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国立西洋美術館

 上野の国立西洋美術館が2022年4月9日からリニューアルオープンしたと聞いて訪問してきた。2020年10月19日から1年半という長い休館だったが、たまたま休館時期はコロナ禍で大変な時期と重なった。コロナの収束が見え始めたときのタイミングでリニューアルオープンとなった。
 この美術館とは学生時代以来、長い付き合いである。久しぶりに訪問して、65歳以上は無料だということにまず感謝。ただ広い館内を、年寄りが歩き回るのはそもそも無理があると最初に感じ、ざっと拝観するに徹し疲れないように心掛けた。展示物はかなり多いので、この方針は正解だった。リニューアルオープンの企画として、松方コレクション以降の新蔵コレクションの主なものが展示され、最後の方に見慣れた松方コレクションの有名な作品もあった。
 個人的には展示の最後にあったル・コルビジュ(1887-1965)晩年の絵画と素描の企画展が、興味深かった。国立西洋美術館(1959年開館)がコルビジュの設計であることは有名だが、コルビジュの絵画を見て、彼をただ建築家だと思っていた無知を恥じた。大成建設が世界有数のコルビジュのコレクションをもっていてそれを寄託しこの展示が実現したことにも、その志の高さに感じるところがあった。
 最後に喫茶で休んだあと、美術館を出る前に、少しつまらないことを考えたのは、本館の来館者用のトイレが依然として階段を下りた地下にあることを発見したときだった。改装前にもこの点は不便だったという記憶がよみがえった。
 アクセス JR上野駅公園口から徒歩ですぐの右手。

 なお以下の記事によると、改修工事の内容は主に前庭部分にあったとのこと。一つは前庭下の企画展示室のための防水工事。これは耐用年数を経過していることによるもの。もう一つは、それに合わせて前庭をコルビジュの設計の構想にできるだけ近づけるというもの。前庭を閉鎖的に囲っていた柵(これは後で設けられたもの)が通り抜けられるように変更され、彫刻群の位置も当初に近い状態に調整された(これらも位置が変えられてきた)。確かにリニューアル後、多くの人が前庭を通り抜けて横切り、美術館は公園の中に溶け込むようになった。ーなので本館地下のトイレは手つかずでそのままというわけだ。
 カラヴァッジョの日記 2021/07/19 
 さらに清水建設のHPからと思われる「ル・コルビジュの意思 シミズの技術」というネット上の資料によれば、コルビジュから1957年3月に届けられた実施設計書には1枚を除き寸法が入っておらず、「トイレ、機械室、冷暖房用の配管設備のスペース」がなかったという。日本側の弟子や技術者が、そこで工夫を重ねることになったという。トイレが地下にあるのは、コルビジュの設計の問題ではなく、日本側が工夫した結果なのだろう。

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