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あなただけの町 中/ナチョスの短編
町の縮小理由には町長が絡んでいた。
町に何か世界で一番のものが欲しい。
広大で欲しいものなら全てが町の中で手に入ったのに、町長は"一番"という言葉にこだわったった欲深い人間だった。
その結果、世界で一番巨大な映画館を建てた。
その建設費用は増え続けていたにせよ、町民の税金で賄えるものではなかった。
唯一の方法が、町の一部を売ることだった。
そして町は小さくなった。
縮小された場所に住んでいた町民は、隣町の町民になった。
その結果、縮小が進めば進むほど、町民はどんどん減っていった。
町長は、縮小したとしても以前よりも魅力的な町になるのだから、町に移住する人も、訪れる人も増えるだろうと考えていたがその数字は減るばかりだった。
住民は減る一方で、映画館の大きさは他の町に更新され、町長はやけになって今度は人口の森を作ったが、その後よその町で人口ジャングルが作られた。
またやけになった町長は…
という具合に計5回の縮小を繰り返した。
町の人の数は、580人にまで減っていた。
町長も以前の町長ではなく、新しい若い女性の町長に変わっていた。
母は5回目の縮小後に天国へ旅立ち、私は一人になった。
もちろん寂しかったけれど、町の人たちが優しくしてくれた。
たったの580人しかいない町民はみんな顔見知りで、知らない人はいなかった。
森に住み着いた小鳥たちのさえずりは、昼と夜の分別なく一日中聞こえた。
しかし不思議と耳障りではなく、むしろ聞こえないと不安になるほどだった。
美術館もレストランも、どんな仕組みでできているのかを誰も理解をしていなかったし、しようともしなかった。
自分にとって便利で、手軽だったらそんなものは気にならないものだ。
私は大学生になり、毎日隣町の大学に通った。
大学2年生の冬、ある病気が世界で流行した。
流行病が少し落ち着いた頃、私は熱を出した。
最初はただの風邪かと思ったが、もしかすると流行病に感染してしまったかもしれない。
検査をするために病院に行かなくてはいけなかったが、病院も今では隣町のものなので、隣町の病院に診察が可能かどうか電話を掛けた。
すると、私の家にお医者さんの先生が直接診に来てくれると言うのだった。
家で待機していると、電話をかけた1時間後に先生が家にやって来た。
そしてこの時、私は検査結果よりももっと重大な真実に気づくことになるのだった。
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