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海外でお好み焼き屋をやってみて思った2020年オリンピックに向けて飲食店に必要なこと5つ。

パリでお好み焼き屋を開店して2年半が経ちました。開店当時に日本テレビ『笑ってコラえて!』で取り上げていただいたおかげで、沢山の知人友人もできましたし、炎上じゃないけど知らない人に「声が嫌い」レベルでdisられ心理的にも強くなりました。その後2年半、試行錯誤してきて、2020年の東京オリンピックで飲食店が求められることが少しわかった気がするので、先輩方を差し置いてちょっとお話しさせていただきたく思います。


1、宗教は一応気にした方がよい。

うちのお客さんの7割はフランスに住む、フランス語を話す、多民族です。日本人にとって、フランス人=白人だと思うのですが、フランス人と言っても、ヨーロッパ系(スペイン系、イタリア系、イギリス系、ドイツ系…)、アフリカ系(植民地だった関係で)、アジア系などなど、沢山の人種が相まってフランス人を形成しています。そして、残りの2割がツーリスト、1割が日本人のお客様です。

宗教も様々です。カトリック、ムスリム、ユダヤ、無宗教、など、いちいち聞くことはありませんが、ムスリムには“ハラル”、ユダヤには“コーシャ”と呼ばれる、食に関する規律戒律があります。

うちでは、それに“ちょっと”基づき、鉄板を2枚使用し、1枚は豚を調理する鉄板、1枚をそれ以外の調理に使う鉄板と使い分けています。焼き油も、日本だとラードを使用するところが多いのですが、ごま油を使用しています。

戒律にきっちり従う方たちは、豚を扱ううちの店にはまず来ないのですが、ゆるめの人たちは来てくれます。その中で、洗えない鉄板はこのように使い分けてるよ!と言うと喜んでくれます。

とは言え、ハラルの基準は人それぞれのようで、国を出ればゆるく考える人も多々いるようです。イランから来たお客さんは豚食べてましたし、レバノンの人たちは、豚も食べたし、お酒も飲んでました。本人次第なので、こちらはそれをちょっと助けるレベルでいいと思いますが、一応豚を使用してる場合は“豚さんマーク”を付けるなどしてあげると喜ばれると思います。

2、アレルギー表示はした方がよい。

フランスでは最近これが義務化されたのですが、アレルギーを起こす可能性のあるものにはその表示をしてあげることが大事です。アレルギーでアナフィラキシーショックを起こして大変な事態になったら、せっかく海外から来てくれたお客さんに良い思い出として帰ってもらうことができません。

うちの店で多いのは、グルテンアレルギーの方たち。はい、お好み焼き屋なのに、小麦粉が使えません。なので、最初はじゃがいもで代用、そののちは、餅米粉で代用しています。グルテンフリーにするには手間がかかるので、プラス1ユーロね!と言っても、受け入れてもらえます。最近は、グルテンフリーダイエットをする方も多いので喜ばれる内容の一つです。

また、気をつけなければいけないのは、お醤油にもグルテンが含まれるということです。ポン酢ももちろん含まれます。最近ではグルテンフリーのお醤油(たまり醤油)もあるので、それを1本お店に置いておくと安心でしょう。

3、ベジタリアン対応はしたほうがよい。

上記に加えて、うちでは魚介を含む商品にはMマーク、完全に野菜だけの商品にはVマークなどの表示もしています。MやらVを、商品名の横に色を変えて表示しているので、ベジタリアンのお客さんにも喜ばれます。

日本人にとって難しいのは、ベジタリアンは複数の種類が存在することです。魚出汁OKな人から、卵がダメな人まで様々です。対応は難しいと思うので、完全に野菜だけだよ!!というマークがあれば、便利だと思います。うちで言うと、いんげんの胡麻和えとか、レンコンきんぴらとか、枝豆、冷や奴、キャベツマリネはベジタリアンメニューです。

ベジタリアンの人は、そういった単品メニューを複数頼むので、客単価が上がりやすい傾向にあります。

詳しくは、Wikipediaのベジタリアニズムが参考になります。

4、写真を使ったメニューにしたほうがよい。

外国人にとって、寿司、てんぷら、ラーメン以外は未知の食べ物だと言っていいでしょう。お好み焼きもわからないから、とりあえず麺!=焼きそばを頼む人が多いので『うちのスペシャリティはお好み焼きだけど?』とお声かけするようにしています。未知の食べ物は怖いので食べないのです。そこで役立つのが写真です。

お好み焼きの写真をメニューに載せて、プラスこれがうちのお勧めです!と書き、お声かけもする、それでやっと注文に至ります。既に食べたことがある人たちは大丈夫なのですが、新規のお客様には、小さくてもいいので写真を沢山用意したほうがよいと思います。

5、でもやっぱり人と人だから、元気に笑顔で物怖じしないことが大事。

日本人は一般的に英語が苦手なので、外国人に対して引け腰な部分があると思います。でもわかんなくてもいいから、笑顔で、元気にお声かけして、わかんないなりに単語をつなげた英語でいいから、話しかけてみると笑顔で返してくれると思います。(経験談)そして役立つ写真入りのメニュー…。

2年半前、本当にフランス語が話せなくて、お客様との会話もままならなかったのに、ここ最近では会話も難なくできるようになりました。初期の私は、単語をつないで、でも喜んで帰ってほしいとの一心で、朴訥な話し方をしていたと思います。それでも美味しいと言ってお客様に帰ってもらえると、こちらもとても満足した気持ちになりました。流暢に話せなくても、全く問題ありませんでした。物怖じせず、怪訝な顔をせず、明るく元気に、ハロー!と言ってみましょう。

レストランで使う英語の本も沢山出ているので役立つと思います。
レストランサービス英会話

CD付 デイビッド・セインのデイリースピーキング これで安心!飲食店の接客英会話

以上です。

※追記※
農水省が飲食店向けインバウンド対応ガイドブックを発表してました。
詳しくは以下をどうぞ。

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/pdf/pdf/inbound_16_0329.pdf

そんなことわかってるよ!!的なことも多いと思うのですが、この2年半の経験で感じたことをつらつらと書かせていただきました。もし少しでも参考になったら幸いです。
OKOMUSU
店主 田淵寛子


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