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長崎きまぐれ案内 その3 路面電車

長崎に足掛け20年ほど住んでいた。

長崎の成り立ち、特に江戸時代の出島という国内唯一の海外からの玄関口という特徴と明治維新後の出島というオンリーワンの地位を失って後に取って代わったのが石炭であったことを以前書いた。

https://note.com/hiroshi_m1121/n/n697348441206

その2は海について書いた。

https://note.com/hiroshi_m1121/n/ndefbd049ed9d

3回目の今回は長崎市市内を走る路面電車について書いてみた。

1990年代長崎に赴任した頃は乗車賃は100円だったと思う。いや80円だったろうか。とにかく長い間100円の時代が続いた。値上げするのは難しいだろうと踏んでいた。100円を値上げするには110円でも120円でも硬貨が1枚から2枚か3枚に増える。値上げした時のイメージが悪い。重い。そう思っていた。

実際100円時代が長く続いた。ところがである。スマートカードが導入された。その後少し間を置いておもむろに120円に値上げされた。スマートカードが普及した頃を見計らっての値上げだった。なかなか上手い経営判断だなと感心したことを覚えている。

経営という意味においてもう一つ特徴があるのは古く以前他の都市で走っていた電車をその路線廃止に伴い買い受けて長崎を走らせていることである。操作の仕方が電車の種類によって変わり運転士にとっては大変だろうが経営としては上手い手法だと思う。

路面電車は乗っていて楽しい。道路を走る自動車と併走したり民家の間を走ったりで車窓の向こうを眺めるのに飽きることはない。

一方で長崎の街をドライブする身となると電車は邪魔な存在となる。路面電車と併走する道路を右折する際は気を遣う。長崎は坂の街。大通りもさほど広くない。坂道は狭い道も結構ある。信号で右折専用レーンがない十字路がある。右折する車の中には路面電車の路線に入り込んで右折のタイミングをうかがう車もある。そういった十字路に電車が車の後ろまで進む。そうすると執拗な警笛を鳴らす。少々しつこいのではないか?と思うほどの音が響く。「軌道外待機」の看板を無視した車が悪いと言えばそうなのだが少し気の毒になる。地元の人の話によるとこの電車の執拗な警笛には理由があるのだという。路面電車の軌道は公道の中にあるものでも土地は軌道電車の会社の持ち物らしい。その経済的立場が強気な警笛になって現れているというのだ。それを聞いて納得。電車を操作する運転士の心理を想像してなるほどと思った。規則の上でも土地の持ち主がどちらかという観点でも同じく電車の方が立場が強いのだ。

長崎市市内を、特に路面電車が走る中心街をドライブするときは注意が必要。混雑する休日などは路面電車を利用する方が気楽で速いかも、である。

個人的にはかつて住んでいた住吉の家から通勤していた赤迫―大波止は最もなじみのある路線で長崎県美術館のある水辺の森公園は愛しいワンコを連れて散歩した思い出のコース。この公園から見える夕陽は綺麗で印象深い。ときには客船も着ける岸壁はコンクリートの壁もなく海に向かってオープンスペースで眺めが良く過ごしていて気持ちが良い空間である。

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