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六割主義

私は仕事には常に60%の力で臨んでいます。100%の力なんて絶対に発揮しません。私は60%で充分だと思っています。

こう言うと不遜に聞こえるでしょうか。

では皆さんは、100%の力を発揮していますか? 気を抜く時間は一切ありませんか? 同僚と冗談を言い合う時間とか、疲れてボーッとする時間とか、一切なく働き続けているのでしょうか。

そもそも、そんなこと可能なのでしょうか。

もう一度言います。私は60%の力で仕事に臨んでいます。60%で充分だと思っています。

比喩的に言いますが、50の力量しかない人が100%の力を発揮しても50の仕事しかできません。しかし、100の力量をもっている人が60%の力で臨めば60の仕事ができます。120の力量をもっている人が60%の力を出せば72の仕事ができます。150の力をもっている人なら90です。

私の言っていることがおわかりでしょうか。仕事は一所懸命度のパーセンテージで測っても意味はないのです。どれだけの力量をもっているかです。

皮肉めいて聞こえると思いますが、もう少しお付き合いください。

常に100%のエネルギーで仕事をするということは、何か不測のトラブルにあたったときに、それ以上の余力をもっていないことを意味しています。それだけ不測の事態に弱いことを意味します。しかし、60%のエネルギーで日常を過ごしていると、何か不測の事態に遭遇したときには、40%分の余力を発揮することができます。それだけ余裕があるわけですから。

職員室にはいろいろな力量の教師がいます。

例えば、力量50の人が常に100%のエネルギーで仕事をしていました。しかしあるとき、ある保護者のクレームをきっかけにだんだん精神が安定しなくなってしまって、ついにはつぶれてしまいました。周りには力量40の教師と力量80の人と力量100の人の3人がいます。もしもこの3人がみんな100%のエネルギーで仕事をしていたとしたら、このつふれてしまった教師のフォローはだれがするのでしょうか。だれもその余裕をもっていないではありませんか。

これが力量40の人が100%で仕事をしているけれども、力量80の人は80%で、力量100の人は60%で仕事をこなしていたとなれば話は別です。力量80の人と力量100の人の余力で、なんとか急場をしのげるのです。集団で、組織で仕事をするには、組織を束ねる人間にこうした危機管理の発想が必要なのです。

よく学年主任や生徒指導主任、教務主任が仕事をたくさん抱えてあっぷあっぷしている職員室を見ることがあります。周りの教師たちも主任クラスが仕事を抱えるのは仕方のないことだと、それを当然のことのように思っているのです。ひどい職員室になると、管理職が校内のいろんな仕事を抱えすぎて、本来の学校経営業務に支障を来しているなんていう職員室さえあります。しかし、こういう職員室は不測の事態に臨む余力をもたない教師団です。いつ決壊してもおかしくないひびの入った堤防のようなものです。

教師にとって「しょいこみ力」とは、他の先生のフォローをする力のことです。フォローするには常日頃からフォローできる体制をつくっておく必要がこあります。管理職はもちろん、主任クラスは仕事を抱えすぎてはいけないと意識すべきですし、他の人に仕事を振るということを覚えなくてはなりません。また、周りの人たちは管理職や主任クラスが仕事を抱え込み過ぎないように、ルーティンワークを分担しなければなりません。

しかし、若くて力量がないから100%の力を発揮しなければならないかというと、私はそうは思いません。やはり60%、最大でも80%程度のエネルギーで仕事に取り組むべきだと考えています。やはり不測の事態に備えるためです。

仕事には予想だにしない、想像したこともない不測の事態がつきものです。普段から100%のエネルギーを津嘗て仕事をしていたり、毎晩23時まで学校に残って日常業務をやっとこなしているという状態では、何かあったときに絶対に対応できません。パンクしてしまいます。精神を壊してしまかねません。そんなことになってしまっては、これまでの100%の力の発揮もすべて無駄になってしまいます。

実は、誤解を怖れずに言えば、100%の力を発揮したところで、私たちは決して100点満点の仕事などできないのです。60%で仕事をしたときに62点だったものが、100%発揮すると68点の結果が出る、その程度の違いしか生まないのです。

それならば、日常的には60%の力で仕事をして、余力を力量を上げることに向けたり、いざというときのために肉体的にも精神的にもゆっくり休んだりすることに費やした方がよくないでしょうか。50の力量を60に上げただけで、60%の仕事でも30が36に上がるのです。力量50の人が日常的にゆっくり休んでいれば、いざというときに全力で50の力を発揮できるのです。そんなふうに考えてみてはいかがでしょうか。

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