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金融緩和政策と「財政ファイナンス」を巡る諸問題 田中信孝 2024/05/18 報告要旨

公益財団法人政治経済研究所公開研究会報告 田中信孝「金融緩和政策と「財政ファイナンス」を巡る諸問題ー各種データを手掛かりに考察」2024年5月18日実施済。

▼報告要旨
 2022年以降、インフレ率が政策目標「2%」を超えたが、海外発の各種コスト押上げがきっかけだった。「異次元金融緩和政策」が期待した経路(マネタリーベースの増加→マネーストックの増加→物価上昇)で生じたわけではない。一方で、超低金利政策を背景に大企業は為替経由で収益を改善させ、あわせて顕現した「資産効果」も富裕層の需要を刺激した。生活必需品の価格高騰が格差や貧困の深刻さに拍車をかけ、不安定就労・低所得世帯を中心に国民は閉塞感を募らせている。
 いくつかの論点を挙げる。
・日銀の「異次元金融緩和」は国債のマネタイゼーションにより「財政ファイナンス」の実態を露わにし、大量の国債保有と国債費の抑制で、政府の放漫な財政運営の継続を容易にした。
・金融機関の収益が悪化したり仲介機能が麻痺したりしたばかりでなく、金融に期待される効率的な資源配分機能を弱め、実体経済における生産性の向上を阻害した。
・「出口政策」で、日銀が多額の有利子負債を抱え込み続け、財務状況が悪化することが懸念される。
・財政再建策は日本経済の潜在成長率との整合性を持たせつつ「出口政策」をも前提にしたより実態に即したかたちで進める必要がある。


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