能登半島に伝わる「あばれ祭り」が想像を超えたあばれっぷりで心を揺さぶられた話
こんにちは、あなたのココロのスキマ♡ライカと写真とお祭りでお埋めします、hirotographerです。
陸の孤島、能登半島には200地区もの場所で祭りが行われる。
特徴的なのはキリコと呼ばれる担ぎ棒のついた巨大な灯籠(重さ1t〜2t)を担いで練り歩くスタイルの部分だが、これをベースにしつつも実は地域ごとに祭りの内容もかなり異なっており、多様性という観点でこの小さな半島はまさにお祭りのガラパゴスといってよい。
以前、恋路の火祭りは見に行ったが、これもなかなか魅力的な祭りだった。
そんな能登で最も注目を集める祭りの一つが宇出津で行われる「あばれ祭り」である。
なにせ、
あばれ × 祭り
である。タダでさえ、酒飲んで暴れるのが祭りだったりするのに、あまつさえそこに「あばれ」という要素をブっこんで大丈夫なの?と心配になる。これは強いて言うなら、
一級河川 荒川リバー
Arakawa-River
という表記を見た時に感じる、「え?荒川リバー?
川が2つない?」という違和感に近い。
なお、利根川の看板の表記は
一級河川 利根川
Tone-River
らしく、非常に主張控えめ。
この荒川リバーの例からも同義語反復が許されるのは「荒ぶってるやつだけなんだな」というのがよく理解いただけるのではないかと思う(
つまり「あばれ祭り」はもはや存在自体がちょっとしたパワーワード。最近ちょっとやんちゃな姪っ子が「あばれあそび」という遊び方で幼稚園でご学友とともに荒ぶっていたらしいのでおじさんちょっと心配です。
このあばれ祭だが、疫病退散を祈って1665(寛文5)年に始まったもので、ルーツを京都の八坂神社に持つ。八坂神社の祭礼である祇園祭は疫病退散を目的として863年の祇園御霊会から始まったと言われるが同じくこのあばれ祭りも疫病退散が主願であり、神輿が奉納される八坂神社は京都の八坂神社の分祀である。
あばれ祭りの最中に各キリコの担ぎ手の間では
「サッカサイ、サカヤッサイ」
という掛け声がこだまするが、正確に記述すると
「イヤサカヤッサイ」
となっており、これも京都の八坂神社を語源とするものだ。
祭神も同じく「須佐之男命(すさのおのみこと)」。ヤマタノオロチ退治のエピソードが一番有名ではあるものの、古事記において、高天原で作物を荒らしたり、田んぼの畦をぶっ壊して回ったり、神殿にうんこしまくったり、しまいには機織女に皮を剥いだ馬を投げつけて追放されたくらいの荒ぶる神である。
元気があってよろしい!!
無論、このあばれ祭りではうんこが飛び散ったり、馬が投げつけられたりすることは一切ないのでまずはその点ご安心いただきたい。飛び散ったり、投げつけられたりするのはお神輿のほうである。
神が乗る輿、つまりは祭事の最中は神様そのものであるがこの神輿に対する扱いがあばれ祭りではレベルが違う。
どれくらい違うかと言うと
ムーミン谷から突然北斗の拳の修羅の国にやってきたのかと思うくらい違う。
通常のお神輿であれば、縦に大きく揺さぶられることはあってもその装飾や何より中の神様に失礼が無いよう、基本的には大事に扱われるものである。
だがしかし、このあばれ祭りにいたってはその常識は通用しない。
ドMのお神輿様?が「あばれ」のダメージを一身に受け続けるのだ。
※祭り前半は撮影できなかったため、Twitterで見つけた他の方の動画を引用しています。
神輿様「もっと水責めしてください!!」
神輿様「もっといたぶってください!!」
神輿様「もっと熱いのと水で攻めてください!!」
神輿様「もっと叩きつけて火であぶってください!!」
このように散々火で炙っては転がし、叩きつけ、また転がし、また炙られ、
「やめてさしあげて!もう、神輿様のライフはゼロよ・・・」
と誰もが口にしそうになったところで、神社の神主?が追い打ちのように一言、
「それじゃあ神様は満足せんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
とガチで言い出すので、担ぎ手たちは
「神様のバカッ、欲しがりッ!!もう知らない!」
と、さらに神輿様は頭頂部に火のついた藁をパイルダーオン!!
からの火中引き回しの再ループ。
追加の杉の葉も加えられ、観衆にも熱波が届くほど燃え上がる。
やがて熱気と熱波の境目がつかなくなったころ、
「そろそろ神様が満足したかな?(チラッ」
というタイミングで神社へと奉納される。
この辺りの止め時は、「なんとなく」だそうだ。
日中から深夜までずっと苛め続けられる神輿様。
それを興味津々に見つめながら外国人の方々は
「Beautiful!!」
とひたすら感激している。確かに目を奪われるほど荒々しく激しい祭りである。「Beautiful」という単語の可能性を感じる体験だった。
なお、今年のあばれ祭りだが、
など、よりハードコアな展開もあり火傷を負っていらっしゃる方もいた。一日も早い回復を祈りたい。
そんなリスクにも関わらず、2日間祭りを目撃して強く感じたのは、地元の人たちの祭りへの熱い思いだ。この祭りのためだけに全国各地から地元民が帰ってくる。あるものはお御輿と盛大に暴れるために、あるものはキリコとその伝統をその肩で担ぐために・・・子供たちはキリコの上で、太鼓を鳴らしながら担ぐ大人たちの背中を見守る。
地元愛を育むにはその憑代となるシンボルとストーリーが必要である。もちろんそれは時の流れの中で失われてしまうこともある。
能登線のように無くなってしまうものはあれど、能登には祭りという強固な形でそれが培われている。その激しい愛を一身に痛みとして受け続ける?神輿様。迷わず来年の宿の予約をとって、帰路へと着いた。
なお、今回の写真は2日目の様子であり、松明の元にキリコが集い練り歩く初日も非常に魅力的であることを追記しておく。
機会があれば是非魅力あふれる能登に訪れ、この祭りを体感いただきたい。
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