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「オーダー車だから良く走る自転車とは限らないんだよ。」というお話(19)

廣瀬さん、クルマは好きでしたが、「シャコタン」は嫌いでした。

「シャコタン」とは、クルマに「車高を極端に落とす改造」を施すこと。Wikipediaによると、英語圏ではスラムド(Slammed)と呼ぶそうです。

なぜ嫌いだったか? それは、クルマの設計者が、道を安全に、快適に、楽しく走るにあたり必要な地上高、必要なサスペンション量を一生懸命考え、設計したものを、「見てくれの為だけ」にぶった切って、段差に気を使わなくてはならず、乗り心地も悪い乗り物にしてしまっているから。

廣瀬さん、私が工房に持ち寄る自転車の雑誌や動画の中に、ただ目立つ為だけに、不合理で、奇抜なデザインを採用している自転車を見つけると、「これじゃまるでシャコタンだよね。」と眉を顰(ひそ)め、嫌悪感を隠されませんでした。

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設計にまつわること 5 「奇抜(きばつ)なフレームデザインについて (1)」


奇抜なデザイン。奇を衒(てら)ったデザインの自転車フレームは、昔からありました。

例えば、フレームの特定のパイプを曲げるデザイン。
下の写真、右の自転車は、1946年のイギリスはヘチンズ製。シートステーはベンドしており、チェーンステーには、さらに複雑な曲げ加工が施されています。こうした一部パイプを曲げるデザインは、カーボンの普及とともに、2000年代以降急激に増えました。

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YouTube動画も含めた私のヒロセへの取材とアウトプットに対し、ご評価を頂ければとても有り難いです。どうぞ、よろしくお願い致します。(廣瀬秀敬自転車資料館 制作者)