見出し画像

チリのEstallido Social (社会爆発)のその後 — 親米軍事独裁政権以来の憲法の改正は如何に?

*Mediumにて投稿したものと同様のものを投稿しています。元の記事はlink.medium.com/dphtIrfiwhb

Estallido Social(社会爆発)!と制憲議会

2019年冬から2020年春にかけて、南米はチリにおいて、地下鉄運賃の値上げ反対デモをきっかけに起きたEstallido Socialは、計370万の人々が抗議デモをするまでに発展した。政権側による制圧に屈せず、2019年11月には、チリ国会において、憲法改定プロセスを行うかどうかの国民投票を行うことが決定された。COVID-19の影響で延期されたが、2020年10月25日に行われた国民投票では、投票率51%中、78.28%が賛成票を投じ、無事憲法改定を行うことが決まった。
2021年5月16日には、新憲法の草案を作る制憲議会のメンバーとなる155人を選ぶ選挙が行われ、体制側であるピニェラ(Sebastian Pinera)率いるの中道右派チレ・バモス連合は、獲得議席数が2割程度にとどまり、新憲法草案に反対できる三分の一の確保に失敗した。特に注目すべきはその内訳で、女性が78人、男性が77人と過半数以上を女性が占める。またそのうち、17議席を先住民に割り当て、彼らの権利の保障にも配慮している。

画像2


伝統的な中道左派連合体であるコンセルタシオン+αである憲法団結(?)(Constituent Unity)は、14.45%と低迷した一方、2017年にそれまでの二大政党制に挑戦する形で登場したよりポピュリストな左派である広域戦線(Frente Amplio)とチリ共産党で組んだApruebo Dignidadは、18.74%を獲得した。

多くのニュースで独立系が最大会派となったとは言うものの、全く属していない独立系は11議席であり、その他は何かしらに属している。
特に注目すべきは、Estallido Socialに参加した人々を代表するために、2021年の選挙のために作られた、アンチイスタブリッシュメントを掲げるLa Lista del Pueblo(人々のリスト)は、16.24%獲得し、憲法団結をも上回った。
マイナーかつ重要な点として、二つ上げたい。一つ目は、不公平な選挙資金と人民の勝利。この選挙では、右派が献金の63%を受け取ったにも関わらず、24%の得票しか取れなかった。これは、人民にとって大きな勝利であり、新自由主義勢力が選挙買収できなかったことを意味する。二つ目は、SOGI/LGBTQI+候補が6人も当選した事実。南米は多くの国でいまだにマッチョ主義が蔓延り、同性愛者などは差別・迫害・ひどい場合には殺害されている。憲法制定において、このような候補者が通ったことは、チリの新憲法への期待も高まる。


最近の動きー知事選挙で中道左派の大勝

チリの自治選挙決選投票が2021年6月13日に行われ、計16州の知事が決定した。非常に低い投票率には注意をしないといけないもの、中道派連合であるチレ・バモスは、伝統的な政党に有利な地方選挙において、中道左派連合のUnidad Constituyenteに大敗を喫した。チレ・バモスが9州中1州の勝利に対し、Unidad Constituyenteが10州、グリーン環境党(Partido Ecologista Verde de Chile)と無所属からなる連合が1州、広域戦線(Frente Amplio)と無所属がそれぞれ2州ずつ獲得した。
全体的に、中道右翼・右翼・極右の連合体が崩れ、中道左派から極左の多様な政党が躍進しているとみることができそうだ。

制憲議会のプロセス

先週時点でピニェラ大統領は、7月4日から制憲議会が始動すると発言している。一年かけて議論し、最終的な草案は再び国民投票にかけられる。
具体的な話は少し出てくるとは思うが、ここでは二点をハイライトしたい。

1.制憲議会で2/3を獲得するような草案はできるのか?

国民投票にかけられる前に、制憲議会にて、2/3が賛成しなければならない。こういう時、体制側は時間をかけ人々のやる気と希望を削ぎ、なし崩し的なものにしようとするのが常だし、あまりにも分裂したことを見せれば、国民も幻滅するかもしれない。政治的にもルール的にも期限がある中で、どのような憲法を作り上げられるのか。

2.ほかの南米の人々を鼓舞し、南米・世界で左派・人民派が勝つようになる希望的事例となるのか?

米国が介入してできた軍事政権ピノチェト大統領のもとで策定された新自由主義的な憲法を書き換えることは、南米の反米・反自由主義運動に大きな影響を及ぼす。同時に、憲法は順々に制定されるにつれて、より進歩的な考え方や制度を取り入れることができる。国際人権宣言が採択されてから、宣言を土台に憲法を作り上げたのが例として挙げられる。SOGI/LGBTQI+などの権利はもちろんのこと、格差是正や経済的人権の保障、経済構造の在り方など、昨今のポピュリズムに基づいた様々なアイデアを何かしらの形で入れることになるのだろうか。いろいろと期待は膨らむが現実的に様々な抵抗も考えられ、合意をどう得るかも含めて、前途多難であろう。

---

いずれにせよ、注目価値ありのチリとなりそう。早くまた旅行で行けるようになるとよいな。

画像1

一度は行ってみたい。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?