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金融教育とEメールの共通点

昨日は、ある企業の外国人従業員の方々に、その企業が導入している退職金制度である確定拠出年金制度について、解説のオンラインセミナーを行ってきました。ご存知の方も多いかと思いますが、確定拠出年金においては、毎月会社(場合によっては従業員自身も)から確定拠出年金専用口座に入金されるお金を従業員自身が運用して、退職後の生活資金を蓄えていくという制度です。

一般的に言えば、「運用」という行為は、多くの日本人にとって初めて行う行為であり、それに知識もまったくないのが通例です。確定拠出年金セミナーの参加者の多くは、新入社員を含む若年労働者であることが多く、この人たちにいきなり「投資すべき」ですと伝えても、ピンとこなかったり、恐ろしかったりということが多いと思われます。戸惑いと恐れを抱く人が少なくないと考えられます。

セミナーの内容は、通常以下の4つないし5つの点についての解説です。
1.ライフプランニング、ファイナンシャルプランニング概説
生きていく上で、今後必要となる大きな支出は何か、それらに備えるためには、何が必要か、特に退職後を支える公的年金と支出の関係に関する解説
2.確定拠出年金制度の解説
確定拠出年金のしくみ、メリット、留意点など
3. 投資基礎理論
リスクとリターン、長期分散投資、タイミング分散、資産分散などの基礎理論など
4. 具体的に投資対象となる金融商品についての説明
預金、保険、株式、債券、不動産、投資信託
5.制度加入手続き

最後の手続きを除くと、常々学校教育の中で、十分時間をかけて伝えるべきことであると思ってきました。これだけのことを、1時間半とか2時間程度(コストパフォーマンスを考えて、さらに短いものを実施する企業もある)のセミナーを1回実施するだけで、「はい今日からあなたの投資人生が始まります」というのは、乱暴に過ぎると感じています。

一番いいのは、高校や大学で正式科目として(大学なら)単位取得させるような性質のもので、それくらい重要だと考えています。大学までの過程でほとんど知識のない状態で、社会人になったらいきなり「はいどうぞ!」は、当事者である若者がかわいそうだと思うし、彼らを余計なリスクに晒すことになると思います。例えば、リスクの低いものにリターンの高いものはないという基礎理論を理解できれば「超低リスクで超ハイリターンの投資商品」の勧誘があったときに、「これは眉唾ものだ」と理解できるようになります。

以上の点は、以前にも書きました。

このような教育過程でほとんど教わらないことが、社会に出た途端、非常に重要なツールをして使いこなさなければならなくなる。そういったもののもう一つの例がEメールだと思っています。

現在某大学で1コマだけ、英語のEメールを書くためのコースを受け持っていますが、しっかり教えれば、学生諸君はその意義を理解し、しっかり学び、ポイントを身につけていきます。

某大学での調査でも然り、また私自身が教室内で学生に対しアンケートした結果でも判明していることは、学生諸君の日常的な家族、友人とのコミュニケーション手段は、圧倒的にLINEであり、Eメールは教師とのやり取りや、就職活動に際する企業担当者との通信のみに限られています。その結果、(私自身も学生からもらうEメールを読んで常々思っているのですが)ちゃんとしたEメールが書ける学生は、驚くほど少ないです。LINEとEメールでは、そのコミュニケーション手段としての特性に差異があり(件名がEメールにおいて極めて重要であるなどは、その最たるものです)、これらは社会に出る前にしっかりと身につけておくべきものだと思います。そこにブリッジをかけてあげるのが、教育機関の務めかと思いっています。

金融教育とEメールの共通点は、この「大学と社会とのギャップ」であり、「社会に出た途端に求められるのに、それまでまったく教えてもらっていない」ことにあります。

大学院での研究テーマは、英文ビジネスEメールでした。


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