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満員御礼! 「心のデトックス」を分かち合う、たっぷり落語の2時間半|#わたラク マガジン vol.24

こんにちは。
ひろのぶと株式会社 編集の廣瀬です。

去る2月24日(土)。
ひろのぶと株式会社 株主優待イベント
立川談笑・立川吉笑 親子会
sponsored by FIRST DOMINO

を開催いたしました。

当日は株主のみなさまはじめ、
一般来場のかたもいらっしゃり、会場は満席に。

笑いと熱気の溢れる一夜となりました。

会場は渋谷・表参道のLOFT HEAVEN。配信もありました。

“『令和版 現代落語論』は、この落語会まで含めて一冊だった”
そう感じた、親子会。

談笑師匠と吉笑さんの高座から、田中泰延を交えた3人でのトークまで、盛りだくさんだった当日の様子をお伝えいたします。

アーカイブ販売中。ご自宅でもお楽しみいただけます


※ 長いレポートになる見込みなので、目次から気になるところへ飛んで読んでくださいね!

たっぷり四席! 初落語のかたも大笑いの高座

開演時間。照明が落ちる会場。
ダダンッと和太鼓の音が鳴り、出囃子「野球拳」がかかります。

「ヨッ!!!」と気合いの入る掛け声と共に軽快に舞台に登場するのは、深緑の着物に身を包んだ立川談笑師匠。高座に上がり、美しく深いお辞儀をされて、さあ、落語会の始まりです。

終演後、そばを食べに行く人が続出?! 談笑師匠の改作『時そば』

「談笑・吉笑 親子会ということで。私がいきなり出てきて、私の後で吉笑が一席。仲入り(休憩)を挟んで、吉笑と私ということで。えー、落語の部分が、終演が——11時半くらい?」

冒頭のマクラから、談笑師匠の語りに笑いが湧き起こります。会場はみんな大喜び、笑いとともに拍手まで上がります。

「落語でございますんで、どういうふうに聴けばいいかというのは、『令和版 現代落語論』をお読みのみなさんには当にお分かりかと思いますけど、基本的にはぼーっと聴いてりゃいいんでございますな」

ひろのぶと株式会社主催の会。「『令和版 現代落語論』はすでに手にされている」「落語は初心者な人も多い」という会場に向けて、温かな声で話される談笑師匠。

「時代時代に合わせて、大衆芸能でございますので、落語は柔軟に変化していくところを、お聴きいただければと思います。私の一席もそうですけど、吉笑なんかは特にね、今の人たちに合うような噺というのを展開しておりますので、そこをお楽しみいただいて」

そうして入った談笑師匠の一席目は『時そば』です。

舞台は江戸。ある日、一人の男が屋台のそば屋で勘定の途中で「今、何時(なんどき)だい?」と時刻を尋ねて数字を混乱させ、お会計を誤魔化します。それを見ていた与太郎が、自分も真似してみようとする、古典落語を代表する滑稽噺……

ですが、談笑師匠の『時そば』は、一味も二味も違う!

そばの描写、そばをすする音、そば屋との軽快な会話。その様子に、終演後や翌朝には「談笑師匠の『時そば』を見て!」とおそばを食べている様子をSNSアップする来場者が続出しました。もちろん私も……3日ほど後に我慢ができなくなり、そばを頂戴いたしました。

笑いの後で日本語の豊かさを感じる、吉笑さんだけの新作『小人十九』

二席目は、立川吉笑さんが高座へ。2010年の11月に入門した談笑師匠の一番弟子であるという自己紹介につづき、“親子会”という言葉について解説くださいました。

「『親子会』と聞くと本当の親子だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんけども、“芸の上での親子”といいますか。血はつながっておりませんけども、師匠といえば親も同然という存在でございまして。我々の落語会では、師匠と弟子でやる会を親子会と言うというところでございまして」

