続いていく故郷のジンで乾杯を【RING HIROSHIMA】
ジン、と急に言われても「何?」となってしまう人が大半かもしれない。ここでいうジンとはGIN。ジンライムとかジントニックに使われる、お酒のジンのことである。このプロジェクトでは「地域課題をサステナブルジンで解決する」という。サステナブルジン? 一体どういうことだろう。
CHALLENGER「株式会社Connec.t」小口 潤さん
今回のチャレンジャーは小口潤(おぐち・じゅん)さん。地域素材を活用したジンを開発するプロジェクトチーム「NO NAME DISTILLERY(ノーネーム・ディスティラリー)」を立ち上げ、2023年7月に国産のクラフトジンブランド「YORI(ヨリ)」を発売した。
ジンを作っておきながらお酒に興味がないというのはどういうことだろう。まずYORIについて説明すると以下のようになる。
小口さんたちは地域で利活用されていない素材をボタニカルとして、その地域独自のジンを作ることを試みている。ボタニカルというのは、ジンの味を決めるフレイバーのこと。お酒を蒸留する際にボタニカルを混ぜることで、さまざまな味を楽しめるクラフトジンが完成するのだ。
これまで林業が盛んな北海道上川地域で松を伐採したとき捨てられていた枝や葉を用いた「KAMIKAWA YORI」、静岡県富士地域の柑橘系ピール、出荷できないほうじ茶を活用した「FUJI YORI」の2種類を発売している。RING HIROSHIMAでは広島産の素材を用いた3番目のYORIを作るのが目的となる。
それにしても、なぜジンだったのだろう?
なるほど、ジンをベースに廃棄素材をアップサイクルし、新たな地域の名産品を作り上げる、と。もともと小口さんは体験特化型ふるさと納税サイト「さといこ」を手掛けるなど地域活性化の仕事に携わってきた。地域課題解決のため、今回目を付けたのがジンというプラットフォームだったわけだ。
ふと、どうしてそこまで地域にこだわるのか気になった。
日本中に数多ある誰かの故郷を消さないために――そこから小口さんは《風の人》となって各地でサステナブルジンを創生する活動に駆け回っている。
SECOND①「合同会社アクト・スリー」綿谷孝司さん
小口さんが日本各地を動きながら地域に新風を吹き込む《風の人》なら、地域にはそれを受け止める《土の人》が必要だ。1人目のセコンド・綿谷孝司(わただに・こうじ)さんは岩国で広告代理店を営む人物。今回がRING初参加となる。
そして出会ったのが小口さん。まず事業のビジョンやフィロソフィに舌を巻いたという。
《風の人》と《土の人》、ここに1本のホットラインができあがった。
SECOND②「株式会社みらいワークス」岩本大輔さん
今回はそこにもう1本の線が足される。2回目の参加となる岩本大輔(いわもと・だいすけ)さんは、都市部の人材と地方を結びつけるのが仕事。地域課題解決という意味では小口さんと重なるだけに、YORIにはおおいに心動かされたという。
シビックプライド=地域への誇りと愛着。どうやらこれがYORIを語る上でのキーワードになりそうだ。
この3人が手を組んで、広島版YORI開発プロジェクトがスタートした。
シビックプライドを高める産品
目指すは「YORIはかすがい」!?
今回のRINGの実証実験のゴールは県内の対象地域を確定し、広島版YORIを作ること。そのためにRINGを通じて「求ム生産者&情報」……だったが、いきなり出会いに恵まれた。
なんと、RINGのチャレンジャー同士で連携が生まれているとは。小口さんは岩本さんが語ったシビックプライドという言葉にも共感を寄せる。
シビックプライドを高めるためには、地域の心をひとつにするシンボルが必要だ。このプロジェクト究極の目標は「YORIはかすがい」になることかもしれない。
ゴールは地元で愛されること
成果発表会での乾杯を待つ!
MADE IN 広島のYORIを完成させること以外にも今回のゴールはあるという。
ほろ酔いのラストシーンは見えている。「わしらの町にはYORIがあるけぇのぉ!」――楽しげな宴の夜まで、チームは走り続ける。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
最近酒場でよく見かけるターコイズブルーのポスター。
それは女優の夏帆がほほえむサントリージンの宣伝で、確かに10年近く前、ハイボールブームによってウイスキーが復活した時と同じ匂いを感じていた(あれも仕掛けたのは ♪ウイスキーがお好きでしょ~ のサントリー)。そんなに流行っているのかジン? おまけにYORIが打ち出すのはクラフトジンでサステナブルジン。うう、オシャレすぎる。ちなみにマティーニやらギムレットもジンベースのお酒なんですってよ、っていう豆知識。
(Text by 清水浩司)
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