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わたしが肉食をやめた理由

わたしは睡眠障害になってから、ずいぶんと食生活に気を使うようになった。肉類全般を止めたのもその一環で、きっかけはNetflixのあるドキュメンタリー作品を視聴したことだった。
 「ゲームチェンジャー スポーツ栄養学の真実」では、菜食主義のアスリートたちが目覚ましい記録を叩き出しているさまが描かれ、しかもこれは単なる偶然というわけではなく、科学的にも根拠があるのだという。
 わたしはアスリートではないが、肉食をやめて食生活を変えることによりそれだけの成果を生み出すのであれば、それはきっと脳や健康全般にも好ましい影響があるに違いない。そう思ったのだ。

他の点としては、わたしたちがふだん口にする家畜たちの、生育環境にも問題を感じている。
 近頃の季節になると、感染症が流行するのは人間だけの話でもない、動物も同じである。鳥インフルエンザや豚熱が流行り、そうなると防疫のために、数十万から多いときで数百万頭(羽)もの家畜が殺処分される。
 ここの“単位”によく注意する必要がある。少なくても万単位で、動物たちが防疫のために一度に殺されるのである。
 これは、家畜たちがそれだけ過密な環境で、不衛生な環境で飼育されているということでもある。家畜たちは、膨大な抗生剤やホルモン剤を投与されているというが、それにもかかわらず、こうした感染症を防ぐことができないのだ。

人類進化生物学者のダニエル・リーバーマンは著書で次のように記していた。
“現在アメリカ人とヨーロッパ人が食べている肉のほとんどは、集中家畜飼育施設と呼ばれる巨大施設のなかで育てられたものである。大規模な農場や家畜小屋に数百から数千頭の家畜が詰め込まれ、身動きもできないような状態で穀物(たいていはトウモロコシ)を食べさせられる。…
 さらに、こうした動物は病気になる率も高い。大量の排泄物が一箇所に集中するうえに、個体密度も高いので、感染症が流行りやすいからだ。”
 「人体六百万年史 下」

また、動物福祉の観点からも、人間の都合で家畜を育てながら、人間の都合でいともあっさりとその生命を奪っていくことに、なんとなく違和感と嫌悪感を感じている
 
別の理由としては、そうやって工業式の畜産方法で飼育された家畜を口にすることで、わたしたちの健康にいったいどんな影響があるのか…疑問を感じてもいるからだ。
 たとえば、以下のような記述もある。
“普通は草食である家畜に他の家畜を食べさせれば、はからずも共食いを強いる結果を招き、ベイクウェルに批判的なリチャード・パーキンソンが言ったように、「人間を造物主に反逆する立場」に置くことになる。…このような行為は人の道に反すると考える者はほとんどいなかった。それどころか第二次大戦直後、イギリス政府は、牛の加工飼料には5%の動物性たんぱく質を配合することを義務づけた。”
 『眠れない一族』ダニエル・マックス

ジャーナリストのダニエル・マックスは、まれな難病、“致死性家族性不眠症”の起源について取材をするなかで、草食である家畜に動物性タンパク質を配合した飼料を与え続けてきたことに対して、問題を提起している。
 ひょっとしたら、こうした不自然な畜産の方法が、“プリオン病”のような得体のしれない神経系の難病奇病をじつは引き起こしている可能性も考えられる。

近年の栄養学や食事/食生活の流れとして、糖質を制限しなさい、代わりに(動物性の)タンパク質を積極的にとりましょう、というものがある。
 しかし、こうして育てられた家畜を食べることは果たして安全なのかどうか。また、動物たちの生命を軽視することになってはいないか。いろいろな疑問を感じているのである。