LOFT HEAVENという会場についても「ライブハウスで落語をやるというのも、結構あるものなんですよ」と、いつもの落語会についてお話しくださる吉笑さん。

「座布団一枚あったらどこでもできる芸能でございますから、本当にいろんな場所でやらせてもらうんですよ」

3〜4歳の子供たち約25人がお客さんだった会など、これまでに経験されてきた高座のお話に、会場もその場をイメージしてクスクス・ワハハと笑いを増していきます。

そうして入った演目は、新作落語『小人十九』

今年1月、大賞を受賞した全国若手落語家選手権の本選でかけられた演目です。2020年に作られたという本作。コロナ禍を題材にした一作ですが、この演目の特徴は「言葉」にもあります。

京都のご出身である吉笑さんは、江戸落語を演る中で「日本語」の難しさにあたってきたそう。その中でも“噺家”として特に、西の言葉と東の言葉の発音・イントネーションの違いがややこしいといいます。

そして『小人十九』では、その2つの言葉が、江戸を舞台にクルクルと展開されていくのです。その鮮やかさ、まさに立川吉笑にしか演れない一席! 涙が出るほど笑いながら、日本語でこんなに遊べるのかと、言葉の豊かさも感じられます。

落語らしいのに新感覚!? 耳で愉しみ目で楽しむ、吉笑さんの『ぷるぷる』

仲入り(休憩)を挟んで三席目は、再び吉笑さん。落語家としての自身の環境が変わり始めた大きな節目は、若手の登竜門ともいわれる「NHK新人落語大賞」2022年優勝であったと話します。

「立川流としては17年ぶりの優勝で。えぇ——変な言い方ですけど、師匠も受賞できなかった賞ですね」

飛び交う笑いと拍手に、「いや、時代が違いますからね」「ありがたいことに、のびのびと育成いただいているおかげかなと」と言いながら、演目の紹介へ。

「もう一席は、17年ぶりに立川流に大賞をもたらした、現時点での立川吉笑の最高傑作ですね。師匠談笑からの教えの全てを投入した、談笑の教えの集大成ですね」

そうして落語に入った途端に、唇がくっついたままのぷるぷるした音で喋りだす吉笑さん。急な音の変化に驚きと笑いが湧き上がります。演目名は、まさにその音『ぷるぷる』です。

不思議なのが——ずっとぷるぷるしているのに、なぜか会話が聞こえてくること。その会話がまた、「ご隠居さんと八っつあん」のなんでもない話で……さらに最後には不思議なポーズまで登場します。

もう、この先の展開も衝撃もおかしさも、文字では表現しきれないといいますか。ぜひ、アーカイブ映像で体験していただきたいのですが、本演目の紹介の最後に、2022年のNHK新人落語大賞を獲られた際に出た記事を一つ引用します。

実際に「ぷるぷる」という落語を聞いてもらうともっともわかりやすいのだが、とても落語らしく、しかし古来からあるネタとは明らかに違っている。

でもやはり落語以外のなにものでもないという「お噺」である。

令和4年「若手落語家ナンバー1」に選ばれた立川吉笑 バカリズムに大喜利で完全に叩きのめされた過去

落語のはじめは小噺。原点にして最先端な、談笑師匠の改作『やかん』

本日最後の一席は、談笑師匠です。この日の会場の様子を見ながら語る談笑師匠。

「落語を初めて聴くよっていう人も、周りに落語を聴いたことがあるよという人がいると、なんとなくそれに合わせる形で、いい雰囲気なんですね」

『令和版 現代落語論』でも説いた大きなメッセージの一つ、「落語はライブ」。まさにそれを体験した(している)会場へ、談笑師匠は改めて伝えます。

「初めて落語を聴いたお客さん。これが、これが本当ですからね。配信(およびアーカイブ)でご覧の方もいらっしゃるけれど、ぜひぜひまた、機会があれば足を運んでくださいね」

そうして入った演目は『やかん』

ご隠居のもとを訪れた八五郎が、いろんなものの由来を尋ねます。そこで知ったかぶりをするご隠居。どのように答えるのか、そしてそんなご隠居を試そうとさらに質問を重ねる八五郎とのやりとりが愉快な古典落語です。

