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現実

「現実」の対義語が三つある。一つは「理想」、一つは「夢」、一つは「虚構」である。「理想と現実」「夢と現実」「虚構と現実」、どれも世の中では対立概念として把握されている。

一方、「夢」という言葉は、「理想」の意味で使われる場合と、「虚構」の意味で使われる場合とがある。「あなたの夢は何ですか」というときの「夢」は「理想」の意味に近く、「これは夢か幻か」というときの「夢」は「虚構」の意味に近い。

教育の世界でも、教育を理想で語るのでなく、現実で語ることを是とする風潮が、80年代から流布し始めた。これが現実を動かす。これが現実を変える。そういう現実的対応策こそに価値がある。そういう風潮が教育界を席巻した。

それから三十数年が過ぎ、こうした風潮が当然の世の中になった。その結果、小さな現実を変えられることが教師個人の価値を高め、小さな現実を変えられないことが教師個人の価値を貶める世の中が来た。「小さな現実」に対抗する「大きな理想」も、「大きな夢」も、そして「大きな虚構」さえ教師が持ち得ない、そんな世の中になってしまった。

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