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安部コウセイさんが語る、志村正彦さんについての「夜のるすばん電話」を聞いて

今日はクリスマスイブ。フジファブリックのボーカルだった志村正彦さんの命日。
安部コウセイさんが24時間限定で公開してくれた志村正彦さんに関する話(ラジオ)の文字起こし的な内容とそれから感想などをざっくり書いてみようと思います。

申し訳ないですが、トーク内でご本人が仰っていたように、私は「安部コウセイさんって誰?」とご本人のことも、志村くんとの関係性も知らずにラジオを聞き始めていました。
でも一度聞いてしまったら、飾り気のない素のままのトーク内容が素晴らしすぎて、二度、三度と繰り返し聞いてしまいました…。
これはヤバイ。最高のクリスマスプレゼントだと。24時間で煙のように消し去られてしまうなら、内容や感想を、感動を、今日のうちに書いておかなければと慌てて書き始めているイブの21時です。

いつもは有料コンテンツなのに、「お金をいただくのはやだな」と無料公開にしてくれたコウセイさんのやさしさにまずは心つかまれた前振りからスタート。

志村くんとの出会いは対バンで、コウセイさん率いるSPARTA LOCALS(スパルタローカルズ)と志村くんのフジファブリックがライブを共にしたことが始まりとのこと。(※ラジオでコウセイさんは志村くんのことを「志村」と呼んでいますが、私は呼び捨てできる立場ではないので、「志村くん」と書かせていただきます。つまりコウセイさんの語りとして文字起こし部分を読む際は「くん」を省略して読むと分かりやすいかもしれません。)

自身はとがり倒していた時期で、とがるために生きていたと言っても過言ではないほどで、だから最初のうちは仲良くなろうなんて思ってもいなくて、何度も対バンを重ねているうちに、徐々に距離をつめて心を開いていったらしい。

ミュージシャンとして、友達未満、知り合い以上な距離感での関係性が続いた。

志村くんを意識し始めて、コンプレックスも抱いたらしい。何しろ志村くんはモテそうな顔をしているから、まずはそこがコンプレックスだったと。

それからバンドとしても、フジファブリックの方が主役っぽくて、スパルタは主役にはなれないバンドだと思っていたと。フジファブリックが陽で太陽なら、スパルタは陰で月みたいな存在だと、偏見というか勝手にそう思い込んでいたそうだ。

でもある日、街でたまたま志村くんと遭遇し、どこを見ているのか分からない捨て犬みたいな目をしている志村くんと話した時、陽ではなくて、意外と陰キャラだし、暗いやつ、つまり仲間だと思い、より心を開くことができたらしい。

新木場コーストでライブがあった時、プールサイドで打ち上げをして、他のバンドだとよく分からない女が混ざって盛り上がったりする場合もあるけれど、スパルタとフジファブリックに関しては一切そういうことがなくて、真面目で暗くて、パリピとは無縁で、その時、志村くんと心を許し合うほど長く話し込んだそうだ。

お互いひねくれもの同士で、ライバル視していて、でも直で褒めたりはしないから、人づてに志村くんがスパルタを見てくやしがっていたとか聞いたりして、自分もフジファブリックが羨ましかったりしていたから、「ないものねだり」していたなと。
(※フジファブリックの楽曲、「ないものねだり」を意識してくれたなら、うれしいです。)

スパルタが解散することになった時、志村くんは「何で解散するんですか。意味わかんないです。」とかブチギレて、納得できないと怒っていたらしい。
私は人のバンドのことなのに、怒ってくれる志村くんはいい人だと思った。まるで自分のバンドのことのように、ライバルバンドのことを心配するなんて、やさしいと思った。もしもこれがただ嫉妬し合う間柄なら、ライバルが減ってうれしいとか思うミュージシャンだっているかもしれないのに、「怒った」ということは心底、コウセイさんのことを認めていて、憧れていて、良きライバルで、もっと一緒に音楽界で競い合いたくて、かけがえのないミュージシャン仲間だったんだろうなということが想像できる。

渋谷アックスで解散ライブをした時も、コウセイさんがロビーで挨拶していたら、志村くんはちょーにらんでいたらしい。そして「ライブ良かったっす」と小声で言ってくれたと。自分と同じように音楽と真剣に向き合っている同業の人というか同志にやさしくて不器用な愛情表現をする志村くんの様子が目に浮かんだ。ラジオを聞いているだけなのに、志村くんの一挙一動が想像できて、うれしかったし、切なくもなった。

志村くんが死んだ時、大ニュースになって、「若者のすべて」がいろんな人たちにカバーされて、注目が集まった。その時、コウセイさんは「とにかくムカついた」と。別に死んだからって過去の楽曲の価値が上がるわけでもない。ずっとカッコ良かった。それは生きていようと、死んでしまったとしても変わらない。死んだことで価値は上がらない。元々美しい曲たちが悲しみによって汚れてしまうような感覚で、もやもやしたし、違和感が拭えなかったと話していた。