実はこの日の一席目のマクラで、談笑師匠はこんな話をしていました。

「落語というのは小噺が大きくなったというのでございましてね。もともとは小噺。もうなんてことないようなやつで」

『やかん』は、まさに小噺がいくつか連なって、大きくなったような滑稽噺です。一席目のマクラからつながって、落語の原点のような噺を聴けた! と思った私……

ですが、談笑師匠の『やかん』は、一味も二味も違う!(本日2度目)

その楽しさ、改作の具合はぜひアーカイブで体感いただきたい! のですが、一つの感想として、数日後に投稿した私のツイート(ポスト)を紹介します。

師匠と弟子、表現方法としての落語——二人の視点で語る「落語」

トークは洋服でご登場。

たっぷり四席の高座を楽しんだあとは、「親子会」最後のコーナー、立川談笑 × 立川吉笑 × 田中泰延のトークへ。

「今日、うれしくて。私どものほうで、ぜひ親子会をとお願いしてご快諾いただいたんですけれども」と、熱気を帯びた満面の笑顔の田中によるモデレーションで進みます。

最初の話題は、2023年に内定した吉笑さんの真打昇進について。談笑師匠の一番弟子である吉笑さん。つまり、談笑一門から初めての真打誕生になります。

「お弟子さんが真打になられるというのは、どういう感じですか?」という田中の質問に、「きっとね、娘が嫁に行くような感じだと思うんですよ」と談笑師匠が応えます。

「当たり前でもあり、なんとなく不安でもあり、楽しみであり。きっとまたそこに新しく子供ができたりして家庭ができるんだろうな、一門ができるんだろうなという感じでございますね」

そんな結婚前夜の父親のような心境の(?)談笑師匠は、改めて吉笑さんと二人で高座に上がる「親子会」を、どのように感じたのでしょうか。

「いつぐらいだろうなぁ。一門会なんか毎月吉祥寺でやっているんですけど、けっこう吉笑の後(の順番で高座に)上がりたくないなぁというのは。うん、いつぐらいからかちょこちょこあった」

談笑師匠「よくね、落語家はあるよね」。吉笑さん「はい」。

まさかの言葉に田中も「わっはっは」と笑いますが、そう感じるほどに吉笑さんの高座には笑いの爆発力があると談笑師匠は話します。

「だから、あの流れ(吉笑さんの『ぷるぷる』の後)で今日は、あのバカバカしい『やかん』ができたのは、私の心の強さだとも言えます。意味がないようなのも、落語だよというのをやりたかった」

一方、弟子である吉笑さんは、談笑師匠のことを「いつまで経っても、師匠は師匠。差が縮まるとかはない」と語ります。

吉笑さんは、自身がメンバーとして活動する話芸ユニット「ソーゾーシー」のTシャツで登壇。

ここで話は、昨今話題の「師弟関係」についてに。談笑師匠は『令和版 現代落語論』の中でもこの話題に一歩踏み込み、「落語家の業界内」という項目の中で師弟関係を親子関係に重ね、自身の考えを伝えています。

その談笑師匠の考えに、弟子の立場から「こんないい、真っ当な考えの師匠はなかなかいない」「怒られたことがない」という吉笑さん。

「談笑師匠は、師匠とか抜きにして、人類で一番優しんじゃないかっていうくらい」

約一年、本づくりを共に歩ませていただいた私は、この吉笑さんの言葉に「う〜ん!」と唸って、頷いてしまいました。

お酒も飲める会場。トーク前はバーカウンターに並ぶ方々も。

トークの後半は、お二人の落語へのアプローチについて田中からうかがっていきました。

もともとはお笑い芸人を目指していたという吉笑さん。その中で、“笑いの手法”として一番しっくりきたのが「落語」だったそう。

笑いの手法としてスタートした落語。「今は落語が上手くなりたい」とも話します。

一方の談笑師匠も、もともと落語や家元・立川談志に魅力を感じていたことに加えて、ツール・手法として落語でできることも考えていたと話します。

「理屈で世間に対して訴えられないところというのを、情で訴えたらどうだろうと。社会正義を実現するために法律家がいるとしたら、違うアプローチで、私が信じる社会正義というのを世に問うてみたいと思ったんですよね」

