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2021-5-20 日記. ベンチャー企業の研究者: 全ては偶然、実力も偶然

マイケル・サンデルの話題の書籍を読んだ。

素晴らしい本。一般書でメリトクラシー=能力主義の歴史的、宗教的、アメリカ的な変遷が凝縮されている。

身近な話題を中心に我々をとりまく能力主義の暴政について再考することを促す極めてアクティビスト的な書籍。

能力主義の玉座的な場所=ハーバード大で、能力主義を執拗に分析するさまにアメリカの良心をみた。

値する, 功績=meritによる支配がいかに、市場の価値=道徳的価値の一致という信念を育んできたかを示す。その一方で、功績を得るために縛られている人たちも描かれている。
そのひとりはジョーバイデンであり、彼の1987年の法科大学院における功績を誇張しているとこからも読み取る (pp. 124)

また、功績の獲得を迫られたアッパーミドル階級の精神的な問題(ドラックや飲酒率が高い)も同時に指摘している (pp. 259)。

サンデルは、メリトクラシーはその裕福な育ちの人たちにそれに値すると言う思い上がりを与えてきた一方でその下位に位置付けられる人たちの自尊心をくじくとともに、上位にかけあがろうとしている人たちだけでなく裕福な子供たちにも過剰なプレッシャーを与えていると指摘する。

サンデルがこのメリトクラシーへの暴政の抑制として
大学受験適格者へのくじ引き導入を提案している。

また、寄付者の子息への特別枠はオークションでやれば良いとも言っている。能力値する立場で得たと言う信念を是正する処置とも言えそうである。

彼の提案がうまく導入されるとは思えないが、異なる人たちやエッセンシャルワーカーへの謙虚な態度を促す、論議自体にとても価値があると思わせる一冊であった。

追記:

解説のところで本田由紀によるmeritとは能力のことではなくどちらかというと功績を意味するという指摘がある (pp. 332)。

彼女によれば、日本においては、功績を生み出す能力とその成果としての功績が混同されている。これは素晴らしい指摘のように思う。日本にある「地頭(=生来の能力)信仰」をうまく表現している。

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