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【台湾のジャズライブ】林亮宇カルテット

台北市では年に何回かジャズフェスティバルが行われています。主催者が異なるのでしょう。今回紹介する演奏は、2021年南港にオープンした台北流行音楽中心で行われたオープンライブです。
屋外ですが、四周を建物に囲まれた中庭の様なスペースで、街中ですが比較的騒音にさえぎられた環境でライブが行われました。

林亮宇

林亮宇の演奏は、友人の卒業記念ライブで台北藝術大學で初めて聞きました。その時はクラシックの演奏でしたが、確かなテクニックと表情豊かな演奏に非常に好感をもちました。
たまたまその翌日、台北流行音樂中心でオープンライブのラインナップに林亮宇カルテットの名前があったので聴きに行ってみました。このライブが素晴らしかった。

この時はサックス蘇聖育、ベース謝宗翰、ドラム陳昱長というメンバーでしたが、ジャズの先輩2人を迎えて、彼は彼独自のリサイタルをしっかりと作っていました。曲は他の作曲家のものと自作とがありましたが、それを自分の言葉でしっかりと説明して、一つのストーリーを作り上げていました。

そして、オリジナル曲がとても素晴らしかった。泥人形:土娃娃であるとか、彼の故郷屏東の大地をテーマにした曲と、説明していましたが、完成度が素晴らしい。普通のジャズのイントロ/テーマ/アドリブ/テーマ/エンディングという構成ではなく、全体を一つの構成された曲として作曲していて、その中にアドリブパートが組み込まれているといった形でした。

そしてその一つ一つの部分がとても格好良い。クラシックピアニストとしての訓練が十分にされているのでしょう。フレーズの作り方とそのスピードがとても完成度が高いものです。構成のされ方も素晴らしく、音楽をひとつのストーリーとして作り上げるその力に感心しました。

蘇聖育

蘇聖育の演奏は、2019年10月ツインサックス&シンセサイザー&ドラムという珍しいフォーマットで聴いたのが初めてでした。これはサックスの劉騰文の声がけで行ったプロジェクトだそうで、非常に実験的な音楽を演奏していました。リズムセクションに電子音楽が加わり、フロントがツインサックスというのは、僕は初めて聴いたのですが、こういう組み合わせは欧米ではよくあるのだそうです。メンバーが皆ヨーロッパでジャズを学んでおり、そういった新しい試みも積極的に取り組んでいるとのこと。蘇さんは、ベルギーのブリュッセル王立音楽院でジャズを学んでいます。

2020年、彼のオリジナルアルバムが発表されました。タイトルは「Ciao Bella」。なんでも、お嬢さんの成長をテーマにアルバム作りをしたそうで、実際に子供の声も録音に含まれた、愛らしい作品になっています。

このアルバムは、2020年金曲獎の最優秀インストルメンタルアルバム賞を受賞しています。

謝宗翰

2019年9月、林華勁のカルテットをMarsalis Home Taipeiに聴きに行った時に、ベースを担当していたのが謝宗翰でした。その時、彼はベルギーへの留学から帰ってきたばかりだったらしい。その後、彼はいきなり沢山の演奏活動を始めました。

台湾にはベルギーに留学したジャズミュージシャンがたくさんおり、彼はその仲間との演奏を沢山やっています。よく組んでいるのは、曾增譯、謝明諺。ニューヨーク組の鄭皓文、蘇郁涵などとも一緒に演奏しています。

ウッドベースに投資しているからそちらばかりなのかと思っていたら、エレキベースも積極的に使っています。シンセサイザーなどの電子楽器の場合、それに合わせたエレキベースもキレの良いリズムでこなします。

その一方、中国の伝統楽器、笙とのコラボレーションなどもあります。これも彼がリーダーのバンドで行なっています。

陳昱長

陳昱長の演奏はクラシックのバックグラウンドを持ったピアニストのコラボレーションでよく聞いています。この林亮宇と林語桐ですね。こういうピアニストの信頼が厚いというのは、そのテクニックが非常に安定しているということなのでしょうね。派手なパフォーマンスではありませんが、リズムコントロールがしっかりしているミュージシャンだと感じます。



臺北流行音樂中心



この動画は友人の東東が記録したものです。1時間のライブの全貌が分かりますので、是非ご覧ください。

こちらはオンラインバージョンで行われた、もう一つのカルテットの演奏です。サックスをバイオリンを加えた形で、また異なった味わいがあります。


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