分業か?一気通貫か?もう一度「ゼロから営業組織を作る」を本気で考える
こんにちは!カミナシ新規事業責任者の富澤です。
2024年8月27日、カミナシで3つ目のサービスをリリースしました!僕自身、この事業に参画してから約半年が経過しますが、ようやくこの新規事業について発信できることをとても嬉しく思います。
そこで今回は、この新規事業をどう立ち上げていくのか。特に営業組織の「分業体制」に焦点を当てて書きたいと思います。2017年前後からTHE MODELという概念が普及して以降、世の中の営業の求人はフィールドセールスやインサイドセールスといった専門職が当たり前になってきつつあります。僕自身もカミナシには4年前にインサイドセールスの立ち上げメンバーとして入社し、分業制の素晴らしさを十分に体験しています。
しかしながら、分業はあくまでも事業を伸ばすための選択肢のひとつ。思考停止で形から入るのではなく、分業しなければならない必然性があってこそ選択されるべきだと思います。
今回、ありがたいことに僕はカミナシで2度目の営業組織の立ち上げを担うことになりました。そして、この事業では「どれだけ分業せずに急成長できるか」に挑戦したいと思っています。
本記事では、なぜそのように考えているのか。分業のメリットとデメリットに触れながら、営業組織の作り方について整理していきます。
事業立ち上げ中の経営・マネジメントの方
営業組織の立ち上げや新規事業に興味のある方
フィールドセールスやインサイドセールスの専門職として成果をあげているが、少し窮屈になってきた営業の方
こういった皆様に届くような内容にしていきたいと思いますので、是非最後までご覧ください!
株式会社カミナシの現在地
その前に、組織や体制の話はどんな事業を運営している人間が話しているかわからないと理解しにくいと思うので、僕が所属しているカミナシという会社の現在地だけ簡単に紹介させてください。
そして本題である新規事業の体制ですが、以下の図の形式を取っています。SaaSでは一般化しつつある営業組織の分業との比較でご覧ください。
・特徴1:営業をインサイドセールスとフィールドセールスに分業せずに、アポイント獲得から受注まで一気通貫で行っている
・特徴2:リードクオリフィケーション(マーケティング段階で受注の可能性が高いリードを絞り込むプロセス)ができるフェーズではないため、興味・関心が十分に醸成できていない潜在層に対して営業が直接アプローチしている
分業か?一気通貫か?
立ち上げ時点で分業をしないという選択肢をとっているのは珍しくないかもしれません。ただ、この体制を現時点だけではなく、少なくともむこう1年は維持したいと考えています。
その理由は、「中長期でスケールしていくためには、一気通貫の方が最適だから」です。以下にて具体的に解説していきます。
すぐにでも飛びつきたくなる「分業」の誘惑
SaaSの営業は難しいです。特にカミナシが向き合っているノンデスクワーカーの市場はまだまだSaaSの導入は一般的ではなく、目の前のお客さんが「やりたい」となっても別部署のキーマンや経営からの反対があって失注するケースが山程あります。そのため、営業は常にリスクを先回りし、対策を取ります。ここに営業の時間もマインドも持っていかれます。
そうしているうちに今度は、翌月の予算を達成するための案件が足りない。リストにコールしてアポを取り、毎日新規商談を安定的にこなさないとならない。この両立をするのは簡単ではありません。
書籍「THE MODEL」にも、分業のメリットとしてこの観点が取り上げられています。
早すぎる分業で失う3つのもの
分業を取り入れることで、一時的にはそれぞれの業務に集中できて効率があがるでしょう。KPIも管理しやすく、どこかのKPIが凹んだらすぐに対応し、安心して事業運営を行うことができます。
分業は便利で再現性のある体制だからこそ、元の体制に後戻りしようと思うと大変です。組織を作り直すのも大変だし、KPIもぐちゃぐちゃになります。なので、慎重に意思決定をしたほうが良いと思っています。
では、早すぎる分業により失うものはなんでしょうか?特に重要だと思う観点を3つ挙げます。
1つ目は、「事業の全体感をもっているリーダー人材の輩出」です。分業をすることで、案件創出を科学する人、クロージングを科学する人、それぞれの領域で専門性が追求されることは良いことです。が、逆にどうしてもお互いの領域に対して無関心になったり肌感がなくなってしまうことは避けられない。分業の副作用として懸念される「部門間の対立」に関しては、カルチャーや評価設計の工夫で対策がとれます。しかしながらより本質を考えると、「自らの経験により理解している」と「他者との会話を通じて理解している」では相当な差があります。どちらも経験し、自分ごと化している人の数だけ事業は強くなると思います。
