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言葉と「言葉」

ヒット曲から「言葉」が消えた。同世代以上の方々とこの話題に興じたことは一度や二度ではない。いや、十度や二十度でさえない。そのくらい、これはある一定世代以上の共通感覚であるように思う。

実はここ20年くらい、小説からも「言葉」が消えたとの印象を受けている。すべてではないが、結構な割合の小説から「言葉」が失われている。もちろん小説は言葉で書かれるわけだから、言葉それ自体が消えたわけではない。しかしそれは言葉であって、「言葉」ではない。例えて言うなら、小説が「意味」だけで書かれているという印象なのだ。それは僕らがかつて慣れ親しんでいた「言葉」とは違う。なんと言うのだろう、意味と音楽とが一体となった「言葉」、意味と絵画とが一体となった「言葉」、意味と霊気とが一体となった「言葉」ではないのだ。わかりにくいだろうから敢えて月並みに言えば、その作家独自の「文体の色気」みたいなものが失われている。

ましてや、教育書からはほぼ完全に「言葉」が失われてしまった。正直、人生の後半にこういう時代を過ごさねばならないことを残念に思うし、不幸なことだとも感じている。そしてこんな年配者の愚痴は、おそらく若い世代の人たちには欠片も伝わらないだろうことをも自覚している。

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