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青春のままならないこと
好きな人からようやく返信が来た。
それだけで世界は違って見えるものだ。
いつもならとっくに返信が来ているはずなのに、ずっと返信がなかったため、私は変な気分になっていく。何をしていたかは事前に聞いている。だから返事が遅くなることは予想していた。それでも彼女が今どこで何をしているのだろう、自分のいない世界でどれだけ幸せな気分で過ごしているのだろうと想像を膨らませる。
時にそれは被害妄想へと発展し、無意味な嫉妬と焦りを覚える。頭では理解しているのに、心が理解ってくれない。そんな自分を顧みてまたさらに落ち込んでいき悪循環へと落ち込んでいく。不安は膨らみ、時に怒りへと発展してしまう。だが今度こそは表に出してはいけない。それはもとより無意味な怒りや焦燥感であり、外界に吐き出したところで関わる全ての人が不利益を被るだけなのだ。しかし思うことには仕方がないし、実際そう感じているこの心はどうしたらいいのだ。
そんなことを考え始めた頃に返信が来る。内容は至って平凡で、しかしだからこそ幸せなものである。そして彼女の世界に常に私が居座っていたことがわかるとひどく安心し、極限まで膨れ上がった不安感は心の底から湧き上がった幸福感にゆっくりと染められていく。
じんわりと、暖かく、甘酸っぱい。
染められていく最中は実に妙な気分である。もっと早く返信して欲しかった。でもそれが無理なことだともわかっていた。でもチャンスがないわけではなかったはずだ。いやそこまでしてもらうほど束縛するつもりはない。それにしても楽しそうでよかった…などと考えているうちにどうせ幸福感で心が埋められるのだから、そんなことは考えない方がいいのだ。
わかっている。全てわかっているのに。
ままならないものだ。
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