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今のウクライナは、かつての中華民国?

ウクライナへのロシアの攻撃が始まって、既に2年が経ちました。この間、ウクライナのゼレンスキー大統領がしきりに西側諸国に働きかけ、様々な軍事援助を求めています。
僕は、このことについて常に違和感を持っていました。ウクライナの国土を守るために、アメリカやヨーロッパが軍事援助をする。そのお金はどこから出ているのだろう?自国の防衛のためにお金を出す、或いはロシアの様に自らの野望のためにお金を出す。それなら話は簡単で分かりやすい。しかし、第三国の為に軍事援助として資金を出す。それには国民を説得する理由で予算をつけなくてはなりません。

そんな違和感を持っていた時に、ふと思いました。この様な間接的な戦争への関わり方は、かつてアメリカは中国に対しても行っていました。そして、その時の敵国は日本でした。

ウクライナへの支援

2022年、ロシアがウクライナへの侵攻を始めた際、ロシア政府はものの1ヶ月もあれば、首都のキーウを落とせるだろうと想定していたそうです。
しかし、戦況はそんな簡単には進展せず、ロシア軍はウクライナ国境付近での都市の攻略に精一杯で、それ以上の前進はままならない状態に陥っています。

この様になっている背景には、アメリカ/ヨーロッパをはじめとする西側諸国のウクライナへの援助があります。この援助の名目は、西側自由主義陣営の安全を図るということで、平たく言えば自分達の仲間の危機だから、彼らのことを助けよう。ウクライナの土地がロシア陣営になることを防ごうということでしょう。そしてその為になら、武器や資金の供与を図ろうということですね。

この武器或いは軍事資金の供与は、借款として行われているのでしょうか?それとも無償の供与なのでしょうか?正確なところは分かりませんが、これだけ大規模な援助をして、ウクライナがこれを返済できるという見通しは立たない様に思います。すると、これらの武器や資金の提供は、返済を求めない、無償の援助としてなされているのでしょう。

日本が、日露戦争を戦った際に、戦争のための軍事資金は外債に頼ったと学んだことがあります。日本はこの戦いのために、アメリカやヨーロッパでの資金援助を求めましたが、それはあくまでも借金であって、戦争の後長い時間をかけて返済していく。その様な性質のものでした。

ウクライナの場合の援助の論理は、どうもこの様ではない様に思われます。ウクライナの地は西側民主主義陣営の、ロシアに対する橋頭堡である。この戦線が崩壊すると、西側ヨーロッパ諸国の、EUの安全が脅かされる。そのために、アメリカとEU諸国はウクライナを援助しなくてはならない。ウクライナの危機を自らの危機として捉え、援助しなくてはならない。ウクライナはその様に訴えている様に思われます。

第二次世界大戦前後のアメリカによる中華民国支援

僕は台湾に住んでいるので、中華民国の歴史にも興味があります。それで蒋介石の事績もよく調べるのですが、この人物は第二次世界大戦の前後でとても長期に渡ってアメリカの軍事援助を求め続けています。そのことは、現在のウクライナの大統領ゼレンスキーの姿に似ているのではないかと、ふと思い当たりました。

第二次世界大戦前夜、日本が中国との泥沼の戦争を続けている時、日本は国際的には孤立した状況でした。1933年、国際連盟を脱退。リットン調査団による満州国の調査結果に不服の意を示し、米英主体の国際情勢に反対し、彼らから離れた外交政策路線を模索する様になります。
この時、中華民国は逆に米英に歩み寄り、彼らの援助を求めるよう協調路線を取り、実際にイギリスからもアメリカからも具体的な軍事支援を得ています。
日本が第二次世界大戦に突入した後に中国大陸で挫折するのは、このイギリスとアメリカによる軍事支援によることも大きな理由です。
イギリスはインドからミャンマーを経て雲南に渡る補給路線を作り、蒋介石を援助し続けます。そのためにインパール作戦が発動されて悲惨な戦闘になったことは有名です。アメリカは中華民国に直接飛行機とパイロットを送り込み、軍事行動を支援しています。

そして、アメリカによる中華民国への援助は、第二次世界大戦終了後も続いています。当初、国共内戦で国民党が敗北を喫する状況になった時、アメリカは国民党を見限ろうと考えていました。しかし、ソビエト連邦と中国共産党による共産主義勢力が勢力を伸ばすことを快く思わないことから、台湾に避難してきた中華民国を援助することに方針転換が図られました。

このアメリカにおけるロビー活動には、蒋介石の奥さんである宋美齢が大きな役割を果たしていたと言われます。実際に多くの政治的場面にこの宋美齢は登場しています。表紙に使っている写真はカイロ会談のものです。蒋介石はこの会談にとても不安な思いで臨んだと言われていますが、お膳立てをしたのは奥さんである宋美齢です。

今のロシアはかつての日本?

この様に考えが及んだ後に、またふと思いついたことがあります。今のウクライナが見舞われている侵略がかつての中国に似ているということは、今ロシアがウクライナに対して行っていることは、かつての日本が中国に対して行ったことと似ているということです。今のロシアはかつての日本と似ている面があるということが、大雑把にでも言えるということは、このロシアのウクライナ侵略の行末を占う上で示唆的なことかもしれません。

日本は韓国を植民地にし、中国東北地方に満州国という傀儡政権を立て、それにも満足せず中国本土への終わりのない侵略戦争に突き進みます。その間、米英を始めとする諸国はこの様な侵略戦争に反対を唱え続けますが、日本の戦争への意思は変えられませんでした。
そして、あろうことか、軍事支援のみで直接的な軍隊支援までは起こせなかったアメリカに対して、真正面から真珠湾攻撃を仕掛けてしまいます。日本は、中国からそして満州から軍隊を引き上げるという選択を、最後まで自らの意思ではできなかったのです。そして、アメリカを直接戦争に引き込んでしまいます。

この経緯に対する評価は色々あると思いますが、もし今のロシアがかつての日本と同じ様な道を進むとしたら、やはりこの戦争への意思は止められないのかもしれません。それは、日本が国民の意思として、満州と中国からの撤退を受け入れられなかったのと同様に。

現代は核の抑止力が働き、国家総力戦の様なホットウォーにはならない時代と言われています。ロシアの指導者と国民がより聡明な判断をし、かつての日本の様な愚かな結末を迎えないことを祈って止みません。

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