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#6 『数学に感動する頭をつくる』 栗田哲也

すっごくいい本なのに、タイトルで損しているなぁという本。

タイトルだけ見たら、
「数学をどう学ぶか」
が書かれているように見えます。数学に感動できるというのは、ちょっとマニアックな印象を与えてしまい、敷居が高くなってしまいます。

内容は、本質的な教育の話で、数学に限った話だけではない。第一、冒頭で「数学力なんてものはこの世にはない」と断じていますし。

この本がいいなと思うのは、大きな言葉を分解してくれていること。

「学ぶ」のステップ

1.学びたいと思う
2.学ぶのに適した環境を整える
3.理解する
4.真似する・作業する
5.教えられたこと以外に自分で考え工夫する
6.展望を得る

まずは意欲なんです。意欲が芽生えていない子どもたちには、ここから考えるのが賢明です。
とはいえ、「やる気が出るのを待つ」はちょっと危ない。ずーーーっと出ないこともあるから。やりながら待つがよいと思います。

経験が少ないほど、あらゆることに興味を持って意欲的に取り組めるとも言えます。与え方が重要です。

「学ぶのに適した環境を整える」も大きなステップです。
「適した環境」を探すことって意外と難しい。これは、机があるとか、机の上がちらかっていないとかいうレベルの話だけではないでしょう。
たぶん一番有効なのは、身近に「学んでいる人」がいるかどうか。

今、盛んに求められているのが、「教えられたこと以外に自分で考え工夫する」というステップです。自然とこのレベルにいける子もいれば、いつまでもいけない子もいます。
管理型の指導者ではできないアシストだから、コーチが誰で、どんな言葉をかけるかがとても大切になります。

失敗の重要さ

今の数学教育の最大の問題点の一つは、生徒に失敗の機会を与えないということです。本当は膨大な量の失敗の中から生徒は反省に反省を重ねていかないと、真の実力はつかないものです。

これこそ、数学に限ったことではない話。
「正解主義」というものです。

過程より結果に着目するから、失敗したくない気持ちが強くなります。失敗したとしても、失敗から立ち上がったことや反省した事実やその内容を認めていくのが大事です。

子どもたちが結果だけでなく、過程に着目できるようになると、結果にもつながりやすくなります。

ある子が小学校の「通信簿」が前の学期より悪くなっていて落ち込んでいました。こういう価値観がまずいよなーと思います。「通信簿」なんて、担任の先生のさじ加減で客観的じゃないので。

学校の成績が落ちた(実際は落ちているかわからないが・・・)ことよりも、結果で自分を評価してしまう価値観が形成されていることが心配になります。

暗算力を鍛えること

第一に子供の頃(五歳から小学三年生頃まで)に徹底して暗算能力を身につけさせるとよいだろう。この段階ではわけ(理屈)なんてわからなくてもよいから、頭の中で何かをさせるという訓練をすると良い。

暗算って計算が速いというだけでなく、頭の中で数を保持して、数を操作をすることが重要です。思考する体力やテクニックの基礎になるからです。

子どもがかけ算ができても、どんなときにかけ算を使うかわかっていないと心配になる方がいますが、後でいいというのも同意。

ただ、「計算が速くなる」だけでは使い道が限られてしまいます。「計算が速くなる」過程で、頭を使うことが上手になるように指導するのがベストです。

暗算の本がバカ売れしています。

おみやげ算に特化した本がなぜこんなに売れているのか不思議です。でも、特化した分、各パートの練習問題が豊富でちゃんと3回くらいやればマスターできるでしょう。

ちなみに、「おみやげ算」は、うちの教材にも単元としてあります。だから、生徒はある程度習熟するまで学習します。でも、2けたのかけ算ひっ算を知っている子は、「ひっ算のがいい」って言って、ほとんど使わないんですが。

賢い親と賢い教師

賢い親はさりげなくコーチする。賢くない親は居丈高に管理する。

よい教師は生徒に考えさせ、悪い教師はわかりやすく教える(よい教師は生徒のアタマを使い、悪い教師は自分の頭だけを鍛える)。

結局、思考することを楽しめる子でないと、数学は楽しめないということです。数学だけじゃないですが。

子どもたちが正解を出すためではなく、頭を使って考えるには何て言えばいいか。知識を教えるのではなく、「考えること」の楽しさを子どもたちに体感させられる人になろう。

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