今年上半期に読んだノンフィクション本、3選
●「コンテナ物語 世界を変えたのは『箱』の発明だった」(マルク・レビンソン)
この本は、去年の暮れに雑誌「ウェッジ」で物流の2024年問題が特集されていて、その時に知って読んでみようと買ってみた本である。
くだけたタイトルに対して、わりとまじめな内容で、しかもけっこうなボリュームだった。物流、とくに海の物流というものに関して理解が深まる内容。
人物伝のようなところがあり、とりわけ「マルコム・マクレーン」という元トラック運送業者にスポットを当てている。彼はそれまで見向きもされなかったコンテナに目を付け、これを海上輸送に活用することで成功した。
コンテナリゼーションが進む前はどうしていたかというと、“沖仲士”という職業があり、荷物を仕分けしたり積み下ろしをしたり、といったことを毎回やっていたようである。
●『なぜデジタル社会は「持続不可能」なのか』(ギヨーム・ピトロン)
われわれを取り巻く生活は、ますますテクノロジーに依存するようになっている。しかし、そんなテクノロジーが地球環境に与える影響の大きさについて考察したのが本書。
著者は文字どおりに全世界を駆け回り、いろいろな取材を試みているのだが、正直テクノロジー批判本としては少々もの足りなさを覚えた。
●「半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防」(クリス・ミラー)
著者によれば、半導体は現代において、石油をも上回るほどの最重要資源であるという。そんな半導体の発展の歴史、そのために寄与した人物、組織や企業、国家について、洋の東西をとわず取り上げ、深掘りしたのが本書である。
技術的で詳細なところはちんぷんかんぷんで分からないわけだが、それでも十分内容は理解できます。印象としては、「テキサス・インストルメンツ」という会社とその関係者が与えた影響力が大きいようである。
日本企業のことについても、かなりの紙数を費やして書かれており、日本人として興味深く読みすすめた。現代において、半導体の設計と製作は特定の地域の企業(台湾のTSMC)にますます依存する状況が続いており、台湾有事も懸念されるなか、このことが全世界にとって大きなリスクとなっている。
全編をとおして、技術者やテクノロジーを讃えるような著者の熱意を感じさせる。一方で、どこかテクノロジーに疑問を持っており、できれば距離をおきたいと願う私としては違和感もおぼえました。