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【台湾建築雑感】集合住宅の平面計画(1)

台湾でよく見る中高層の集合住宅は、時代によってスタイルが異なります。これを考現学的に見てみましょう。

 



これは、最も古い形の共同住宅の平面です。日本の公団住宅にも少し似ていますね。階段を中央にして両側に1ユニットずつ配置します。エレベーターがないので、階数は4階から6階程度です。30年ほど昔、石牌に住んでいた時の住宅がこのタイプでした。

平面計画上の特徴は、通常階段からいったんバルコニーに入ることが多いことです。ここで靴を脱いで客間に入ったりします。客間の裏にはダイニングとキッチンがあります。そして階段と逆の方向に寝室群が配置されます。昔の住宅は比較的広く3室から4室あります。

このタイプの住宅は、メリットとしては面積が広いこと、古いので家賃が安いことでしょうか。デメリットとしてはエレベーターがないため、引っ越しの際不便なこと、敷地面積一杯に建っていることが多く、外部空間が貧相になってしまうことなどがあります。

これにエレベーターが加わった二戸一プランというのもあります。台湾人は、エレベーターホールと階段室の部分の面積を”小共”と言って、販売面積にカウントしますので、専有部分以外のこれらの共用面積を小さく抑えようと考える傾向があります。その点、このタイプのプランは非常にコンパクトに共用面積を作ることできるので、現在でもこのプランは小規模なプロジェクトで見ることができます。

規模が大きくなると、一階当たりのユニット数を増やすことになります。その際日本では片側廊下式にして、南面あるいは東面するユニットを配置する長方形型のプランを採用することが多いですが、台湾ではこのタイプの平面形状はあまり見ません。タワー型にして、縦動線のコアを中央に配置することが多いですね。その主な理由は、先に述べた共有部面積をコンパクトにしたいという要望だと思います。そのために1フロア4ユニットから10ユニットまでの規模にした、タワー型の平面プランが多くみられます。(日本の平面形式をハーモニカ型、台湾のそれをバタフライ(蝶々)型と呼んだりしています。)

このような平面が好まれるのは、厨房に接続してバルコニーを設け、そこを正面からは目立たない作業用のバルコニーとして洗濯機を置いたり洗濯物を干したりするのも一つの理由です。4ユニットであればすべてのユニットを2面あるいは3面採光として、バルコニーを正面から隠すそのようなプランを実現できます。

ユニット数が8程度になると、この作業用バルコニーを隠すという平面プランが難しくなり、一部が正面に現れてくることになります。

通常、この2面採光をとることが困難になる中央に配置するユニットは、面積を小さくして計画することが多いです。4隅のユニットは2面採光をとれるので、作業用バルコニーを裏に隠して計画できます。

この様に大規模化すると、台湾と日本の集合住宅は平面形状が大きく異なってきます。

また、外観の様子も時代によってだんだんと様子が変わってきます。

これは低層の住宅でエレベーターのない、階段室型ですね。道路側にリビングと寝室の窓を設け、道路と逆の裏側に作業用バルコニーと厨房、もう一つの寝室が配置されています。外装は古い建物であればモルタル塗りのまま、比較的新しいものであれば小口タイルを貼っています。

また、この時代ではバルコニーを室内化したり、鉄格子を使うということが許されていました。1階は商業用途に供され、プランの中央に階段が設けられ、入り口が設置されています。

高層の比較的古い時代のものはこのような外観です。壁面はタイルにより仕上げられ、鉄格子がランダムにつけられています。これはこの鉄格子が、それぞれの住戸の持ち主により任意に付けられているからです。そのため外観が非常に乱雑な印象になってしまっています。空調の室外機が無造作に外観壁面に取り付けられているのも特徴です。また、立面デザインの視点で見ても特に特徴のないもので、単にヴォリュームを作ってそこに窓を設けたというように見えます。

このような外観の建物が、デザイン性に欠ける、都市景観としてふさわしくないという議論になっていくわけです。

この次の時代になると、外観から鉄格子が消えます。空調機も目隠しを設けるという配慮をしてあります。上記のような都市景観を損なうようなことはしないように法の網をかけたわけです。具体的には、バルコニーを室内化する、鉄格子をかけるということは禁止、室内の改装工事をする際には、申請をして許可制にするなどの処置をとっています。

もう一つの特徴として、外観に柱と梁が露出するという傾向が現れます。この理由はまた別の機会に詳しく説明します。

そしてごく最近の傾向はこのような建物です。外部に露出する柱や梁を、そのまま表すのではなく、飾り柱や水平な線を入れて、デザイン上の処理をしています。この水平ラインは梁をふかして表現しているのではなく、梁の外側にコンクリートや金属のパネルを設置することで表現しています。意匠上の飾りなわけです。

台湾の街を歩いて見かける集合住宅の様子を、いくつかに分類して説明しました。それぞれの時代によって、計画の際のクライテリア、法規的条件、市場の要望が異なるので、平面計画も建物外観も様々に変化してきています。特にタワー形式の建物で廊下を短くすることが好まれるので、大規模集合住宅の計画は台湾と日本とでは大きく異なっています。

台湾建築さんぽ

FBで台湾建築さんぽというグループを作って、台湾の建物やランドスケープも紹介しています。こちらもご覧ください。


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