2つ目は、「理想の営業プロセスの言語化」です。トップセールスが一気通貫で1年間営業をしたら、どういったプロセスが理想のプロセスか言語化できます。どこのプロセスで目詰まりを起こしやすいかもわかります。案件化かもしれないし、クロージングかもしれない。しかしながら、こういったことがちゃんとわかっていない初期の段階でプロセスごとに責任を分けたら、事業の調子が悪いときに誤った打ち手を取る可能性があります。
まずは、1人の人間で営業プロセス全体を回し切る経験が必須です。属人的であることは否定されがちな考えですが、初期こそ属人的に脇目もふらずに受注だけを考えて活動してもらう。その後に、必要に応じて事業のボトルネックへの対応として分業化の選択肢が出てくるという順番です。
3つ目は、「顧客の購買体験」です。SaaSの新規事業の営業は、「現時点では実装されていない機能を含めて価値訴求」する営業です。そうなってくると、「機能が実装されたら導入する」というお客様を多く抱える形になります。そのため、再商談を前提として案件管理を行う必要があります。お客さんの立場に立つと、ぐるぐると営業担当が代わるより一貫して同じ営業担当に対応してもらうほうが安心です。過去の流れを分断することなく商談が続けられるため、お互いストレスなく、結果的に受注数も膨らんでいきます。
サービス特性に応じて判断する
もちろんこれらの考えは、どんなサービスを取り扱っているかによって判断が分かれるものです。実際、カミナシの中でも分業制と一気通貫、どちらの組織も存在しています。
そんな中でカミナシの新規事業が一気通貫が適していると考えるのは、以下の特性からです。
提供しているサービスの新規性が高く、模範できる先行サービスがない
ターゲットが幅広く(複数業界、複数部門)、ターゲットごとに営業プロセスを最適化していく必要がある
お客様の検討リードタイムが比較的短く(1ヶ月程度)、一気通貫で担っていても案件獲得とクロージングを両立できる
逆に、売り方がある程度見えている場合や、リードタイムが3ヶ月程度など長い場合は、初期からの分業により一気にスケールしていくことも考えるべきではないかと思います。
分業制を考えるタイミングと進め方
ここまで見てきたように初期段階では一気通貫で進めるつもりですが、今後スケールするうえではどこかで分業を取り入れるべきだとも考えています。そのタイミングは、「営業の特定のプロセスにおいて、局所的に大きい負荷がかかる場合」で、かつ「それを解決することで事業インパクトが大きい場合」です。
例えば、以下のようなタイミングでは、分業したほうが効果的です。
安定して月間100件以上のフォーム経由の問い合わせが発生している → 【アポ獲得のプロセスに局所的な負荷】
展示会を毎月出展し、継続的に大量のリードにコール業務が必要→【アポ獲得のプロセスに局所的な負荷】
Enterprise専門の組織を作り、営業が組織開拓の時間をじっくり時間をかけたい →【商談のプロセスに局所的な負荷】
ただし、上記のようなタイミングで分業する場合、最初は営業組織にいる「全体感を把握しているリーダー人材」を中心に少数精鋭で立ち上げるつもりです。部分を最適化するからこそ、全体をわかっている人が検証するべきです(事業責任者である僕自身がやっても良いと考えています)。一気通貫の営業を経験したことがある人材が、事業全体のボトルネックに対してテコ入れをするために分業する。これが今僕が考える理想の分業イメージになります。
最後に
今回は営業組織の作り方を事業責任者の視点で色々書いてみましたが、最後にそうではなく1人の営業担当としての意見を言うと、「インサイドセールスもフィールドセールスもカスタマーサクセスも同じ営業なのだから、すべてのプロセスに関与したほうが手触り感があって楽しい」です。
組織にとっては、分業制の方が安心できるかもしれません。しかし個人にとっては、成長機会を奪ってしまっている可能性もあります。長いキャリアの中でどちらも経験すればよいのでは?との意見もあると思います。でも、同じタイミング・同じ事業・同じ市場の中だからこそ体験できる一気通貫の難しさ・楽しさは別物です。
今回の内容はもしかすると共感いただける方ばかりではないかもしれません。それでも、深く共感していただける方もいるんじゃないかと期待して書いています。
そして、少しでも、一行でも共感して頂いたあなた。カミナシの新規事業に力を貸してください!一気通貫の営業は、強い組織を作るうえで必要だと思っていますが、個人に負荷がかかる体制でもあります。その負荷を自身の成長だと考える方。フィールドセールスやインサイドセールスのそれぞれの領域で専門性を磨き、窮屈に感じてきてしまった方。
カミナシの新規事業で大暴れしてください。あなたが暴れた道が、次の事業の伸びしろをつくります。是非力を貸してください。ご連絡お待ちしております!!!
■富澤のX
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