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廣瀬碧季
2020年10月5日 00:26
髪を切る、前髪を揃える。関係を切る。彼と私は他人になる。いや、元々他人だったか。そんなことを考えながら、麻美はふと自分の腕に目をやった。古いリストカットの跡の中に、何本か真新しいみみずばれのような傷が目についた。麻美にとってそれは、自分が自分でいるための一つの儀式だった。どんなに他人に止められようと、やめることのできない自分の決めた儀式。細く白い体躯には似つかないその痛々しい傷は、彼女