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設計をしたことのある建物の種類

僕は、設計事務所を4社転々としてきたので、とても色々な種類の建物を設計したことがあります。ふと、こんな風な雑多な種類の建物を設計した人も珍しいのじゃないかと思ったので、紹介してみます。

なお、日本では真建築設計事務所(小規模事務所)、丹下都市建築設計(中規模アトリエ事務所)、佐藤総合計画(中規模組織事務所)に、台湾では林鎮鯤建築師事務所(小規模事務所)に勤めていました。つなぎで大学の先輩のところでアルバイトをやったこともあります。

住宅

卒業後勤めた"真建築設計事務所"では、所長にやってみろと言われ、個人住宅の設計をやったことがあります。木造住宅を2軒、RC造の住宅を1軒担当しました。まだ新人だったもので、木造のものは全て自分で設計をやりましたが、RCのものは基本設計の後は先輩が仕切って実施設計をまとめてくれました。
こんな機会を与えてくれた岩井所長には、とても感謝しています。
因みにこれらの住宅は、栃木県宇都宮市、群馬県高崎市、東京都杉並区にあります。近くに行くことがあれば、様子を見に行ってます。今でも住まわれているのを見るのは嬉しいことですね。

礼拝堂

"真建築設計事務所"の主な仕事は、礼拝堂施設の設計と監理でした。代表の岩井要所長が、著名なプロテスタントの牧師先生の息子で、その関係から礼拝堂という特殊なジャンルに関わっており、それをライフワークに取り組んでいました。
僕はこの事務所で5年ほど勤めましたが、その間、常盤台バプテスト教会、砧教会、三崎町教会、東洋英和女学院礼拝堂などたくさんの教会の礼拝堂建築に関わりました。

常盤台バプテスト教会
三崎町教会
砧教会

その他宗教施設

キリスト教つながりでは、YMCAの東京総本部となる建物を先輩と一緒に基本設計をまとめたことがあります。学校、宿泊施設、事務所、駐車場などの組み合わさった複合施設です。
小規模事務所では、基本設計までしかまとめることができず、実施設計は別の組織事務所が後を引き受けてやっていました。その時は自分もその様な大きな規模の建物をまとめる側になるとは思ってもいませんでした。

喫茶店

"真建築設計事務所"を辞めてから、台湾に移るまでの一時期、大学の先輩の元でアルバイトをしていたことがあります。その時は2軒小さな喫茶店の内装設計をやりました。既にRCの躯体が出来上がっている中に、インテリアデザインをして喫茶店とするというものです。
うち一軒は自宅のある東京都足立区に現存しています。自分の関わった建物が現役で使われているのを見るのはとても嬉しいことですね。

集合住宅

台湾の設計事務所、"林鎮鯤建築師事務所"に移ると、そこでは専ら巨大な規模の集合住宅を設計していました。30年前は低層中層の規模のものを、平面的に広がった形で設計していたことが多かったです。

その後"丹下都市建築設計"に移った後も、集合住宅はよく設計したプロジェクトです。その時は高層のタワーが主体になりました。宏盛帝寶では、60mから100mまでのタワーを6本計画しました。

宏盛帝寶

商業施設/事務所

"丹下都市建築設計"では、統一国際ビルというオフィスと商業の複合用途施設の設計に取り組みました。地下7階、地上30階の大規模な建物です。
この建物の最終的なフォルム、頭部の処理などを自分のアイデアでまとめることができました。とても印象に残っている建物です。

統一国際ビル

サービスアパートメント

"丹下都市建築設計"でもう一つ担当したのは、ツインタワーのサービスアパートメントです。これは
信義傑仕堡
という台湾の企業グループ新光人寿のフラッグシップ賃貸住宅で、諸々日本のスペックを入れて設計しました。

新光信義傑仕堡

スタジアム

中堅組織事務所、"佐藤総合計画"に入ると実に多くの種類の公共建築に関わることになりました。
まずは中国のスタジアムです。入社時に実施設計の進行中だった天津オリンピックスタジアム、コンペから中国での工事視察まで行った瀋陽オリンピックセンタースタジアム、コンベ時にのみ関わった深圳体育センターと3つのスタジアムの設計に関わりました。

