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これからアビスパの話をしよう(VS名古屋)

来る2月28日(日)、アビスパ福岡は久々のJ1での開幕戦を迎えました。相手は名古屋。去年のJ1リーグ3位。相手にとって不足なし(むしろ過大)です。我らがアビスパ福岡のレビュー、開始します。

アビスパ、出鼻をくじかれる(前半序盤)

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名古屋は4-4-1-1(守備時4-4-2)、福岡はJ2から採用してきた4-4-2で試合に臨みます。試合は開始直後に動きます。FKを弾きかえされた福岡は、まだ戻れていなかったキッカーのエミルのスペースを突かれる形でカウンターを受けます。下図のように、右サイドから大きく斜めに走る形で、名古屋の右SHのマテウスが、ボールを運んだ相馬からグローリとグティの間でボールを受け、個の力を発揮され、失点します。J1での開幕戦の出鼻をくじかれるという、最悪の形でのスタートとなりました。

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通常の4枚が揃っている状況であれば、エミルがディレイをかけた上でグローリが回収ということも可能だったかもしれませんが、グローリが相馬の対応をし、グティがカバーリングを意識したポジションにいたため、この失点は致し方ないものだったと思います。


この後、名古屋は15分過ぎぐらいまでハイプレスで福岡を攻め立てます。昨季の名古屋にはハイプレスをかけてくるというデータが無かったでしょうから、この状況に福岡の選手は面食らったことだと思います。事実、J2では余裕を持ってプレーをしていた前・重廣の両CMFも、前半はボールロストや、ミスパスを繰り返していました。さらに、そのことにより、2枚のFWへのボールの供給が寸断され、攻撃に出ることもかなわない、というシチュエーションが続きました。

緩むプレス、進む左サイド(前半中盤~終盤)


25分を越えたあたりから、名古屋のハイプレスの波が止まり、少しずつパスが回りだすようになります。そのため、若干ではあるものの、効果的な配置を取ることで、前進するプレーを増やすことに成功しました。そのキーになっていたのが、志知と石津でした。

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石津が少し内側(ハーフスペース)にポジションを取り、名古屋右SBの成瀬の守備の基準点をずらし、石津の空けたスペースを使い、ボールを受けた志知が突破する、というプレーが見られるようになりました。このことにより、相対的にマテウスの攻撃回数を減らすことができました。ただ、名古屋のドイスボランチと両CBの壁は厚く、相手MFのラインを越えてシュートに持ち込むには、43分まで待たざるを得ませんでした。


エミルを狙ったロジカルな攻撃


前半で特筆すべきは、名古屋のエミルを狙った攻撃でした。相馬がDFライン近くまで降り、空けたスペースに吉田が走りこむ、といったもので、この旋回をすることで、エミルをつり出し、空いたスペースを使おうとしていました。前半でこの形が何度もありましたが、グローリの的確なカバーもあり、失点にはつながることはありませんでした。

しかし、このやり方は福岡の攻撃のキープレーヤーでもあるエミルの体力を削ぎ、また、上下動させることで、ポジティブトランジションからのエミルの攻撃参加のポジションを取らせない、という点で、非常にロジカルかつ効果的であった、と思います。

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ただ、こうした動きは長距離の移動がどうしても必要となるため、相馬が後半運動量を落とし、交替となったこと、また、後半、金森と競り合いの末、オウンゴールを献上してしまった吉田のスタートの出遅れの遠因となったのではないか、と自分は考えています。


アビスパ、またも出鼻をくじかれる(後半序盤)


立ち上がりから少し大味な展開となり、福岡がプレースピードに慣れ始め、また、前半の素早かった名古屋の帰陣も若干の緩みが出たことで、スペースが生まれ始めます。そこでエミルや志知が攻撃参加できるようになり、前への推進力が出始めた矢先でした。

名古屋の右→左のサイドチェンジからのクロスが中に入っての混戦で、グティがボールを掻き出そうとしましたが、相手が目の前にいたため、思うようにバックスイングが取れず、ミートできなかったことから、マテウスの前に転がってしまい、ゴールを奪われてしまいました。反撃のために前への推進力を増していただけに、返す返すも非常に悔やまれる失点でした。

見えた光明(後半中盤~終盤)


2失点目を喫してからの福岡は、名古屋がDFラインを下げてきたことにより、プレーに余裕ができ、前半通らなかったパスが通るようになっていきます。特に、2枚のCMFからFWまでのパスが刺さるようになったことで、楔の形でエミルに落としてサイドの突破を促すプレーなどが増えてきました。

また、左サイドに位置した杉本が、中央近くまで進出することでマークの位置をずらし、名古屋の守備の基準点を乱すなど、良い動きが出るようになってきました。また、山岸と交代した金森も、疲れの見える吉田に対し、スプリントで勝負に出るなど、徐々に光明が見える状況となってきました。


しかし、ノーファウルとなったものの、稲垣の危険なタックルにより杉本が負傷し、交替してしまうという残念な状況になってしまいました。足ごと刈り取るファウル相当としかいえないものでしたが、足裏を見せていないため、退場相当のプレーとはならないと思われますので、VARの対象にもなりません。こうしたこともあるのがサッカーですが、ケガが軽いことを祈るばかりです。


ただ、交替で入った草民も昨季の好調さを維持した動きを見せてくれ、フアンマとポジションチェンジをしたり、杉本と同じように中央まで進出する動きを見せるなど、良いアピールをしてくれていたのは好材料だと思います。


こうしたところに生まれたのがBメンデスが起点となり、金森がスプリントしたことにより誘発された名古屋のオウンゴールでした。金森に内を取られ身体を投げ出すしかなかった吉田は左足に当ててしまったことで、ゴールはボールに吸い込まれていきました。自分たちの力で決めたものではありませんでしたが、まあ諦めずに頑張ったご褒美、とでも思っておきましょう。



得点はしたものの、その後、福岡はさらに守りに入った名古屋の壁を崩すことはかなわず、開幕戦を勝ち点を獲得できないまま終えることとなりました。


総評


まずはJ1のスピードに慣れていないことが大きく出た試合でした。しかし、前回の昇格時のようなひたすらに「負けないこと」を目指した守備的なサッカーではなく、4バックを貫き通し、また、前や重廣など、後半からでもプレースピードに順応できる選手がいたことは大きく評価していいと思います。


また、J2時代よりも戦術的な配置を始め、一定の効果を見られたこと、それを名古屋というビッグクラブ相手に恐れることなく試行してきたことも評価すべきしょう。


しかし、一方、アタッキングサードまで運んでもシュートまで辿りつけないことや、サイドからの攻撃の精度など、様々な課題が浮き彫りになったのことも事実です。また、こういった状況でも無理矢理ゴールを決めてしまうような飛び道具のような存在の選手がいないことが悩ましい・・・と言及しようとしたところ、何かリリースが来ました。



彼のこじ開ける力に期待しましょう。どんなプレーヤーかは全く存じ上げませんが、今から勉強したいと思います。


最後に


華やかだけではない、長く険しいアビスパ福岡のJ1の道は始まったばかりです。彼らが最大限の力を発揮し、ジンクスを破る結果を残せるよう、手拍子、拍手でチームの後押しを!


誰が見ても良いプレーだけでなく、意図の見えるプレー、相手のバックパスを誘引するようなプレスの時にも確実に拍手が増えているいまの状況は、より強い後押しの原動力となるはずです。最後に笑い合うためにも、サポーターも強い気持ちで!

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