「情」「社会正義」という言葉に、田中は談笑師匠の人情噺を「素晴らしくて」と話題に上げ、「談笑師匠の『〇〇』って、名前聞くだけでもうダメですもん、思い出してうぅ〜って泣けてきてしまって」。その姿に師匠は「わっはっは」と温かく笑います。

今回の親子会ではおもしろい滑稽噺を二席演ってくださいましたが、談笑師匠は人情噺もたまらない。『令和版 現代落語論』には、人情噺の改作解説と高座動画も収録されています。ぜひ、ご覧になってくださいね。

あっという間の30分。話は尽きず、まだまだいろんなことを話しています。ぜひ、アーカイブでご覧ください。

落語入門書としての『令和版 現代落語論』は、この日まで含めて一つの出来事だった

生の落語に、トークまで。盛りだくさんだった2時間半。

終演後、会場を後にするみなさんがとてもいい笑顔で挨拶くださったのが、印象的でした。「落語は心のデトックス」。本当に、やって良かった。

そんなみなさまのお顔を見て、その後SNSなどでご感想を拝読したいま、私は「この親子会までを含めて『令和版 現代落語論』という一つの出来事だった」と感じています。

「きっと、ひろのぶと株式会社から談笑師匠の本を刊行すれば、はじめて落語に触れる方がたくさんいる。だから、当社のイベントとして落語会を行いたい」

刊行前から、ずっと考えてきたことです。その“生の体験”まで届けてこそ、『令和版 現代落語論』は完成する。そう考えていました。

でも、どうしたら実現できるのか。

書店イベントの中で一席演っていただくのがいいか。いやいや、そうしたら高座の設営はどうしようか。やっぱりしっかり「落語会」を感じてもらえるほうが良いのではないだろうか。でもそこに初めての方に気軽にお越しいただくにはどうしたらいいか……。

そうして、株主優待イベントという形での実現に辿り着きました。

いつも当社を支えてくださる株主のみなさま。
当日お越しくださったみなさま。
配信で時間を共有くださったみなさま。
これからアーカイブで体感いただくみなさま。

株主優待イベントを実現させてくださった、
スポンサーのFIRST DOMINOさま。

そして、立川談笑師匠、立川吉笑さん。

本当に、ありがとうございます。

そして最後に。
今回、廣瀬がレポートし、当日会場での受付等も行いましたが、会場の手配など含め事前準備に一番奔走して、しっかり物事を進めてくれていたのは、ひろのぶと株式会社の加納穂乃香さんでした。当日は体調不良で参加かないませんでしたが、加納さんなしには実現できなかった会です。社内のスタッフの話ですが、この場を借りてお礼をお伝えさせてください。
加納さん、いつもありがとう。

アーカイブも販売中です

現在配信のアーカイブを販売しております。

アーカイブは、仲入りなどをカットし、さらにチャプターをつけて好きな演目から見られるようにしました。

当日観られなかったというかた。
いろんな人の感想やレポートを見て気になったというかた。
もう一度あの熱気を体感したいというかた。

ぜひ、アーカイブでお楽しみください。

今度は落語の「これまで」と「これから」に踏み込む! 次は紀伊國屋書店 新宿本店!

……と、お礼や「ここまでで一つの出来事」なんて書くと、卒業式感が出てしまいますが

『令和版 現代落語論』まだまだ動きますよ〜!
まだまだ、落語の入り口。「落語へようこそ」です!

まずは、3月15日(金)
紀伊國屋書店 新宿本店でのイベント。
本書の特典冊子に解説を寄せてくださった
広瀬和生さんと談笑師匠の対談です!

こちらなんと、すでに満席をいただいております。
ありがとうございます。
また、その様子も後日レポートnoteいたします。

お楽しみに!


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よろしくお願いいたします。

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