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台湾でジャズを見つけた

僕は30年前に台湾に語学留学し、その後4年ほど台湾で仕事をし、日本に戻ってからも台湾との仕事を継続的に続けていました。しかし、その間台湾でジャズを聴いたことはありませんでした。民歌と呼ばれるギター弾き語りをカフェで聴いたり、國家音樂廳でクラシックを聴いたりしたことはありましたが、ジャズを聴いたことはありませんでした。

台北でライブハウスを発見

4年半前に改めて台北に赴任した時に、前回書いたような日本でのジャズ演奏をした素地があったので、真っ先に台湾でジャズを楽しめる場所はないかとネットで調べました。そして、最初の週にJazz Spot Swingというライブハウスを見つけました。
ここは、台湾でジャズを演奏したいという日本人のために、マスターの桑原さんが始めたライブハウスです。全くもって僕の様な人間のためにあるようなお店です。初めにお店に行った時から、ピアノの前に座って演奏をさせてもらいました。
お店は、金曜日の夜にレギュラーヴォーカリストのライブ、その他イレギュラーに日本人、或いは台湾人ミュージシャンのライブがあるという運営だったので、ライブのある日はそれを楽しみ、ない日はお店の常連さんやマスターと演奏を楽しむといった具合でした。月に3〜4回はお店に顔を出していましたね。
そして、ここで台湾人ジャズミュージシャンにも出会いました。ピアニスト曾增譯、サックス奏者楊曉恩、ベーシスト林煒盛といった人達とも、ここで知り合いました。

Jazz Spot Swingのジャムセッション

台湾のジャズミュージシャンと友だちになる

そのようにして、台湾でもジャズを演奏をする場所を見つけ、台湾人のジャズミュージシャンと面識を持ったわけですが、その段階ではまだ彼らとはそれほど親しい関係ではありませんでした。

台湾に赴任してから4ヶ月ほど経ったある夏の日でした。花博公園にあるMAJI集食行樂のオープンステージに、女性ヴォーカリストと男性ギタリストが上がっているのを見かけました。何の気無しに聴き始めたら、驚いた。2人は本格的にジャズを演奏するミュージシャンでした。日本では、このようなステージに立つのは専らアマチュアで、本格的なジャズの演奏はライブハウスに出向かないと聴けません。僕はこの時聴いたヴォーカリスト簡詩敏の歌に、すっかりファンになってしまい、その他の場所での演奏も聴きに行くようになりました。

Maji集食行樂のステージで

彼女はとても気さくな人で、行く先々で共演ミュージシャンを僕に紹介してくれました。ギタリスト陳峪安、ベーシスト弧菌、ピアニストMatt Fullenといった人達です。また、その頃まだ安和路にあったライブハウスSapphoでのジャムセッションにも連れて行ってくれました。
このようなきっかけで、台湾人ジャズミュージシャンの友達ができ、台湾人のお店でのライブやジャムセッションにも気兼ねなく参加するようになっていきました。そして、その友達の輪はだんだんと大きくなっていきました。

このように、ミュージシャンとジャムセッションに参加する、Swingで他のお客さんと一緒に演奏するというのが、僕の台湾での演奏活動になりました。台湾ではアマチュアジャズバンドの数は日本のようには多くなく、今のところ参加していません。台湾でのジャズは一部の熱心なファンが楽しんでいるといった様子で、演奏人口はとても少ないようです。また、それが理由で台湾のジャズミュージシャンはお互いに皆顔見知りで、僕のようなアマチュアミュージシャンにもとても親しくしてくれます。

「台湾ジャズ指南」による情報発信

そのようにして、台湾人ミュージシャンとのつながりがだんだん広がっていくに連れて、彼らの音楽を日本人にも聴いてもらいたいと思うようになりました。
初めの頃は、自分のFBのホームページに告知をするとか、台湾関係のグループに紹介する、又は直接台湾にいる会社関係や友人知人に声をかけていました。しかし、これはなかなか効率が悪い。そもそも台湾にいる日本人で、ジャズに興味があるという人が身の回りにはとても少ないわけです。無理矢理声をかけても、先方もなかなか乗り気にならない。
日本の雑誌に台湾ジャズの記事を書いてもらおうと、雑誌社宛にメールを出したこともありました。しかし、これに対する返答は一切ありませんでした。日本にいる友人の知人がジャズファンで、そのような記事があれば書くかもしれないと言っていたこともありましたが、これも音沙汰なしでした。

