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「聞く」に敏感な子どもへのアプローチ②「ほっこり授業」でどんどん変わる!

「聞く」ことに敏感な子どもはとても繊細

いろんな「音・音声」情報に気づいてしまう「敏感」さんは、気ままに見えてとても繊細です。先生の「静かにして」の繰り返しに自己嫌悪を抱き「どうせ、自分なんか」とつい漏らしていることもあります。こうした言葉の裏には、自己肯定感の低さがあると思われます。

耳という感覚器官は脳にとても近いので、他の人の汚い言葉や暴力的な言葉が耳を通して、心を傷つけてしまうのです。「幼児は読み聞かせで心が育まれる」、「電話のなりすまし詐欺に会う」など、耳からの情報が人の心に影響を及ぼすことは納得いただけると思います。

もし、大人が子どもへ対して暴力的な言葉を繰り返すとしたら、そのダメージを想像すると「体罰」といっても差し支えないと考えます。

ワンオンワン(1on1)の「ほっこり授業」で解決!


「敏感」さんは、気付いたことに同意がほしいだけです。仲間とつながっていれば、過剰な反応になりません。「この問題分かった!」と言えば、「わ!すごいね」と反応する人がいないと不安になるだけです。不安さえなければ、落ち着いて学習します。

しかし、先生が1on1の相手になるのは、当然無理です。筆者は、コロナ禍以前は、基本4人グループで授業をしていました。(特に導入は問題把握の差が大きいので、グループ隊形から始めます)
そして、困ったときは、いつでも仲間に相談していいと言ってあります。だから、先生が話をしていても、時々小声がします。「静かに聞きましょう」というのではなく、「大丈夫?進めてもいい?」と言えばいいのです。
こうした助け合いを柱にしている「ほっこり」授業では、子どもたちで、問題把握の曖昧な点や計算ミスなど少しの時間で解決してくれます。聞き違いや勘違いは頻繁に起こりますが、数秒で解決されます。

グループでの学習の進め方について種本です。おススメです。
20日間でできる 学び合いスキル30の算数指導(石田淳一著東洋館出版社)」

学び合い学習では、「敏感」さんは大活躍します。相手が分かってくれたか心配なので、相手が反応するまでしっかり説明してくれます。グループ発表場面では、詳しい説明をしたり、足りない部分を補足説明します。
他方、「敏感」さんに、あおりや脅しは逆効果になります。「えらいんだから、もっと難しい問題やろう」とか「これができないと居残り」とか、つまづいたところで、収拾がつかなくなります。先生の面白半分の言葉がけは、慎んだ方がよさそうです。(筆者経験より)

授業中、子どもを「○×」指標で判断していませんか?

ちょっと、脱線してしまいます。先生たちが「聞く」ことの特性に注目できない理由について、筆者の経験から語っていきます。

まず、ざっくり「先生たちの願う勉強ができる子」とは
・話を最後まで聞く
・自分の考えを発表する
・指示されたことを黙って(集中して)やる
というバイアスがあるのではと思っています。
一つは教科書の学習目標に「話す・聞く・書く」が必ずあるからです。もう一つは、先生が指導案に応じた授業しやすいからです。

多くの学校では、算数科の指導案を書くとき「逆向きの授業設計」(児童が学習目標に到達している状態を想定して授業を組み立てる)分かりやすいので、取り入れられています。
授業の最後で「確かめ問題」で正解すれば、文科省の理念「誰一人として取りこぼさずに」の授業をしたという根拠になるからです。筆者も何千枚という指導案をこの設計を元に書いてきました。
子どもに提示した問題ごとに、「できた」「できない」を先生が確認することを指導案では求めていました。(現在は、文科省も、バインダーを持って机間指導する先生たちを見て、「評価のための授業」として、避けるように述べています。)
他方、子どもを「○・×」(実際はA・B・C判定していました)で2分割するという発想は、とても「怖いな」とも感じていました。20年近く、子どものノートを分析してきて、問題把握や理解の速度に個性があり、「できていない」と「分からない」は同じ尺度で測ってはいけないことを肌で感じていたからです。

先生の「合格」「不合格」の言葉に敏感


実は、この「○・×」を「敏感」さんは、とてもよくキャッチするし、聞き流すことができないことがあります。「○○さん、こんなのできないの」「やった、できた!」などの一言がついつい出てしまいます。
つまり、他人に対して先生が「不合格」といっているのを聞き逃さないからです。
筆者は、「敏感」さんの前では、「③番以外は出来てるね。Aさんが③番できていたよね。」「敏感」さんは、「できている」と言います。「じゃ、解き直したらAさんに確認してもらってね。Aさんお願いします。」と言うようにしています。
多くの子どもに、多くのことを処理させようとすると、確かに「○・×」のカテゴリーが、効果をもたらすこともあると思います。しかし、受け取り手は、自分1人なので、できたときの賛辞も必要だけど、「ほっこり」授業の様に、失敗したときの対処の仕方をグループ学習のスキルとして指導しておくことも大切です。

特性の話はここまでです。読んでくださったみなさんありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




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