見出し画像

【私見】職場に違和感があれば、新入社員はすぐに辞めてよい

佐藤ひろおです。早稲田の大学院生(三国志の研究)と、週4勤務の正社員(メーカー系の経理職)を兼ねています。

新社会人、第二新卒(社会人歴1年目~3年目ぐらい)のひとに届けたいなと思ってこの記事を書いています。※それより年上のひとは、横目で見守って頂けたらと思います。

この記事の結論は、「職場や会社、仕事に違和感があったら、さっさと辞めてよい」です。心身にダメージを負う前に、転職活動をしましょう。忙しくて心身に余裕がなく、現職と並行して職探しをすることが難しいならば、まず退職してもだいじょうぶです。

書き手の経験(新卒カードの呪縛)

ぼくは1982年生まれの41歳で、会社員を15年ぐらいやってきました。
この年齢は、就職氷河期の最後の年です。
大学には現役合格しましたが、大学3年生秋から4年生夏にかけて就職活動をしているうちに、何がやりたいのか自分でも分からなくなって、意図的に「就職留年」をしました。卒業論文の提出をしないことで、5年生になることを選びました。
大学には5年間在籍し、2006年に新卒として入社しました。「就職留年」をしてまで入った会社ですけど、最初に配属された職場に適応できず、11ヶ月で鬱症状になって休職しました。休職を許された直後、3日3晩、ベッドからまったく動けなかった。20年近く前のことですが、「もう会社に行かなくていい」という救われた心地で、ベッドの上で仰向けになり、見つめた自分の足の甲をいまでも覚えています。

「医者からは3ヶ月の休養を要する」という診断書をもらいましたが、1ヶ月で回復したと自己判断し、事務職として復帰しました(自分の意思はないが経理職と出会い、以後15年ぐらい続ける職種となります)。しかしその職場には適応できず、1年半ほどで退職しました。
別の会社で経理を続けることになりました。

「就職留年」し、心身が壊れるほど最初の会社に執着し、医者の診断書を覆してでも早期復帰した理由を自分で振り返ると、「新卒カード」を重視したためだと思います。
「既卒者のフリーター」を経由せず、履歴書が綺麗なまま「新卒採用」のレールから外れないために卒業を引き延ばし、授業料を1年分(当時は50万円弱)払いました。新卒で入った会社だから離れるのは恐かった。新卒で入った会社の恩顧に報いないことが考えられなかった。
「新卒カード」はものすごく貴重なものでした。

「新卒カード」の価値は市況による

親の意見、マスコミから流れてくる言説、就職活動を取り仕切る会社のセミナーやお説教、世間・社会人の常識と言われることは、若者を縛り付けると思います。
しかしそれらは、永久不変の真理ではない。

いま自分がアラフォーになって、それなりに経験・見聞を増やした立場から振り返るならば、「何が正しいかは市況による」と言いたい。

市況:市場(しじょう)での商品・株の取引の状況。

「市況による」事例を示しましょう。
今年、新NISAで「日本人も投資せよ」とよく言われています。投資をギャンブルとして捉える上の世代(50代以上、皆さんの親世代)は、投資に懐疑的です。深刻な対立があるでしょう。
投資をするのが正しいのか??
ギャンブルだから避けるべきか??
その答えは、「何が正しいかは市況による」です。

皆さんが生まれる前の1990年代、日本の金融機関(証券会社、銀行)は不祥事や倒産が相次ぎ、デフレ(ものの値段が上がらない)・円高(日本円の価値が世界のなかで上がる)が30年間続いた。
この時期は、投資になんて手を出さず、日本円のまま銀行預金をすることが、経済的にもっとも有利な判断でした。個人投資家は、非合法な薬物の中毒患者のような存在でした。

皆さんの祖父母が現役だった昭和時代は、郵便局(現在のゆうちょ銀行)の定期預金をしておけば、年利5%-8%がつきました。今日の「インデックス投資」に勝るリターンを、リスクゼロで得られた時代があった。そりゃ「貯金しろ」って言いますよね。貯金ができる=立派な社会人、という価値観が生まれました。※ぼくは幼少期に聞かされました

いま2020年代、金融の取引環境がインターネット上で整い、手数料の安い投資信託が揃い、インフレ(ものの値段が上がる)・円安(日本円の価値が世界のなかで下がる)になった。銀行預金をしっぱなしにすることは、不利な判断となった。
投資をしない人=不見識なやつ、と見られます。

