見出し画像

日銀 大規模金融緩和解除へ

今日は非常に大きな経済政策の変更、金融政策決定会合が日銀で行われましたけれども、そこでついに大規模金融緩和が解除されることになりました。
この内容について解説していきたいと思います。

日銀の大規模金融緩和が解除ということなんですけれども、すごいことが始まって終わったなというそういう印象なんですけれども、そもそも何だったかということを振り返りたいと思うんです。

経済政策というのは大きく3つあって、財政政策・金融政策・成長戦略という3つがセットで語られるんですが、その中でいわゆるアベノミクスと言われるものは、実はこの3つをそれぞれちゃんとやっていきましょうってことだったんですけど、名前つけたのがうまかったので、経済学的に言うと当たり前の3つの政策なんですが、これをアベノミクス、また3本の矢といって名付けたのは非常に国民の皆さんにも刻まれたし、印象に残ったと思います。
そのうち特に一番象徴的だったのが、金融政策をいわゆる異次元の金融緩和(黒田バズーカ)といって、これまでやってこなかったようなことをバーンとやったというのが一番皆さんも覚えていると思います。
安倍総理が民主党政権3年3ヶ月続いて再び政権に返り咲いた時に、黒田東彦さんを第31代日本銀行総裁につけて、その黒田さんが2013年の春、4月3日4日の金融政策決定会合で、後に黒田バズーカ、あるいは異次元の金融緩和と言われる大きな金融緩和策をそこで発表したわけです。
これはいわゆる2年間で2%の物価上昇を達成する、つまりデフレから脱却するんだということで始めたんですが、結論から言うと物価上昇が進まず、つまりデフレ状態が長く続いた中で、当初の「行くぞ」っていうインパクトが落ちてきた時に「これじゃダメだ」と言って導入したのがマイナス金利と言って、普通金利ってのはお金の値段なので、例えばお金を借ります、借りると金利つけて返す、貸した方は金利収入を得られるということですが逆で、貸した方がお金を取られていくという。
金利をとにかく低く低く抑えるということの典型であったマイナス金利をやめるということで、政策金利を少しプラスの水面上に出すということがまず一つの大きな変化です。

2つ目に黒田さんがやったものが、長短金利操作、後にイールド・カーブ・コントロールでYCCと言われますけれども、これはかつてたまきチャンネルでも解説しました。
国債というのは償還期間、つまり返済までの期間が長いほどいろんなことが起こりうるので、高い金利をいただいてそれでお金を調達すると。
その期間が5年債、10年債、30年債といって償還期間が長い国債になればなるほど金利は高くなっていく。
だからイールド・カーブは綺麗に右肩上がりになると。
そのイールド・カーブを無理やり押し下げて、どういうことかというと、金利を押し下げるために日銀が買えば国債の価格は上がって、国債の価格と金利というのは逆相関になっているので、国債の価格が上がると金利が下がっていくので、日銀が買うことによって金利を押し下げていくと。
特に10年債という標準的な債券・国債、10年間で償還すると。
ここを金利をゼロにするということを政策目標に掲げてやってきたんですが、このイールド・カーブ・コントロールも今回やめる、これは衝撃でした。
ただ条件というか一言あって、一定規模の国債の買い入れは続けますと。
一定規模っていうことの目安はどれぐらいなのかとか、そういうことが示されてないので、ここはよくわからないところはあるんです、効果としてどうなるのか。

3番目は上場投資信託、株、不動産投資信託、こういったものを日銀はどんどん買ってましたけど、これは買うのをやめる。
ただ事実やめてたので、これはあまり影響ないので、ただすぐには売らないって言ってますから、これも短期的には影響は株価にもないと思います。
ただずーっとある種株価が低迷してたんで、投信・不動産投信を日銀が買って、例えば今上場している株式のうちの半分ぐらい、大部分は筆頭株主が日銀みたいになってるんです、ETFを通じて買うから。
だからそれも変なので、これ以上買うのやめようということになってます。
その代わり含み益が30兆も出ているので、これは何かにうまく使ったらいいと思います。
ただ急に売ると下がるので、上手に管理しながらこの含み益をどう利用するのかは今後考えていったらいいなと。

ただここで慎重にならなきゃいけないのが、一般的に金融緩和をやめるということは金融引き締めに動くわけです。
一般的な効果として言えるのは、上がるものがまずあります。
円の価値が上がってドルの価値が下がる、円高になります。
当面はアメリカの方が金利が引き下げるんじゃないかという、景気がいいので引き続き金利を下げないということが言われているので、当面は日米の金利差の差はあんまり変わってなくて、むしろ円安に触れたりしてるんですけど、理論的には金融を引き締めると円高に行きます。
あとは皆さんの生活に関係することで言うと、住宅ローン金利が上がります。
中小企業を経営されている方は、貸し出し金利も上がる。
家計からすると預けている預金金利が上がっていくので、今ある資産が増えた方がいいという方については、預金の金利は上がっていく。
上がるものはこういったものです。

一方で下がるものもあって、一つの政策目標でもあるんですけれども、物価高騰してます、インフレ率を少し水をかける効果がありますから、金融引き締めっていうのはインフレ率が下がる。
そして、賃金上昇率も下がる可能性があります。
ある種、景気を冷やす効果があるので、金融の引き締めっていうのは。
だからインフレ率は収まるかもしれんけど、同時に賃金上昇率も下がってしまう可能性が高いので、この辺は慎重に考えなきゃいけない。
あと株価は金融引き締めた基本的に下がります。
株価っていうのはいろんな計算がされてますけども、金利で現在価値に将来収益を割り戻しているので、金利が上がると分母が増えますから株価は下がる。
簡単にそういう感じになってます。
あとは景気が悪くなると名目GDPも下がる、ということで、この辺のバランスの中で何とかいくつかの指標を見ていいから判断ということになったんですが、私は正直今のタイミングはまだ早すぎると思うんです。
しかもこのイールド・カーブ・コントロールの終了にまで踏み込んだのは、やりすぎだったのではないかなという気がします。
私がもう少し見た方がいいと思ったのは、この賃金上昇率のところで、どうしても冷ます効果があるので、相当突き抜けて過激というか加熱するぐらいの労働市場がタイトになって賃金が上がるってことが中小企業で働く人も含めて広がって、初めて私は金融政策の見直し、つまり引き締めをやるべきだと。
もう一つ心配なのは、やっぱ消費が弱含んでいます。
好循環というのは賃金が上がって、旺盛に消費が行われて、だから企業ものを作ったら売れて、じゃあもう一回賃金上げたりボーナス上げたりできるという好循環ですけど、今賃上げはできてきた、でも消費の拡大ってところの連鎖が切れてるんです。
だからGDPがマイナスがあるかもしれないって話をしたのは、この金融を引き締めたことによって、さらに弱含んでいる消費を弱含ませて、それで賃上げ上昇率・賃金上昇率を引き下げてしまうということになると、非常に経済を急速に冷やす効果もあるので、この辺はさらに注意深く見ていきたいなと。

とにかく問題は賃金です。
「けつ(結局)もん(問題は)ちん(賃金)」なんですけど、賃金がちゃんと持続的に上がるような状況こそ、まず最優先で実現すべき政策目標だと思いますので、それに妨げになるようなことはやめる、しないということが今は大事だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?