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【台湾の面白い建物】故宮南院

故宮南院は、設計案の時から大きく話題になっていた建物です。完成した後も、雨漏りの問題や、展示物がよろしくないとか、批判的なニュースばかり耳に入って来ていたので、これは一度は実際に見に行かないといけないと思っていました。

設計者は台湾の姚仁喜建築師。僕が考えるには現在の台湾では最もデザイン力のある建築家の一人です。

実際に見た印象は、非常に素晴らしかった。外観は3匹の龍が絡み合っている様な、非常に有機的で複雑なものです。これが1つはガラスのエントランス、1つは展示室、1つは来客者をエントランスに誘うスロープという構成になっています。エントランス空間のダイナミックさは、台湾では比類がありません。
ランドスケープも非常にのびやかで、居心地が良い。このランドスケープがあって、この曲線的な自由な形ができたんだと納得させられました。

しかし、この大胆なガラスの龍を作るためには意匠的技術的にはかなり無理をしている感は否めません。このガラスの上に埃が溜まるとどうやって掃除するのか、日本人的な視点では疑問が大きいです。

また。展示内容についても確かに疑問が残ります。コンセプトとしては、故宮博物院が新しい時代に向けて、アジアの中の文化センターを目指すということの様ですが、実際には日本の伊万里焼、仏教美術、お茶の文化、台湾原住民の服飾文化などの個別のテーマの展示になっており、インパクトにはかけていたように思います。しかし、日本人にとっては、展示の内容にも言葉への配慮にもさまざまに日本の影響が見られ、不思議な感覚になりました。

この建物と展示には、中国文化の影響にはもうこれからはとらわれないぞ、という意思が感じられるように思います。

外観

敷地の入り口に入ると遠くにこのブリッジが見えます。これがアプローチ空間です。
ブリッジはアーチが傾いていて、下の歩道部分もカーブしています。カラトラバの橋を彷彿とさせますが、部材は少しごついです。地震があるので仕方ないのでしょう。
アプローチのスロープ。二匹の竜がこちらを向いています。一匹は片方の首に乗って。もう一匹は足元に。
竜のしっぽ側、スロープも車寄せのキャノピーも、みなこのような曲線で設計されています。
こちらのガラス面だけは少し大味でした。
二匹の竜の下にもう一匹が寝ている様子。それぞれの外壁のつくり方が違います。
竜の胴体をくぐって中に入ったところ。左の小さな庇が入口です。ガラスの竜全体が巨大なエントランスになっています。

インテリア

エントランスロビー、このフロアは2階になります。シリンダーの下がチケット販売、その裏にロッカースペースとトイレ等がおさまっています。

エントランスロビー、このフロアは2階になります。シリンダーの下がチケット販売、その裏にロッカースペースとトイレ等がおさまっています。
ガラスの竜のお腹の部分。こういう部分は汚れがたまりやすいので、一般的には忌避されます。実現させてしまうのが台湾の大胆さです。
1階には子供用のスペースがあります。最近の台湾の美術館、博物館ではこのような家族で楽しめるような施設づくりが要求されており、この故宮南院でも、実現しています。
展示施設の竜の腹の中。こちらでは内側に四角いフレームが見えます。
展示室内の構成。曲面の展示室は、一般的には嫌われますが、そこはどういう風に説明したのでしょうね。この天井は扇形に構成されています。


ディテール

ガラスの竜の内側。このおさまりは厳しい。雨が漏ったというのはこんな場所ではなかろうかと思われます。 このガラス面をきれいに保っておくには、途轍もない費用がかかるでしょう。今のところきれいに見えていますから、よほどメインテナンスに気を配っているのでしょうね。
ガラス開口部の詳細。このカーテンウォールシステムは銀座のヤマハ位でしか実物を見たことがありません。
ガラスの竜の表皮。スチールのフレームの内側にガラスがはめ込まれています。
1階の竜の内側。壁とガラスの構成です。外側と内側でタイルの形と質感が違っています。
別のところのガラスカーテンウォール。こちらは普通です。 外壁のモザイクタイルは室内にもそのまま使われています。
展示室の竜の外壁。この丸ポチが気になるんですが、タイルでしょうか。
丸ポチ外壁のアップ。下地にも丸いタイルが見えます。こちらはモザイクタイルの模様。モザイクタイルの径は3cmくらいでした。


ランドスケープ

水が大胆に使われているランドスケープ。元は湿地帯かなにかなのでしょうか。台南の奇美博物館でも 水の使われ方は同じように大規模なものでした。
ランドスケープにも大胆に曲面が用いられています。このコンセプトは、建築家と景観デザイナーとの共同作業なのでしょうね。
入り口に設けられた情報センターの建物。曲面のモチーフは継承されていますが、デザインとしては今一つにですね。

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