瀋陽オリンピックセンタースタジアム
深圳スタジアム

オペラハウス

佐藤総合計画は日本で多くのホールを設計した実績を持っています。それで、中国のオペラハウスの設計にも参画しました。このプロジェクトはコンペで最優秀賞となり、実現に向かうかと思われていたのですが、中国国内の政治的な事情で頓挫してしまいました。

刑務所

これは、全く異質の設計案でした。PFI事業で受託した刑務所の設計にも関わりました。囚人を収容する独房群、それを管理する事務所と面会棟、囚人達の作業をする工房など、普段の仕事では全く取り扱うことのない施設群でした。

公共の事務所

"佐藤総合計画"では、諸々の公共の事務所建築の設計にも関わりました。裁判所の分室、警察署のオフィス、中国の市役所などです。設計の内容もコンペ案の作成、基本設計から実施設計までと様々な局面で関わりました。

東京地方裁判所墨田庁舎
広東省珠海市横琴新区保利国際広場

学校

中国の仕事が減った後、2つほど日本の大学の建物の改築工事に関わりました。東京の高千穂大学と、京都の佛教大学です。特に高千穂大学では、キャンバス全体の再整理というマスタープラン的な業務に関わり、ここでも自分の案が採用されました。
佛教大学では、4期にわたるリニューアル計画をどの様に組み立てていくのかと、最後に計画する蓮の花をモチーフにした礼拝堂をどの様にRCで組み立てるかが大きな課題でした。
この2つの学校では本格的に監理の仕事にも取り組みました。

高千穂大学新1号
佛教大学キャンバスリニューアル計画

コンベンションセンター

"佐藤総合計画"は東京ビッグサイトを設計した設計事務所なので、日本以外に中国や台湾でもコンベンションセンターの設計をしていました。僕はそのうち群馬コンベンションセンター台中コンベンションセンターを担当しました。
特に群馬コンベンションセンターは、僕の出身地が群馬県なので、思い入れを持って設計していた建物です。設計のリーダーの指示のもと設計の内容を変更し、最終的な形にしていくわけですが、そのプロセスの多くの場面で自分のアイデアが採用されていきました。

Gメッセ群馬

台中コンベンションセンターは、この形は別のスタッフが作ったものですが、この形を具体的にロジックを以って実施設計図に整理していく段階で関わっており、やはりこの形を作り出す過程には深く関わっています。今現在施工中であり、折に触れ見学に行っています。表紙の写真は、2023年の5月の現場の様子です。

台中水湳国際コンベンションセンター

建築コンサルタント業務

過去、この様な建物の設計に関わっており、いくつかの案件では現場の監理も担当しています。その様な経験を持って台湾では建築コンサルタントの仕事をしています。コンサルタント業務なので、建築のデザインは台湾の建築師が行っています。僕は施主の立場で設計の良し悪しを判断したり、設計図書のチェック、工事現場での品質管理業務などを担当しています。
台湾で建築コンサルタントとして参画しているプロジェクトは下記の様なものです。

集合住宅

今やっている集合住宅は、大規模な高層案件が多いですね。日本側ディベロッパーを主としたJVの場合は、設計から施工確認までを、台湾側ディベロッパーにマイナー事業JVとして参画している場合は、設計協議を主に担当しています。

三松M Park
三松Jade Park

ホテル

ホテルの事業は日本側ディベロッパーはマスターリースという形で、オーナーの建物の中にテナントとして入ります。その様な事業の設計から施工に関わる全ての局面に関わっています。

三井ガーデンホテル忠孝新生

設計事務所に勤めていた約30年間で、これだけの種類の建物の設計に関わることができ、その中のいくつかでは主要担当者として関わることができました。いくつかの幸運に恵まれ、こんな経験をさせてもらっています。誠にラッキーな建築士です。

また、この様に沢山の設計事務所で色々な仕事をしてきているので、台湾の業務で建築師を相手にする場合、相手は僕のことを単に施主の立場の建築コンサルタントではなく、同じ様な資格とキャリアを持つ対等な建築士としてみてくれます。それもコンサルタントとして仕事をする場合の強みですね。

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