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いま流行りの“糖質制限”に違和感あり。

近年は、やたらと糖質制限がブームになっているようで、書店にいくとその手の本をたくさん見かけます。そうした本を読んだことはないけれども、わたしはこれには必ずしも賛同しないし、違和感を感じるね。
 一般的に、科学とか数学とかいう分野は、答えが一つと決まってるはずなんだけど(真理は一つしかないため)、ことに栄養学という分野ではまったく様相が違うらしい。正反対の主張が、平気でいわれていたりする。

たとえば、ケーキとかお菓子類とかが健康にわるいのは、常識でなんとなくわかる。精製された糖質であることに加えて、得体のしれない人工添加物がもりだくさんと入っている。スポーツドリンクやブドウ糖入りの炭酸水も控えたほうが良いでしょう。血糖値を乱高下させるといわれる。
 一方、パンとかパスタとかラーメンとかも、あまり食べすぎないほうがいいでしょう。糖質だからというより、小麦製品、そこに含まれるグルテンが、腸内環境や免疫を乱すというはなしもある。
 テニスのトッププレーヤーであるジョコビッチ選手は、たしか小麦にアレルギーを起こす病気を持っていて、完全にグルテンフリーの食事に切り替えたところ、体調が目まぐるしく改善したのだという。
(「ジョコビッチの生まれ変わる食事」三五館)

それでは、それほど精製されていない糖質、ふつうのお米はどうなのだろうか。わたしは日に一度しか米を食べないけれども、とくに制限する理由を感じられない。健康面のことを考えたら、全粒穀物のほうがいいのだともいわれる。玄米とかオートミールとかである。

糖質は炭水化物から摂ることが多いと思うが、炭水化物を制限することにも問題がある。医学博士のマイケル・グレガーは次のように記していた。

ある研究では100人の男女を、低炭水化物食を摂るグループと高炭水化物食を摂るグループに無作為に分け、1年間の実験をした。その結果、高炭水化物食を摂った人たちは、低炭水化物食を摂った人たちにくらべて、気分の落ち込み、敵意、気分障害などが有意に改善したことがわかった。
 この結果は、高炭水化物、低脂肪・低タンパクの食生活を送っている人たちは、気分がよく、不安になりにくいという、いくつかの研究結果とも一致している。
 「食事のせいで、しなないために(病気別編)」(NHK出版)

グレガー博士によれば、「高炭水化物、低脂肪・低タンパク」の食生活は、精神面の健康にもいいのだという。このことは、他の本で書かれている主張とも部分的に一致する。
 また、全米ベストセラーの「メディカル・ミディアム 医療霊媒」という本では、次のように書かれていた。ちなみにこの本は、科学的根拠という点では弱いが、主張には共感できるものがあり、わたしにとっての「座右の健康書」である。

食事療法の専門家は大抵、動物性タンパク質をたくさん食べることを勧めます。これは彼らが、たとえ低脂肪の動物性タンパク質にも脂肪が多く隠れていることを知らないか、脂肪は良いと思っているからです。脂肪を勧めるアドバイスはとても説得力があるので注意してください。…高脂肪は膵臓や肝臓に負担をかけ、果てはインスリン抵抗性をもたらし、体がブドウ糖を安定したレベルに保つことを困難にします。
 「メディカル・ミディアム 医療霊媒」アンソニー・ウィリアム

肝臓や腎臓、膵臓を台無しにしたいのであれば、ご自由に医者の指示に従って果糖を避け、高タンパク、つまり高脂質の食事をしてください。私はそれがいかなる食事療法や栄養学の潮流であっても、肩を持つことはしません。
 前掲書

その時代の流行りによって、いわれていることがコロコロ変わる、ということが世の中には往々としてある。その中で真理を見極めるには、古くからの教えに従う、という方法があると思う。
 思想家のナシーム・ニコラス・タレブはそれを、“おばあちゃんの教え”といっていた。古くから、野菜や果物がからだにいいと言われていいるのだから、いくら栄養学や食生活のブームがころころ変わっても、どうやらこれだけは確実に言えそうである。