見出し画像

福島市デジタル化推進フォーラム参加レポート

デジタル都市宣言を掲げている、福島市。最近つながりができ、11/24に開催された「デジタル化推進フォーラム」を案内されたので、福島まで行ってきました。そのレポートです。

第一部は基調講演で、FacebookJapan代表の味澤さん。福島市のご出身らしいです。第二部で、福島市、山水荘、大和交通、渋谷レックスのデジタル化先行事例の紹介がありました。

福島市のデジタル施策

https://www.city.fukushima.fukushima.jp/d-digital/chiki-digital/documents/01-2_dejitalshisaku.pdf

福島市の様々な施策の紹介がされていました。特に、おもしろいと思ったのが、「内製化の推進」です。私自身も、システム開発の内製化を自組織で行っています。とはいえ、小規模の民間企業、市のような地方公共団体で、どのようにしているのか、気になりました。交流会の時、内製化の担当者とお話することができました。その方は、なんと、エンジニアじゃない50歳の方でした。

内製化の体制とフロー

体制は、その方1人で、accessで開発。やり方は、ヒヤリングして、2,3日でなんとなく作って、確認してもらって、つくるを繰り返して、最終的な物にしあげていく。アジャイルという言葉はだしてませんが、アジャイル的なやり方をしているようです。

クオリティ管理

公的機関で、クオリティの担保は非常に大変かと思い、質問しました。開発担当者自身の信用と、依頼者には、都度何度も確認してもらうとのことでした。お互いの心理的安全性が担保されているからこそ、余計なクオリティ管理は不要のようです。

優先順位の決め方

1人での対応ですから、案件が沢山あるとかと思い、質問しました。依頼が来た順だそうです。忖度なく、前から順位にひたすらやっていくそうです。ある意味、公平です。

細かい要望に対する対応

ある程度の規模の組織ですと、謎ルール等があり、細かい仕様の対応で時間が取られることもあるかと思い質問しました。あまり受けず、本当にそれでいいのか考え、違う方法を提案することが多いそうです。
ついでに、提案方法の工夫についても質問しました。担当者の信頼貯金が高いのもあるでしょうが、年齢も関係があるとのことでした。20、30代だったら、そのような事は中々難しいとのことでした。理想はない方がよいですが、現実の現場ではやはりあるもの。現実を受け止め、それを上手く利用するのも重要。

ベンダに対する苦い経験から内製化を推進

市として、内製化に取り組むのはめずらしい事と思い、市長になぜ推奨しているのか質問しました。ITベンダに対して苦いご経験があるようです。
こういった、トップの考えもあり、内製化できるものは内製化していくということができているようです。
私は、簡単なシステムは、ノーコードツールを利用し、エンジニアと非エンジニアが一緒になって、作る事を奨めています。

この目的は、エンジニア稼働によるコストを減らすのは勿論です。しかし、重要なのは、システムをつくる経験を皆が沢山し、その知見を増やし、大きな開発に備えるためです。小さなものを沢山内製化することで、ベンダーコントロールができる人材を増やすこともできる。今後の大きな開発で、ベンダーとより価値がある開発をする、一歩を踏み出せると考えます。

現場の実直な実践

『アジャイル』、『心理的安全性』という言葉は使っていませんが、実際の現場で、実直に実践されている内容でした。

山水荘「旅館におけるデジタル活用術」

https://www.city.fukushima.fukushima.jp/d-digital/chiki-digital/documents/sansuisou.pdf

集客の変遷と、旅館内のシステムとしてのデジタル化の事例の発表がありました。面白かったのが、「旅前、旅中、旅後それぞれに対して、施策をすることが大事」というお話がありました。我々webの世界でいうと、カスタマージャーニーを作り、タッチポイント毎に施策を打つということなのでしょう。それを、実体験としてやられている事例でした。
おもしろい言葉があったので、メモ。「旅館は旅の百貨店」という言葉。地の物を料理として出し、地を体験してもらい、地の物をお土産として買ってもらう、地に根ざした百貨店という意味らしいです。所沢の知人が、狭山茶のカフェをやっているのですが、百貨店のような場にしたいと言っていたのを思いだしました。

大和自動車交通株式会社「タクシー事業の デジタル化について」

https://www.city.fukushima.fukushima.jp/d-digital/chiki-digital/documents/03_daiwakoutyu.pdf

今回の私のとっては、目玉です。何しろ、貸切バスの達人に参加頂いているお客様。

東京オリンピックの受け入れ対応がトリガーとなり、デジタル化の推進をしたのことでした。投資回収としては、まだまだとのことでした。ただ、発表の中で、「勤怠等で取得できるデータの種類が増え、確認や指導面での活用ができる。」という話がありました。システム導入は、効率化を図り、コストカットする事が目的になりがちです。データを取れるようし、立てた仮設をデータで検証し、次の施策に活かす事を繰り返しを行う、データドリブンが重要と、私は考えています。ここに関しては、あまりとりあげれてなかったので、質問しようと思っていたのですが、達人利用への感謝の挨拶程度で終わってしまいました。またどこかで、お話させていただければと考えています。

気になった事をメモ。福島市のタクシードライバーの平均年齢は、60才近くになるそうです。高齢化が進んでいます。「ライドシェア」という言葉、地方になればなるほど現実味があることなのだと感じました。

渋⾕レックス株式会社「⼈の成⻑と企業発展のための社内業務デジタル化事例」

https://www.city.fukushima.fukushima.jp/d-digital/chiki-digital/documents/04_shibuyarex.pdf

「人の成長と企業発展のための」という、タイトルが素敵。
タイトルどおりで、デジタル化の業務効率化は、新規事業の創造のために行うというポリシーでやられているそうです。
デジタル推進の施策の内、2つ気になったことがありました。①情報弱者を見捨てないフォロー、②腹落ちするまで理解してもらう。

情報弱者を見捨てないフォロー

社員の7割程度は、物流倉庫で働くパートナーの方だそうです。パートナーの方には、スマホを持っておらず、メールアドレスがない方もいます。フリーのメルアドを発行してもらうところから始まるそうです。情報弱者も見捨てない対応が、会社のデジタル化推進の土台になっているかと思います。

腹落ちするまで理解してもらう

発表の中では、この一言だけだったので、懇親会でどのような事をしているか質問させていただきました。「一人一人違うよ」とのことでした。評価制度で何かしているかという質問に対しては、「そういうの腹落ちでない」との回答でした。この回答を聞いて、妻が話す”人参エンジン(内的動機づけ)”の事を思い出しました。

もう少し、内容聞きたかったのですが、聞けずでした。どこかで、より具体的なお話をお聞きしたいです。ただ、渋谷さんと会話していて思ったのが、1on1という時間は設けてはいないのだろうけど、1on1的なものを、自然にやれていると推測しました。

全体の感想 

実体験の泥臭さ

IT系の方がよく使う言葉、アジャイル、心理的安全性、信頼貯金、UX、ジャニー、仮説検証、データドリブン、1on1、内的動機づけ、そういう言葉は使わず、実体験として実践され、自分の言葉で話されていました。

勉強会だと、イケてる人がイケてる感じに話す感がでてしまいがちです。こういった地場の方のお話は、実体験の泥臭さがでていて、腹落ち感が強かったです。参加しているコミュニティで、こういった地場の方にお話いただく企画を、今後増やしていきたいと思います。

福島という土地柄の情報システムは災害対応が重要

福島という土地柄なのか、"災害時対応"、"危機管理"という言葉が必ずでてきました。福島における、システム導入では、設計時の重要なファクターなることを知りました。福島の現場を知る良い機会でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?