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(おまけの)#6 意外なところにある強み

強み回の最後は私自身のエピソードで、#5までとは文体を変えてお届けします(笑)。


「あなたの強みは何ですか?」

私は24歳で獣医師になってから45歳になるまで製薬業界にいて、キャリア上の挫折を経て経験ゼロの牛の臨床(牧場で乳牛の健康管理と繁殖)に取り組むことになりました。周囲の助けもあり、お陰様でなんとか実績も付いてきました。

もしも
「あなたの、臨床獣医をやるにあたっての強みって何ですか?」
と問われたら、今なら
「人よりもそそっかしく、怪我ばかりしてきたことです」
と答えます。

なに言ってんだ、と思われるかもしれませんが、私は自分自身を包帯グルグル巻きにしてきた経験から、外傷治療・削蹄・外科手術といった類に躊躇なく取り組めるという性質を持つようになりました。

私が勤める牧場は、物好きなことに経験値の乏しい獣医師を好んで採用したがる傾向があり、私の同僚もやはり牛の臨床の経験が少ない獣医でした。

私と同僚、この2人が、とある整形が必要でお互いに経験のない症例に向かい合ったとき、同僚はしばらく困惑し、私は躊躇なく治療に取り組めたということがありました。

都合の良いことにそれで首尾よく治ったという実績が立ち、その一事から以後そういった治療の相談は私に来るようになり、経験値を同僚よりも多く積むことになったのです。

初動になぜそんな違いが生まれたのか?自分はなぜ動けたのか?と考えたとき、
「ああ、自分の子どもの頃の経験によるものだ」
と気付き、それがまた、たまたま職場環境によって強みになったのだと理解したのでした。

※同僚には同僚の強みがあり、互いの尊敬のもと、助け合って仕事をしています。

もっと分析してみよう

自分の強みが「怪我をしてきたこと」というのは、いささか分析が足りないような気もするので、もう少し詳しく掘り下げてみます。

例えば、そもそも仕事の種類にどこか関連する経験でないと活かせませんし、経験活用に関するマインド・スキルといったものがないと行動につながりません。

そこで、「強み」を以下の3点に分解してみます。
ベース:自分の職業の大まかな方向性、業界、そこで生きていける要素
共通スキル:たとえばコミュニケーションとかプレゼンテーションとか、あるいはチャレンジ精神といったマインドも含め、どんな仕事でも共通して求められるようなスキルであり、経験とベースをつなぐもの
経験・自己歴史:自分を突き動かす原因となった体験や、自己効力感の裏付けとなる体験

ベース

まず自分は獣医師の資格を持ちます。動物絡みのことで仕事しやすい要素を持っていると言えるでしょう。業務独占資格なので、技量さえ伴えば立派な強みになりえます。

共通スキル

私には楽観性があり、「これは何とかなるんじゃないだろうか」と思ったらすぐに取り組むという傾向があります。そのために失敗することも多いのですが、それはそれで次に活かせばOKとしています。

また、「行動→データ収集→成功法の一般化→他の事例に応用」という流れを日常的に行っています。

経験・自己歴史

これが「怪我を繰り返した経験」にあたります。
「こういう怪我ならこうすれば良くなるはずだし、治してきた」といった実体験が、漠然とした自信・自己効力感につながっています。

「偶然の選択」を「意志のある選択」にしていこう

こうした「強み」を、トラバーユの時に意識していたかというと実は全くなくて(笑)。

不安ながら飛び込んだ業界で、業務に取り組みながら
「あれ?なにかしっくり来ている」
「なんか、活躍できている」
という実感が生まれ、それを分析してみると、こんな感じだった、というわけです。

未経験職への転職は結果的に良い選択だったわけですが、果たして運が良かったのか、そういうお導きだったのか…。

しかし一度理解できれば、今後は「自分は何ができ、どう生きたいのか」という理解のもとにキャリア形成を考えることができます。それはキャリアを「偶然の幸運任せ」から「意志のある選択」に変えていくという点で、とても意義のあることだと思うのです。

しょうもない経験、履歴書には書けないスキルと思っていても、組み合わせると自分の強みを形作る要素になっているものですね、というお話でした。



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