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「砂漠」 -伊坂幸太郎

「目の前で、子供が泣いてるとしますよね。銃で誰かに撃たれそうだとしますよね。その時に、正義とは何だろう、とか考えててどうするんですか? 助けちゃえばいいんですよ」

「砂漠」−伊坂幸太郎 P252 

この本に登場する西嶋というキャラクターがカッコ良すぎる。

あらすじ

仙台市の大学に進学した春、なにごとにも冷めた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人な東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。
麻雀に勤しみ合コンに励みと至ってどこにでもいる大学生活に、個性的なキャラクター達によって、犯罪者だって追いかけるスリルな場面も。
一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡でできていた。

100回読んでも面白い。新しい。

本屋で何を読もうかといろいろ見ていた時に、そんなキャッチコピーに釣られて手に取った本です。
実際に読み始めてみて、ドキドキ、ワクワク、となんだか自分も大学生活を送っているのではないかと、読めば読むほどこの世界観に浸ってしまう不思議な感覚に陥ります。
なぜなら、大学生活を送ったことがある人なら必ずしもどこか似たような場面があった、と思うんですね。
たとえば、合コンをする為にオシャレな服を買いに行く場面があるのですが、まだ高校を卒業したての主人公達のオシャレへの痛々しさとか、男同士のアホな下ネタ、下らないことへの変な情熱、とかが一場面一場面に入り込んでいて、そこがリアルな大学生活だな、とつい思い出してしまいながら読んでました。(まあ、合コンはやったことがないんですけどね)

西嶋というキャラが良すぎる

彼は見た目はあまりよくない。顔は真ん丸とした輪郭で髪が短く、眉も太い。黒い眼鏡をかけて、腹のあたりに贅肉を抱えている。
おまけに社会がどうこうと唯の学生でありながら、周りに説いていく。これが的を得ているものもあれば、矛盾しているものもあり、「なんだよコイツ」って思ってしまう。
何も持っていない人、何もしていない人があれこれと社会に不満だけを言っている人は現実にも確かに見かけたりします。
または、何も持っていない、何もできやしない、と諦め最初から何もしない人っていうのもいるんじゃないかと。(僕は後者の方かも)

けれど、西嶋は違う。
目の前で起きたことは、目の前で助けにいく、行動しに行くのが西嶋という人間。
何が正解かわからない世の中で、真っ直ぐに生きてもいいんだって思わせてくれる、そんなキャラになります。

最後に

何事にも冷めてしまっている僕の社会生活に、もしかするとこの本を読んだことによって劇的なものになるのかもしれない。そんな予感とも期待ともつかない気配を僕は感じていた。
なんてことは、まるでない。

俺はね、とにかく、何が言いたかというと。面白いから手に取って読んでしまえばいいんですよ。面白いか面白くないとか考えるんじゃなくて、手に取ったら読んでしまえばいいんですよ。
その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。 


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