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ゲイ社会人の大失恋 #24

以前の記事の続きの話です。

大学4年生の夏に僕は運命的な出会いをして
その人と付き合うことになりました。

恋愛経験がほとんどない僕にとって彼と過ごす全ての時間が特別で
全部が楽しくて、幸せな時間でした。

彼は僕よりも6歳年上で、社会人の彼は学生の僕にとって
すごく大人びて見えて、とても魅力的でした。


彼のことが大好きで、僕の時間は彼を中心に回っていました。

彼も僕に対して


「ずっと一緒にいようね」

「今までこんなに誰かのことを本気で好きになったことがない」


とそんな嬉しい言葉を、毎日のようにくれました。



彼は旅行好きで、一緒に色んなところに出かけました。



記念日のお祝い、誕生日のお祝い、クリスマス、年越し、初詣、バレンタインデー、ホワイトデー



彼と一緒に、四季を感じ
大好きな人といられる時間を噛み締めながら日々を過ごしていました。


そんな僕と彼の関係が変わりはじめたのは僕が社会人になってからでした。


僕は大学を卒業して、社会人になり彼とは少し距離が遠くなってしまいました。
車で片道で約2時間程度の距離でした。

僕はカレンダー通りの休日で、彼は不定休だったため休みも被りづらく
僕が就職してから彼と会える頻度は減りました。

それでも、お互いに工夫して時間を作ってデートをしたり
毎日、連絡を取り合っていました。


距離が変わっても、僕の彼に対する大好きな気持ちは変わりませんでした。


僕は、毎日でも彼に会いたかったし
彼の声を聞きたかったし
彼が今日なにをしているのか知りたかったし

僕が毎日毎日、彼を大好きに思うように
彼のことを考えるように
彼にも僕のことを大好きでいてほしいし
僕のことを考えてほしい



社会人になってからも、僕の生活の中心は彼でした。
毎日彼のことで頭がいっぱいでした。


色んなことを彼に期待していました。
仕事がキツくて、辛くて、弱音を吐きたくて
彼に優しく「頑張ってるね」と話を聞いてほしいと思い仕事の話しをしたら
彼に厳しく諭され、それにイライラしてしまい喧嘩をしたり

マメに連絡をくれない彼に対し、苛立ってしまい
彼に強く当たってしまったり

友達を優先して、僕のために時間を作ってくれない彼に対して
不満を抱いて文句を言ってしまったり


当時の僕は、そんな彼氏でした。


僕の生活の中心は彼でしたが、それは彼のことを尊重した意味ではなくて
僕は彼を自分の思い通りにしたかったのだと思います。

思い通りにならないことに腹を立てて、不機嫌になって、喧嘩をして

楽しい時間よりも、そういうお互いにとって苦しい時間が少しずつ増えていきました。


僕は、お互いが不満に思っていることは伝え合うべきだと思っていました。
僕にとってそれは、彼とよりよい関係になりたかったからそうしていたつもりでした。


でも、気づいたときには大好きな彼は
僕に対してそっけなくなり、連絡の頻度も減り、会いに来てくれる頻度も減っていきました。


よりよい関係になるどころか、どんどん関係は悪くなっていきました。

そして、なんとなく
僕は僕がこれまでやってきたことが間違っていたのかもしれないと気づきました。


でも、そのときには自分が何を間違えているのか
どこが間違っているのかわかりませんでした。

ただ漠然と、このままじゃ彼との関係が終わってしまうんじゃないかという怖さがありました。


そして、付き合って2年目のクリスマスに彼と話し合いました。


最近、喧嘩が増えていること
本当は喧嘩をしたいわけじゃなくて、いい関係になりたいと思っていること
嫌な気持ちにさせてしまっていて申し訳なく思っていること
僕は付き合ったときからずっと、大好きな気持ちは変わっていないこと
これからも一緒にいたいこと