この話を聞いて、本当にその通りだと思った。人は勝手な生き物で、亡くなった途端、故人を美化しがちで、生前の実績を美談に作り替えてしまったりする。もっとひどいと「死」を利用する場合もある。少し話は逸れてしまうけれど、今年は三浦春馬さんが亡くなって、未だに彼が残した主演新作映画等、公開は続いているし、来年三月にも映画が控えているらしいけれど、なんとなく全体的に、彼が出演すれば作品がすべて「遺作」として美化されてしまっている気がして、私も違和感を覚えている。生きていた頃からずっと輝かしい俳優さんだったし、コウセイさんの言葉をそのまま借りれば、別に死んだからと言って、価値が上がるわけじゃないのに、妙に特に新作、遺作となるとプレミアがついてしまっている気がして、複雑な心境だ。


話を志村くんに戻すと、なぜか志村くんが亡くなった後から「若者のすべて」が生前よりも、じわじわヒットして、未だに新しいアーティストにカバーされ続けていて、個人的には、「若者のすべて」がリリースされた直後にもっとバスれば良かったのにと思っている。私はリアルタイムでフジファブリックや志村くんを知らずに生きてしまっていたので、今となっては本当に悔しい思いをしているけれど、かなり遅れてカバーや志村くんオリジナルの「若者のすべて」を初めて聞いた時、まさか志村正彦が亡くなっているとは信じられなかった。あまりにも楽曲が輝いていて、全然古びてなくて、今の時代に合っているから、彼は生きていて、今も活躍しているアーティストだと思い込んでいた。だから、楽曲を聞いた後に「志村正彦」とググって、亡くなっている事実を知った時はショックだったし、信じられなかった。まだ信じられないし、信じたくもない。でもクリスマスイブになると、ネット上で志村くんを追悼するような書き込みが増えるから、あぁ本当に志村くんはもういない人なんだなと実感せざるを得なくて、悲しくなる。死を実感して、涙もろくもなる。
でも今回のコウセイさんのトークは、志村くんを思い出して、悲しくなるよりも、なんかひねくれて素直になれなくて、でも人思いで音楽を愛する者同士で真剣に語り合っている姿とか、怯えた子犬のような眼差しとか、本当に次々光景が浮かぶトーク内容で、心が温かくなったし、志村くんらしい素のままの志村くん像をラジオを通して伝えてくれたコウセイさんに感謝したい気持ちでいっぱいになった。

最後はフジフジ富士Qのお話だった。コウセイさんも呼ばれて、絶対明るくやってやると思ったそうだ。一番手が民生さんで、その次がコウセイさんの出番。一張羅のスーツ買って、胸にヒマワリを挿して、あいつを送り出すという気持ちで臨んだと。
卑屈になるわけではないけど、民生さんの次だし「おまえ誰?」状態で、今まで通り普通になんかやんないと努めて明るく振舞ったらしい。万歳三唱もして。実際、フジファブリックの楽曲も演奏も良いから、単純に楽しくて明るくできたというのもあるらしい。
そして三人でフジファブリックを続ける決断は前代未聞だし、かっこいいと思ったと。

志村くんとは、未だに心の中ではライバルで、友達ほど近くはないけど、知り合いほど遠くない、特別な存在だと最後に改めて断言してくれた。

このラジオを聞いて、コウセイさんの考え方の素晴らしさも分かったけれど、(私もひねくれものなので共感できました。)未だにこんなに愛されているというか、別にべたべた馴れ馴れしい感じじゃなくても、コウセイさんの言う通り絶妙な距離感がキープされた状態だとしても、心の奥底で深い所で特に音楽に関してはつながっているというか、分かり合っている二人が素敵だと思ったし、コウセイさんに限らず、ミュージシャン、地元の人たち、全国のファン等いろんな人たちからずっと愛され続けている志村正彦さんは唯一無二の存在で、誰よりもかっこいいロックな男だと思った。イケメンでモテそうなのに犬のように怯えた目で、臆病で、でも誰よりも遠くを見据えていて、きっと音楽に関して何か悟っていて、ロックと真摯に向き合った紳士は他にいないんじゃないかと思えるほど、尊い存在で、今日はなるべく志村くんのことを考えるクリスマスイブを過ごしていました。別に今日だから命日だから思い出すわけじゃなくて、私にとっては去年の夏以降、一年中、毎日一瞬でも志村くんのことは心に留めて生きているので、志村くんを思い出すことは特別なことじゃなくて、日常のルーティーンでありますが、特に今日は安部コウセイさんのラジオに感動した気持ちを残したくて、長々と綴ってみました。メリークリスマス、志村くん。

※安部コウセイさんの名字の漢字を安倍と間違えてしまっていました。訂正しました。申し訳ございません。(2020/12/25)

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