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個人事業主として独立しました。 

皆様こんにちは!
医師でエンジニアの飯塚浩也と申します。

この度、7月26日に開業届を出し、個人事業主 (屋号: conochikara)として独立しましたので、ご報告させていただきます。

このnoteでは、独立に至った背景や、今後のことなどをお伝えできればと思います。

屋号の由来

conochikara という名前には、以下の3つの意味が込められております。

1. 子の力

2.  個の力  

3. Coの力 (Cooperate 協調) 

子の力

開業届けを出した7月26日は、娘の3歳の誕生日でした。

これからも、1人の父親として恥ずかしくないように、仕事も育児も頑張っていきます。10年20年後に、今より少しだけ良い世の中になるように、次世代を担う方々にバトンタッチできるよう、努めてまいります。

個の力

5年前、医療現場の問題をITの力でよくしようと、熱意溢れる20代の自分は、病院外の世界へ1歩出ることにしました。何のスキルも持たない状態の中で特にITに1番困っていたため、エンジニア探しに赤坂のとある会社へ行きました。その時、担当者からこう言われました。

「そのアイデアってビジネスになるんですか?」

「あなたたちの、サークル活動なんかに付き合ってられませんよ。」

「こちらは株式会社なので、営利が目的なのですから。」

絶望しました。

病院の中では特に不自由なく働いてきましたが、医療の世界から1歩出るとこんなに厳しい現実が待っているのかと・・・

「世の中の理不尽さ、厳しい現実と戦うためには、個の力が必要なんだ。
 人はどこまでも無限に成長できる。だから、努力していこう。」

そう思い、エンジニアの道に足を踏み入れました。
これからもこの気持ちは忘れずに、大切にしていきたいと思います。

Coの力

世の中を良くするためには個人の能力だけでは不十分で、同じミッションを持った人々と協調(Cooperate)することで初めて、後世の人々に良いものを残すことができると感じました。

水を叩くのではなく、器となる地形をかえる
時を告げるのではなく、時計をつくる

これからもそんなことを大切にしていきたいと思います。


独立に至った経緯

少しこの話をします。

2019年にエンジニアとして働き出してから、本当に楽しい毎日であっという間でした。4月の給料を初めてもらったとき、

「コード書いてるだけで、本当にお給料ってもらえるの?😆😆」

と感動したことを、今も鮮明に覚えてます。

しかし、エンジニアとしての生活は常に罪悪感と隣り合わせの毎日でした。

自分だけが、こんなに楽しい仕事をしていて良いのだろうか?

医療現場の課題を解決するためにエンジニアになったのに、まだ何も還元できてないじゃないか?

2020年6月にCTOになり、その時に医療現場を完全に離れました。コロナが大流行している中でも、自分が医師として何も働けていなかったことがとても辛かったです。(2022年2月から、医療現場に復帰しております)

いつか起業して会社を作ったとしたら、コードを書かなくなるだろう。エンジニアをどうせいつの日か辞めなければいけない。早く気持ちの踏ん切りをつけなければいけない。

でも、できない。
まだ、楽しみたい。
まだ、エンジニアとしての人生を謳歌したい。


まだまだ、知らないことが、たくさんある。セキュリティを極めたい。機械学習だって、Kaggleだってもっと時間かけてちゃんと勉強したい。ブロックチェーンの勉強もしたい!もっともっと遥かな高みを目指したい!知らない知識をどっぷり身につけたい!コード書く楽しさに没頭したい!


この2つの気持ちの間で、葛藤する毎日でした。

2022年4月にdinii という飲食スタートアップに転職し、この迷いは完全に消えることになります。


そこには、自分よりずっと優秀な若手エンジニアたちがおりました。プログラミングが得意なエンジニアって、山ほどいると思いますが、彼らは決してそれだけではありませんでした。会社を愛し、サービスを心から愛し、飲食の未来を変えよう、顧客体験をもっとよくしようと、他部署の社員を積極的に巻き込んで仕事している姿に、メガホンで殴られたような衝撃を受けました。


