頻繁に共演しているピアニストがBobby Westです。彼らの演奏をJazz Spot SwingやBluenoteで聴きました。こういう国際的なアンサンブルが自然に成立しているのがジャズという音楽の面白いところです。

Bluenoteでのトリオの演奏

安カ川大樹 & Alan Kwan

Alan Kwanは、安カ川大樹とのアンサンブルを過去、何回もやっているそうで、日本での演奏も行っています。この回は台北で安カ川大樹率いるトリオをバックに演奏していました。台湾人の加わらないこの様なアンサンブルもあります。彼らがみなアジアを股にかけて活躍だからこそ起こる出来事なのでしょうね。

雅痞書店での Alan Kwan Trio の演奏

林煒盛 & 大山日出男

大山日出男は、ご両親が台湾の出身の湾生なのだそうです。それで台湾で演奏会をするようになり、その時に台中のサックスメーカーを訪ねた際、ベーシストの林煒盛を紹介されたとのこと。これをきっかけにして彼らは毎年、台湾と日本のジャズフェスティバルに招待し合うということを繰り返しています。コロナの3年間この交流は途絶えていましたが、2023年3月になって、ようやくこの交流が復活しました。

Bluenoteでの大山日出男クインテットの演奏

小野孝司、渡邊紘人&鄭乃涵

2019年に小野孝司が台湾に来て演奏をした時の、台湾側のサポートミュージシャンが渡邊紘人と鄭乃涵でした。このトリオは、Jazz Spot Swing と台北教育大学での演奏を行いました。彼らは古くからの知り合いというわけではなかったようですが、小野さんのリクエストに応えてアンサンブルに参加してくれました。

台北教育大学での小野孝司トリオの演奏

謝明諺&スガダイロー

謝明諺は過去日本でスガダイローとのアンサンブルをやったことがあるそうです。それで台湾での共演を計画していたのですが、コロナのために延期。2022年10月になってようやくこのアンサンブルが実現しました。
謝明諺はこのフリーなスタイルのスガダイロ―トリオの演奏が、ひどく気に入ったようです。伸び伸びと自由な演奏を披露していました。こんな楽しそうに演奏する謝明諺を僕は見たことがありません。

Sapphoでのスガダイローカルテットの演奏

Debby Wang、鈴木瑤子&小玉勇気

Debby Wangがアメリカのバークレー音楽院で一緒にジャズを学んだ鈴木瑤子を台湾に招いてほぼ1か月にわたる、演奏ツアーを実現しました。聞くところによると、日本人二人は毎日Debby Wangの家に缶詰めになってライブの準備の毎日だったそうです。彼らは、必ずしもバークレーで親しい間柄であったわけではないそうですが、この様なきっかけで長い時間を共にしたことで、音楽的な仲間になれたと言っていました。同じ釜の飯を食うというのは大切なことのようですね。

SapphoでのDebby Wang Trioの演奏

ジャズを通じた素晴らしい台日交流

ここに紹介したのは、たまたま写真資料が残っている一部のライブのみです。他にも日本で行われた台湾人を招いたライブ、台湾でのジャムセッション、台湾の大学での日本人の先生の活躍など、こういった交流の例は枚挙にいとまがありません。

台湾と日本のジャズミュージシャンは、この様にお互いの国での演奏活動を通して、そのつながりを深めています。共通した音楽的背景を通して、自由にアンサンブルを組むことができる、それがジャズという音楽の一つの醍醐味です。この様な交流には、その特徴がよく表れていると思います。自分もジャズを通して、とてもたくさんの台湾の友人を得ています。

この様なライブのシーンを見てると、台日間の交流をテーマにして普段の建築の仕事に臨んでいる僕は、とてもうれしく感じます。お互いがお互いの音楽活動のために、それぞれの国でできるだけのサポートをしている。そして、金銭的な関係を抜きに、友情をベースにしてお互いの国でライブ活動を実現している。この様な善意の循環が続いている。本当に素晴らしいと思います。

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