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ショートショート:思い出

「別れよう」
彼女から放たれたその一言で、3年間にわたる僕らの関係に終止符が打たれた。
大学に入学してすぐ出来た彼女。
大好きだった。
止めたかった。
でも出来なかった。
電話越しにごめんなさいと泣く彼女の声を聞いて、彼女を幸せにできる男は僕ではない事を悟った。


電話を終えた後、僕も泣いた。
ひたすらに。
それから酒を飲んだ。
浴びるように。
そして眠った。
泥のように。


翌朝、スマホの画面を見る。
通知は0件。
少し期待していた。


写真アプリを開き、彼女との写真を消す。
1枚、また1枚と消す。
かなりの枚数があった。
しかし、やはり1枚ずつ消す。


やっと消し終えた頃、3時間が経っていた。
しかし、それは一瞬の出来事の様に思えた。
4,000枚近くあった写真は、たった200枚になっていた。
まるで記憶を失ったような感覚に、また目の奥が熱くなってきた。


憂鬱だった。
何もしたくなかった。
でも大学へは行った。
3限からだが、遅れてでも行った。


それから1年後、僕は社会人になった。
心にポッカリと空いていた巨大な穴も、ようやく思い出と言うものが埋めてくれた。
最近では出会いも増え、新しい恋にも踏み出せそうだ。


とある夜。
会社の同僚から誘われて、3対3の合コンに参加した。
酒が進み、会話が盛り上がってきた頃、1人の女性が聞いてきた。
「どんな子がタイプなの?」
「そうだね。落ち着いてて、謙虚で、穏やかな子。でも、たまにはしゃぐ姿が可愛くて、そんな姿を見て愛おしく感じる子かな」


言い終わって気がついた。
全部元カノの好きなところだった。


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