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「親切」と「不親切」加減で子どもを伸ばす

以前、小学校高学年のある生徒が、
「理科が大好きだったけど、先生が変わって嫌いになった」
と言うので理由を聞くと、
「わからないところがあったから聞いたら、『授業で話しましたよね、聞いてなかったんですか?』って言われて、結局教えてくれなかった。聞いてないわけじゃないけど、聞いたことを全部覚えられる天才なんているわけない」
と。

正論すぎて「そうだよね」って同意していると、周りの子たちも「私もその先生のせいで理科を嫌いになった」と口々に言い出しました。その場にいた子たち全員が、同じような理由です。その後も、頻繁に口にするんだから、先生に非があるとしか思えない出来事でした。

最終的に教えてくれないって、「意地悪か!」とツッコみたくなる。教えない理由がわからない。質問に来るだけでも興味を持っていると言うことなんだから、ほめる対象になると思うのですが。

「不親切な指導」はなぜよくないか

子どもに限らず、人が伸びていくには「適切な指導」による「適切な学習」が必要です。「適切な指導」が難しいのは、人によって、時によって「適切」が違うからです。

やってしまいがちなのが、「親切」か「不親切」の両極端に振れる指導。前述の理科の例は、完全に「不親切」な指導。

先生が理由で好きな理科が嫌いになるなんて、その子の人生を変えてしまったことにきっとその先生は気づいていないのでしょう。「不親切」が教育的によくないのは明確です。
愛情も何もない。教育に携わるべきじゃないとさえ思います。

というわけで、「不親切」は詳述する必要もないのですが・・・

わざわざ「教えてあげない」など、「不親切」にしたら、学習面より情緒面で異常をきたしそうです。「不親切」までいかずとも、「自由」と言って放置すると成長が子ども任せになります。

自習できる能力を持っている子なら、周りの環境からどんどん学んでいくでしょう。でも、自習力、学習力が身についていない子もいます。自習力を持っていても、周りの環境が学べる環境ではない場合もあります。

「不親切」や放置という、「親切」の対極に振れる理由はどこにもないでしょう。

「親切な指導」はなぜよくないのか

一方、「親切」はよさそうです。人に親切にするのは、やさしさや愛情からですし。本人に何も悪気はありません。
「親切」自体にはデメリットがないからこそ、やっかいです。

「親切」に教えることも、その子のためを思ってのことです。何が良くないかというと、「親切」に教えてあげちゃうと、本人が考えることを阻害する可能性があるからです。

たとえば、懇切丁寧に解法を説明した後に、
親「わかった?」
子「うん、わかった」
親「じゃあ、やってみて」
子「・・・できない」
ということがよく起こります。

「わかる」と「できる」のちがいです。
子どもたちは「親切」に教えてあげても、できるようになるとは限りません。大切なのは「わからせる」だけではなく、「できるようにする」指導です。

「親切な指導」だと、「わからせる」ことに注力してしまいがちなんです。でも、人から聞いた話を全部覚えることはできません。
以前、とある講習会で90分の講義が終了した時に、講師が
「では、今まで話した内容を隣の人と5分間話してください」
と言われて、みんな「えっ」ってなりました。メモなども見ないで話すと、5分も話せません。

人の話を聞いたときの人間の吸収力なんてそんなもんです。

「不親切ではない指導」が最適解になりやすい

「不親切」はもちろん、「親切」でもよくないとすると、どうしたらよいのか。

自分で考えてがんばれば解けるギリギリのラインを「スイートスポット」と言います。「スイートスポット」での学習をし続けることが、人が最も成長できると言われています。

「放置する」でも「教える」でもなく、「スイートスポット」になるよう課題を調整したり、声をかけるのが最適解です。

と言っても、「スイートスポット」を見つけるのは簡単ではありません。教育に携わっている人でも難しい。
そんなときは、子どもにとって「不親切でない」ポイントを探すとよいと思っています。

前述の理科の質問をされた場合は、
「どこまでわかった? ここはわかってる?」
など生徒に質問をする。または、
「こんな話していたよね?」
とヒントを出すなどして、全部教えるのではなく、自分で気づいたり思い出したりできるように促すことです。

子ども自身で余裕で解けるところまで説明しちゃうのは余計な親切です。自力で解けないところまで、任せっぱなしにするのは「不親切」です。「親切」と「不親切」の狭間を探す。それが「不親切ではないところ」。

子どもたちが自分で考え、なんとか答えを導ける最低限のヒントや問いを発する。すると、スイートスポットでの「適切な学習」となり、学習効果も上がるし、意欲も向上するはずです。


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