どれが正しいのか?
「市況による」としか言えません。

「新卒カード」の価値は暴落した

「新卒カード」が価値を持つのは、採用数が少なく、人材が余っている時代でした。企業は交渉力が強く、若者を選び放題。若者は交渉力が弱く、仕事に就けないリスクがありました。
「新卒カード」とは、履歴書に空白期間がなく、年齢が1日でも若いことを証明する保証書でした。企業は人材をえり好みできるので、ごたいそうな手つきで「新卒カード」を審査しました。
当時の企業が傲慢なのではなく「市況による」行動でした。

たとえばオレンジが大量に収穫され、買い手が選び放題ならば、オレンジの値段は下がる。形が悪い、傷がある、などの理由で選ばれないでしょう。見た目が粒ぞろいで、無傷の保証書が好まれます。
ぎゃくにオレンジが不足していれば、形が悪くても、ちょっと形が悪くても、買われる。保証書にイチャモンをつけている場合ではない。

いま、市場が変わりました。
人手不足なので、企業は「新卒カード」を吟味している余裕がない。とりあえず20代ならば大歓迎!!と言いたくなっている。

「あなたは若いから価値がある!」と言われると、ピンと来ないと思います。ぼくが若いときも、ピンと来ませんでした。むしろ、おっさん・おばさんに馬鹿にされていると感じるかも知れません。
しかしこの記事で言う「若いから価値がある」というのは、人生論ではなくて、人口ピラミッドの形、労働市場の需給のバランスからくる意見だと思って聞いてください。若者が稀少だから価値がある。「新卒カード」の輝きに頼らなくても、仕事を主導権をもって選びやすい。

大人たちが忍耐を強いる理由

ゴールデンウィーク明けに、退職代行サービスに申し込みが殺到した、というニュースが報じられました。マスコミの偏向はあるでしょうが、ぼくの肌感としては、長期連休後に会社に行きたくなくなるのは、正常な感覚です。

皆さんは、4月に入社して1ヶ月間、会社という環境に埋没していた。家族・地元の友達、学生時代の友達と会話をして「冷静」になったときに、会社に疑問が出てくるのは「当たり前」な感じ方だと思います。

職場で偉そうに「管理者」をやってる、おじさん・おばさんたちも、若いころは、長期連休のたび、「この職場に居続けてよかったんだっけ?」と疑問に感じてきました。しかし、「石の上にも三年」というコトワザを肝に銘じて「辛抱我慢、忍耐」を貫いてきました。

なぜかつて「石の上にも三年」が有効であったのか。
労働者の立場が弱くて、会社の立場が強かったからです。
簡単に、同等以上の待遇の転職ができないので、正常・冷静な感覚を押し殺す必要がありました。これもまた、ただの「市況による」反応です。人生論に偽装した、市況への対応です。

先輩や上司が忍耐を押しつけてくる理由は2つあって、
・経験の押しつけ。アップデートできてない(経験則)
・若手の慰留が、彼らの「職務」である(利害と打算)

職場のおじさん・おばさんを嫌いにならないでください。
彼らは、若手を不幸にしようと思って「石の上にも三年」というお説教をしているのではありません。実際に30年近く「石の上にも」が正しかったのですから、善意で助言しています。
また職務上、高い採用費・手間をかけたのに、すぐに辞められたら、会社に損をさせます。彼らの評価が下がります。
経験則によって形成された人生訓と、利害と打算がごちゃごちゃに癒着して、「辞めたらいけない。辞めるべきではない」と説教します。

おじさん・おばさんの人生訓は、尊重してあげてください。やんわりと、スルーしてあげてほしい。彼らの利害と打算(下心)について、敢えて口に出して指摘することは、辞めてあげてほしい。
どちらも、中高年のプライドを傷つけるので。彼らが本心から良かれと思って引き留めていることは分かってください。しかし、仕事や職場が合わないものは、どうしようもない。だれが悪いのでもない。

新社会人、第二新卒(社会人歴1年目~3年目)は、「職場や会社、仕事に違和感があったら、さっさと辞めてよい」と思います。心身にダメージを負う前に、転職活動をしましょう。忙しくて心身に余裕がなく、現職を続けながら職探しが難しいならば、まず退職してもだいじょうぶです。これがこの記事で言いたかったことでした。
なぜなら、労働者が主体的に仕事・会社を選びやすい「市況」だから。せっかくの巡り合わせを、うまく利用してください。これに尽きます。

この記事が参加している募集

新生活をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?