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むごい教育とは

今日のおすすめの一冊は、高野登氏の『百年思考』(かざひの文庫)です。その中から「穏やかな海では、優秀な船長も船乗りも育つことはない」という題でブログを書きました。

本書の中に「むごい教育」という興味深い一文があったのでシェアします。本日のブログとも関連する話です。

戦国時代、今川義元が竹千代(のちの徳川家康)を人質として引きとった時のことです。義元は家臣にこう命じます。「竹千代には、むごい教育をせよ」。これを受けた家臣は、竹千代が泣き出すような厳しい試練を与えることだろうと理解し、さっそく取りかかります。
しばらくして義元から進捗状況を聞かれた家臣は、「仰せのとおり、竹千代は早くから起こし、昼は馬術に剣術、夜は勉学にと、厳しく教育しております」。これを聞いて義元、「馬鹿者!それはむごい教育ではない。むごい教育とは、朝から晩まで好き勝手にさせることじゃ。眠いならいつまでも寝かせておくがよい。暑い日は涼しく、寒い日は温かく整えるがよい。贅沢なご馳走を好きなだけ与えてやるのじゃ」。
むごい教育とはつまり、わがままや欲望をなんでも叶えさせてやることなのですね。そうするとどうなるのか。成人したあとでも、痛みや困難に弱い人間になってしまいます。過保護に育てあげることで、家康の未来をダメにしてしまおうという義元の深淵な策略だったわけです。
今の日本の社会。団塊の世代は自分が味わった苦しい思いを子供にはさせまいと、与え続けてきました。あれから数十年。むごい教育は日本の社会に何をもたらしたでしょう。

これは、今の我々にとって、なんとも痛い話です。自分も含め、多くの人が「むごい教育」に向かって確実に進んでいるのですから。何でも手に入る、物資の豊かな生活の中で、自分を律したり、自分に厳しくコントロールすることは至難の業(わざ)です。

ダイエットや禁煙、禁酒がいい例です。いつでも食べられる、吸える、飲める状況の中であえて食べない、吸わない、飲まないという自分を律しなければならない行動だからです。人は自分に甘いものです。様々なことが、なかなか習慣化しないのはそのためです。

子どもの頃、毎日、甘やかされたら、それが習慣となって、大人になってもその行動パターンは変わらないでしょう。厳しい話です。

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