彼らのような若手が、これからの未来を作っていくんだ。
自分がIT現場の第1線でコードをかかなくても、もう大丈夫なんだ。


と、やっとエンジニア人生を終える決心ができました。


3ヶ月という短い時間でしたが、皆様には本当に感謝しております。この御恩は、医療現場を良くして必ず皆様に返します。ありがとうございました。

これからやる事業について

以下の3つをお話ししたいと思います。

1. プログラミング教育事業
2. 物販事業
3. 働き方改革関連事業

プログラミング教育事業

これまで、100人ほどの医療者や医学生を対象にITを伝えてきました。具体的には、プログラミングスクールに通う医療者へお話や技術サポートをしたり、SNSで相談に乗ったり、また医学生エンジニアインターンという少し変わった取り組みなども挑戦してきました。

一般的に、医療界はIT化やDXが特に遅れていると言われておりますが、個人的には、ここ数年で急速に進んでいる印象を持ちます。

令和に入りCOVID-19対応、経営収支悪化、医師の働き方改革、デジタル化推進の流れなど、医療業界にとって新たな環境変化の時代が訪れています。 日々刻々と変化する日本の医療のあらゆる“コト”に向き合う医療機関の皆さまのニーズに応えるべく、“セラー(貯蔵室[cellar])”に新技術やソリューション情報を蓄え、皆さまの情報収集を支援するサービスが“コトセラ”です。

コトセラ

では、医療現場の負担は減ったのか?というと、まだまだそんなことはありません。業務効率化という観点では、人事、労務、会計などのバックオフィス領域、地域医療連携領域はだいぶ改善されてきましたが、医師、看護師、薬剤師などの業務については、まだまだ属人的であったり、紙やExcelを使っている部分が多く、ほんの一部しか解決されていないと感じます。

当直の申し送りを手書きでしている


厄介なのが、「身近な目の前の課題」というのはマネタイズが難しく、外部の会社が解決しようと動く可能性は、今後も低いということです。

なぜならB to C (buisness to consumer)は、Winner takes Allの世界で、面をとって初めて B to B(business to business)領域に拡大するなどの展開が可能となります。(Sansan社の、個人向け名刺管理サービスEightの資料が大変勉強になります)

医療者の身近な課題を解決する B to Cサービスは、課題がニッチ過ぎて、単価が低く、面が取れないとマネタイズが難しいなどの性質があることから、かなり難易度が高いのです。


ゆえに、ビジネスにならなそう、でも切実に困っているという身近な課題は、医療者自身が解決しなければなりません。そのためには、1人1人の医療者がエンパワーされる必要があり、以下のことを目指してやっていきたいと思います。

【メディア(Youtubeやnote記事など)で情報発信】 
・ 仕事の生産性が向上するツールやサービスのご紹介。
・医療DXに関する情報発信。
・国内/海外ヘルスケア企業の情報発信。

【プログラミング教育】
<初級者、未経験者>
   ・オンライン学習教材のご提供 (10月-)
   ・グループ学習のご提供
<中級者以上>
   ・個別トレーニングプログラム (Union Program)のご提供

プログラミングは習得に一定の時間が必要なため、ITに興味がない多忙な医療者が、わざわざ無理して学ぶ必要はないかもしれません。

しかしながら、プログラミングが必修科し、2025年のセンター試験でプログラミングやデータサイエンスに必要な統計処理などが導入されます。医療系の大学に通ううちから、プログラミングサークルや同好会に所属したり、ベンチャー企業でインターンをする動きが加速化しており、医療現場でITを自由自在に使いこなす人材は今後ますます増えてくるだろうと予想されます。また、首相自らが医療DX推進本部を設置していることから分かる通り、国はこれから本気で医療現場のICT化を強化していきます。

もし、現状に少しでも不安や違和感があるのであれば、ぜひ勉強を始めてみて下さい。

「ベストなタイミング」を待つ必要はありません。最適な時は、いつだって今だからです。

現在(8月7日)は、中級者以上向けのUnion Program しかご用意できておりませんが、今後拡充して参りますので、少々お待ちいただければ幸いです。

これから、医療現場にIT業界で培った経験やノウハウを、全て還元していきます。1人1人がエンパワーされ、医療界全体のIT戦闘力を底上げするサポートができれば幸いでございます。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。