素直な気持ちを彼に伝えました。


彼は僕の素直な気持ちを聞いて、今までの心の蟠りが解けたように泣いていました。
そして、彼も同じ気持ちだと言ってくれました。


僕はその様子を見て、とても安堵しました。


日に日に素っ気なくなっていく、彼に対し不安を抱く毎日でしたが
彼の言葉を聞いて、安心してじんわり涙が出てきました。



素直に伝えてよかった。


きっとこれからは大丈夫。


付き合った当時みたいに、また仲良くやれる。



そんなふうに思っていました。




でも、僕の期待通りにはなりませんでした。



なんとなく彼は、僕にはもう関心がないんじゃないかと日々感じるようになりました。
全てが素っ気なく感じました。


どんどんどんどん、彼と僕の気持ちがズレていく感覚があって
それが毎日辛かったです。

楽しかった日々を取り戻したくて、考えて考えて
自分なりに努力をしました。

何をしたら彼は喜んでくれるかな、嬉しそうにしてくれるかな
前みたいに楽しそうにしてくれるのかな

そんなふうに毎日毎日考えて、できる限りのことをしました。


しかし、彼には何も響いていないような感じがしました。


当時の僕は、仕事でも余裕がなくて
その中で彼との関係もうまくいかなくて


何もかもが空回りして、うまくいっていない状態でした。


本当に毎日が辛くて、しんどくて
仕事も恋愛も頑張りたいけど
どんなに頑張っても、2つ頑張ろうとすると全部がダメになってしまうように思いました。


そして僕は、恋愛を諦める決断をしました。




「会って話したいことがあるがあるから、近々時間を作ってもらえないかな?」


彼にメールでそう伝えると、すぐに返信が来ました。

そしてそのメールを送った翌日に彼は僕の家まで来てくれました。





彼を家に招き入れました。



僕は、大好きな彼に別れ話をするために彼を呼びました。


僕は彼の優しい目が大好きでした。
クシャッと子どもみたいに笑ってくれるところが大好きでした。
変なことを言って、いつも笑かしてくる彼が大好きでした。
彼はいつもオシャレで、オシャレが苦手な僕の服を選んでくれる彼が大好きでした。
なんでも美味しい美味しいって言ってたくさん食べてくれる彼が大好きでした。
僕にたくさんの“初めて”を経験させてくれた彼のことが大好きで大好きで特別でしかたがありませんでした。


そんな大好きな彼に、僕はこれから別れ話をします。




彼は、優しい表情で

「話しって、どうしたの?」

と聞いてきました。



少しの沈黙の後に、僕は

「もう、僕のこと好きじゃなくなったんだよね」

と彼に聞きました。




「うん…。そうだね、もう好きじゃないかな。」


彼は、静かにそう言いました。


その言葉を聞いて、体の力がフッと抜けました。
緊張が解けたような。そんな感覚でした。


「そんな気がしてた。じゃあ、今日で別れよっか。今までありがとう」


彼にそう伝えると、彼もそうしようと二つ返事で答えました。



本当は、別れたくなんてありませんでした。
やり直そうと言ってほしかった。



僕は、明るく彼を見送ろうと心に決めていました。


「荷物まとめてあるから、持って帰ってね。別れてからもたまにはご飯行こうね!」


そう伝え、少しの時間、思い出話しをしました。
そして、お互いに感謝の気持ちを伝え合い彼を玄関まで見送りました。




玄関で靴を履き、振り返って


「じゃあ、またね」


と言った彼を姿をみて



僕は、僕の気持ちを抑えられなくなりました。


笑顔で見送りたかったのに、自分の気持ちが抑えられなくて

彼の腕を掴んで、その場で泣き崩れてしまいました。



「本当は、別れたくないんよ。僕は大好きな気持ち、変わってないんよ。また僕のことを好きになってもらえるように努力するから。すぐにはできんかもしれんけど、僕の悪いところ全部直すから、僕の悪いところ全部言って。もう一回だけ僕にチャンスをください。」



心の声がそのまま、声になっていました。


彼は、泣き崩れる僕の腕を優しくほどいて


「ごめん、それはできない」


と言いました。



その言葉を聞いて我に返りました。


僕がしたかったのはこんなことじゃない。
大好きな彼を困らせたかったわけじゃない。


僕は、涙を拭って
笑顔を作り直して


「ごめん、今のは忘れて。大丈夫だから。最後までこんなんでごめん。今までありがとう。またね」


と彼を送り出しました。





彼がいなくなってから、一人でたくさん考えました。
たくさん後悔しました。
自分を責めました。

自分の何が悪かったのか、どうすればよかったのか
どうしたらずっと大好きでいてもらえたのか

考えに考えましたが、答えはでませんでした。



後日、彼と別れたことを彼との共通の友人に話したところ
その友人は僕に同情してくれました。



「かわいそうやったね。実は、ひろトと別れる前にもう新しい彼氏がおったんよ。知ってたんだけど言ってあげれんかった。ごめんね」



僕の大好きな彼氏には、もうすでに新しい彼氏がいたようで
もう彼の中では、次の恋愛がはじまっていたんだということをその友人から知らされました。


それを聞いて、その事実を知って
とても悲しかったし、とても惨めに思いました。

でも、彼のことを責めようとは思えませんでした。


彼にとって魅力的な自分でいられ続けていたら、彼は新しい恋愛をはじめる必要なんてなかったのに
彼をそうさせてしまったのは僕の魅力がただただ足りなかったのだと痛感しました。

そして、僕にとって彼はずっと魅力的な彼でした。素敵な彼でした。

そんな僕と彼はそもそも、不釣り合いだったのかもしれません。



これが僕の、初めて両思いになれた彼との失恋の話です。
今でも思い出すと辛くて、泣きそうになります。

でも、自分の未熟さ故の
相手を思いやる気持ちが足りなかった故の結果だったと思っているし

当時、そんな僕とお付き合いしてくれて
たくさんの初めてを経験させてくれた彼には感謝の気持ちしかありません。
辛いことを中心に書きましたが楽しい時間もたくさんありました。

本当に素敵な時間でした。

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