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「大きな物語」ではなく「小さな物語」を語ろう

今日のおすすめの一冊は、石山恒貴(のぶたか)氏の『地域とゆるくつながろう!』(静岡新聞)です。その中から『サードプレイスができる「まち」』という題でブログを書きました。

本書の中に『「大きな物語」ではなく「小さな物語」を語ろう』という心に響く文章がありました。

近代社会は「大きな物語」を信じた時代でした。自分が属する国、地域、組織が危機に瀕した時、人は共通した「大きな物語」を信じ、その救済のためには自己犠牲を厭いませんでした。また属する国、地域、組織を救うために自己犠牲を伴うことは、人々の共感と感動を呼ぶことになります。

現代のような複雑で変化の激しい時代にあっては、人々は「大きな物語」を喪失したと言われていますが、果たしてそうでしょうか。実は、今でも多くの人は「大きな物語」を信じている側面もあるような気がします。

「大きな物語」にまい進することは、もちろん否定されることではないでしょう。むしろ、多くの人の感動を呼ぶ、素晴らしいことであるかもしれません。ただ、自己犠牲とともに「大きな物語」にまい進するのでなければ地域とつながることはできない、と考えてしまうなら、それは個人の選択肢を狭めてしまうことになるでしょう。

大事なことは「小さな物語」は地域への貢献に確実につながる、ということです。本書で語られた多くのエピソードは、個人の「小さな物語」を起点としつつ、そこに偶然性も加わって、 地域の活性化に寄与できていたことが示されていました。

●たとえばJワールドでは、個人的な体験を語り合うことが、結果として地域の居場所作り、多世代交流へとつながっていきました。
●リトルムナカタの始まりは、友人や知り合いで楽しく集まることでした。
●かもめIT教室の岩間さんは、気軽な起業支援セミナーを取りあえず受講したことで市川市との関わりが深まっていきました。
●土佐山アカ デミーの吉冨さんが高知に関わるきっかけは、龍馬への憧れでした。
●岩崎学園の学生たちは、小学生 のお兄さん・お姉さんになりたい、という気持ちで小プロの活動を進めました。

これらの「小さな物語」は、あくまで個人としての「小さなやりたいこと」が起点でした。始まりの段階では、それぞれの人たちは、地域への貢献ということを必ずしも強く意識してはいなかったようです。

ところが、いろいろな偶然が重なり、共感する人々が集まり、結果的に地域への貢献につながっていったわけです。「やりたいこと」が起点であるからこそ、それを進める人は楽しいわけです。

その活動が楽しそうに見えるからこそ、共感する人が増え、うねりのような活動の拡大が生じたのではないでしょうか。また、自分の「やりたいこと」だからこそ、その活動は短期に終了することなく、長期間継続していくのではないでしょうか。

自分の「小さなやりたいこと」を大切にしながら、地域とゆるくつながることは可能なのです。 そして、ゆるくつながっていた人たちは、やはり「地域が好きだった」ということです。

ただし、もともと「地域が好きだった」とは限りません。リトルムナカタの発起人には、早く故郷である宗像を飛び出したいと、学生時代に東京での暮らしを選択した人もいました。あるいは、もともとは「地域とのつながり」にさほど関心がなく、故郷とも居住地とも、それほどの関係性を持たずに暮らしていた人たちもいました。

では、これらの人たちは、どのようなきっかけで「地域を好きになる」のでしょうか。個々のきっかけは、さまざまです。ただ、このきっかけも共通しているところがあります。それは、人と人のつながりが、「地域を好きになる」ことを後押ししてくれた、ということです。

多くの人は、まちおこしや商店街の活性化という話になると、大きなことを考え、大きなことをしなければ変わらないのではないか、と思ってしまう。何億という予算をつけて、大規模な改装を重ね、大きな建物を作ろうとする。それが「大きな物語」。

本当は、「変革とはたった一人から始まる」ということを忘れている。そのたった一人が面白がって、楽しみながらコツコツとやっていることをみて、一人、また一人と同志が増えて行き、それがやがて大きなうねりになるのだ。

最初は、自分以外、たった2,3人しか集まらないときだってある。それでも、楽しいから続けていく、何回も何回も、淡々と続けていく。自分の思いを語っていく。それが「小さな物語」だ。そして、それがサードプレイスとなる。

まちおこしや商店街の活性化も、まさに商店主が自分の店をサードプレイスにしようと考えることからすべてが始まる。

自分の好きなことを始めよう!たった一人から始めよう!「小さな物語」を淡々と、そして、面白そうに、楽しそうに語り続ける人に…。

サードプレイスをつくろう!

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