物販事業

これまで医師として働いてきた中で、「予防がいかに重要か?」を痛感してきました。心筋梗塞や脳梗塞などの病気は、1度なってしまってからでは遅く、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を、適切な運動や食事によってコントロールすることが重要です。

一方で、この予防において、医療が介入できる余地は限られてます。外来の数分の指導でできることは限られており、日常生活をいかに過ごすかが肝心になります。

これまで、自宅での運動習慣を改善させ、健康な生活をサポートできる、ヘルスケアアプリを開発して参りました。

予防について、他にも医療以外の側面からできることはないか?と考えた末に浮かんできましたのが、この事業になります。

例えばですが、先日の往診で、施設入所中のパーキンソン病の患者さんが意識消失をしたとの連絡あり、診察しに伺いました。

心原性失神や出血/脱水を疑う病歴、初見に乏しく、簡易Tilt試験を施行したところ、収縮機血圧が30mmHg以上低下し、典型的な起立性低血圧の合併を認めました。状態は改善していたため、

「立位になる時、食後や排尿・排便、入浴後は、ゆっくり立ち上がるよう特に気をつけてくださいね。」

と生活指導を行って経過観察としたのですが、介護職員の数は限られております。いつか転倒してしまうのではないか?また同じ症状が出るのではないか?という一抹の不安が残りました。もし起立性低血圧の人専用に、体位変換のサポートをしてくれる器具があればいいのに・・・とこの時強く感じました。これはほんの1例ですが、日常診療を行う中でこのようなケースに多々遭遇します。

 「予防を身近に、誰もが意識せず怪我や病気を未然に防ぐことができる」  

そんなコンセプトで、先日、yobot (予防 + robot )という、自社ブランドを立ち上げました。

これから、医療者としてのプライドをかけて、怪我や慢性疼痛などを未然に防ぐことができる商品を作っていきたいと思います。心の底から良いと思える商品だけを、お手頃な価格で、本当に必要としている人々にきちんと届けたいと思います。妻(主婦、元薬剤師)と一緒にこのブランドを運営していきますので、皆様どうぞよろしくお願いします。

第1弾の商品ですが、小児を頭部外傷から守るコーナークッションを開発しております。本年9月には販売できる予定ですが、また、後日詳細をお伝えさせていただければと思います。

少し先の未来になるかもしれませんが、病院やクリニックで働く医療者の負担を減らすことができる商品展開を考えております。特に、スタッフの休憩室、当直室の環境が悪く(ベッドが硬くて眠れない。そもそもベッドなんてなく、ストレッチャーの上で寝ているなど。)そこをなんとかしたいと考えております。

働き方改革関連事業

実は元々、医師の働き方改革関連サービスを作って、起業する予定でした。

現在も、医療者や病院経営コンサルトの方々へのヒアリングを続けている最中ですが、やはり、働き方改革サービスはB to Bの場合、大病院にしか刺さらないという結論は変わっておりません。

B to Cとして、いくつかのサービスを考えては潰す、考えては潰すを繰り返していたのですが、まだ、はっきりした勝ち筋が見えておりません。

オンライン名刺から、GPS自動打刻する流れ

我が家の財政状況や許容できるリスクを考えた結果、スタートアップを立ち上げるのではなく、既出の2つのスモールビジネスをまず軌道に乗せることを優先することにしました。

遠回りに見えるかもしれませんが、自分の人生を通じてこの働き方改革と向き合っていきます。必ず、医療現場を今より良い労働環境にすることを、お約束します。

最後に

これからも医療現場で働きながら、IT業界で学んだことを、きっちり還元していきます。

これまでIT業界でご縁があった皆様、ご指導くださった皆様、至らぬことが多々あると思いますが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

独立して今は予定がガラガラなため、家庭の時間や育児の時間を大事にしつつ、皆様と引き続き変わらぬ交流ができれば幸いです。

長文をお読みくださりありがとうございました。


8月7日
conochikara  飯塚 浩也

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