そんな時、日本人ミュージシャンの台湾でのライブツアーに同行した際、ベーシストと話している中でふと気がついたことがありました。それは、僕の手元には、台湾で知り合ったジャズミュージシャン、台北のライブハウスからの情報が膨大にあるということです。それは、僕が知り合ったミュージシャンとFBで友人になることで、常に入ってくるようになった告知情報、同じくライブハウスからのスケジュール情報などです。普通の日本人のところには、これらの情報は流れません。しかし、僕の手元には毎日のように沢山の情報が届いているのです。
それらの情報をその知人に説明をしているうちに、これはこの手元の情報を整理して日本語で紹介しておけば、そのHPのリンクを教えるだけで、沢山の日本人に台湾のジャズの情報を知ってもらえるのではとひらめきました。そういうことであれば、このHPはこの際自分で作ってしまった方が早い。そうすれば、自分の好きなように作れるし、最新の情報を常に提供し続けることができるのではと考えました。
そして、一週間ほどFBでのグループの作り方を研究して公開しました。2019年11月12日のことです。名前は"台湾ジャズ指南"としました。台湾のジャズのことを知りたい時の羅針盤(中国語では指南針と言います)にしたいと、そんな意味のネーミングです。

台湾で知り合ったジャズミュージシャン達

このようなきっかけで「台湾ジャズ指南」のグループを始めることになりました。そして、日本人が台湾のジャズを日本人に向けて紹介してくれているというのは、台湾人のジャズミュージシャンにとっても嬉しいことのようで、沢山の人がこのグループを応援してくれています。僕が台湾で知り合ったジャズミュージシャンは150名を超えていますし、そのうち近しい人たちを順番にこのグループでも紹介しています。現在、ここで紹介しているミュージシャンとアンサンブルは既に90組になっています。

https://www.facebook.com/groups/576457089563845/permalink/650917982117755/

ジャズが結びつけてくれた友人達

僕が日本でジャズをやっていた時も、この音楽を通して、仕事や学校関係以外の友人をたくさん持つことができました。そもそも、この音楽は皆でスタンダード曲を演奏することが容易にできます。初めて会ったミュージシャン同士でも、ジャムセッションでいきなり共演できるわけです。これが、外国に行ってもそうであるということは、台湾に来るまでは全く考えてもいなかったことでした。

台湾では、期せずして僕はジャズを通じてとても沢山の友人を持つことができました。それは、台湾におけるジャズの歴史が比較的浅く、若い人々がこぞって学んでいる音楽であること。そのために、リスナーが少なく、プロとアマチュアミュージシャン、そしてリスナーとの距離がとても近いことなどに理由があると思います。
そして、台湾人自身がとてもオープンマインドなこともあります。もともと中国から来た移民が多くをしめ、国の成立ちとしても外国との交流を常に多角的に持っていたことから、台湾の人たちはとてもおおらかで、外国人に対して開放的です。
そんな二重の意味で、台湾でジャズをやるというのは、とても友達を作りやすい環境に身を置いていることになります。

僕がこの「台湾ジャズ指南」を作った主な目的は、日本のジャズファンにも台湾のジャズのことを知って欲しいということ。そして彼らの演奏を実際に聴いて欲しいということです。

そろそろ、コロナによる渡航制限も解放され、昔のように自由に日本と台湾を行き来できる様になると思います。そうした暁には台湾人ミュージシャンが日本で演奏することもあるでしょうし、日本人観光客が台湾に来ることがあれば、台湾のジャズを楽しむこともできます。このグループがその様な活動の一助となれば、とても嬉しいです。

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