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ドル安トレンド変わらず?!植田総裁、パウエル議長発言受け

閉会中審査での植田総裁の発言

植田総裁、思ったよりもタカ派スタンス崩さず、の印象。株価急落は米経済指標の下振れを受けた世界的なドル安と日銀の政策変更が背景にあった、と植田総裁は、日銀の政策変更だけが原因ではないとしています。

また「金融市場は引き続き不安定な状況で、極めて高い緊張感を持って注視していく」としながらも「経済・物価見通しが実現する確度の高まりが確認できれば、金融緩和の度合いを調整する基本的な姿勢に変わりはない」と利上げを正当化、今後の利上げに含みをもたせた印象です。議員らの質問のベクトルが拙速な利上げとタカ派豹変による金融市場の混乱への説明を求めるというより、株や円安バブルは利上げが遅れたせいではないかと論点がズレていたことも、政策転換に踏み切った植田総裁へのアシストとなっていたように見えました。

株、為替市場は年内の追加利上げがないと判断?

8月7日の講演で慎重な姿勢を示した内田日銀副総裁の発言の整合性を問われ、直接の説明を避けたものの「金融政策運営の考え方で、内田副総裁と違いはない」と強調したことが、市場には安心感となったとの指摘もあり、週末23日金曜の日本株市場に波乱はありませんでした。

日経平均日足 植田総裁発言で崩れることはなかった

ドル円相場は閉会中審査が始まるとやや円高へ。しかし、大きく崩れることはありませんでした。むしろ、ジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演で急速に円高ドル安進行となっています。黄色で囲った部分が9:30~15:30、閉会中審査で植田総裁が発言していた東京時間のドル円推移。

ドル円相場 5分足

ドル円相場、日足でみると下落基調のトレンドに変化なし。

ドル円日足

パウエル議長「利下げの時が来た」政策ピボットを明言

「政策を調整する時が来た。方向性は明確であり、利下げのタイミングとペースは今後入手するデータ、変動する見通し、そしてリスクバランスに左右される」
「インフレ率が(当局目標である)2%への持続的な道筋をたどっているという確信を深めた」

9月FOMCでの利下げ開始を明言した、として金融市場はドル金利低下、ドル安、株高へと動きました。パウエル議長が言うまでもなく、市場はすでに9月の利下げをほぼ100%織り込んでおり、全く新たな材料ではなく驚きはありませんでしたが、市場はこれを材料出尽くしと捉えるのではなく、さらなるドル売り、株買いへと動いたのです。ダウ平均、S&P500は再び史上最高値を更新しそうです。

米国主要株価インデックス 

前回のNOTEで英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長のモハメド・エラリアン氏が、年内1%もの利下げ織り込みは行き過ぎで「問題だ」との見解を表明していることを紹介しましたが、パウエル議長の講演が政策ピボット(転換)を明確に示すものだったため、市場は楽観に自信を深めたようです。パウエル議長は利下げスピードについては触れていませんが、金利先物市場は、パウエル議長講演後も年内1%の利下げ織り込みのまま変化がありません。12月FOMCの利下げでFFレートは4.25-4.5%になると考える投資家が多いということです。

米金利だけではない世界の金利低下、金利上昇は日本のみ

米国債利回り

パウエル議長講演受けて23日金曜は米金利再下落。しかし金利低下は米国だけではありません。世界の短期金利は低下しています。日本だけがジワリ金利上昇。

主要国の短期金利推移

世界の市場金利の低下は、世界の中央銀行の政策金利引き下げが始まったためです。米国はいよいよ9月からですが、欧州、英国、カナダ、NZ,スイスなどの主要先進国はすでに利下げに踏み切っています。

FRB(米国):RBNZ(NZ) : BOE(英国):BOC(カナダ)
RBA(豪州):ECB(欧州):SNB(スイス):BOJ(日本)

これから利上げをするのは日本だけです。これが日米、日欧、日英~金利差縮小の思惑となってドル円、クロス円下落につながっています。しかし絶対的金利差では円買いより円売りのほうがまだまだ優位ではないか、と思うのですが、市場にはファッションというのがあって、ある時は絶対的金利差が材料となってトレンドが続くこともありますが、それを全く無視することもあります。今のファッション(テーマ)が絶対的金利差ではなく、金利差縮小にあるということなのでしょう。そして、そのファッションを劇的に変えてしまったのが市場が予想するより早かった日銀の利上げということです。

投機筋は円キャリー・トレードを再開していない

FOREX WATCHER IMM通貨先物ポジション

先週8/20(火)時点(最新データー)の通貨先物市場の投機筋ポジションは13日の週からほぼ変わらず。投機筋が新たに円売りしている気配はありません。ドル円の上値の重さの一因とも言えるでしょう。

ファションは新興国「東南アジア」へ?!

先週のNOTEでドルキャリーが始まった可能性について書きましたが
米利下げ思惑、米ドル安は株式市場にも新たなファッションを生み出しているようです。

インフレやドル高の重荷が外れる新興国のうち、経済成長率の高い東南アジアへの資金流入が増え始めた。

米国と東南アジア各国との金利差が縮小し、為替相場も反転。東南アジア通貨は対ドルで上昇し、マレーシアリンギは1年4カ月ぶりの高値圏にある。

株価上昇と通貨高が重なり、MSCIが算出する東南アジア諸国連合(ASEAN)の株価指数はドル建てで8月に6%高となった。米S&P500種株価指数の2%と比べ高く、ドルで運用する海外投資家からみたリターンの改善が著しい。

絶対的金利差からはドル円相場で円キャリートレード再開となっても不思議はなく、円安再開となるなら日本株にもさらなる上昇が見込めます。しかし、ドル円相場に円キャリーのトレンドが戻らない中で、東南アジアなど新興国の株がライバルとして台頭。日本株の割安是正、円安を後ろ盾に買われてきたトレンドが戻るにはもう一つ材料不足の印象が…。自民党総裁選で新たな首相候補が思い切ったマクロ安定化政策を発表すると言うなら期待できるのですが、どちらかというと不安要素のほうが大きいですね。

日経平均先物、夜間取引では米株高に連れ高となることができず、23日(金)東京市場終値よりやや安く引けています。円高を嫌気したものと思われます。23日、現物市場の日経平均終値38364.20円 先物NY引け値38280円

日経平均先物日足

146.07円で打診買いしたドル円はあっけなく撃沈、ロスカットです(T_T)
パウエル議長講演でドル円急落をみて、再度ドル円ショートを作り直しました。コスト145.12円。

先週利確してしまったポンドドルも、東京時間にポンドの調整が深くないとみて、1.3095ドルで買いなおしました。

どちらもコストが悪化(買値、売値が前のポジションより悪い)していますが、「ドル安」のトレンドが継続していると見て乗り直しました。
DXY下落のトレンドはまだ続きそうです。

通貨インデックス比較 2024年1月~

ドル安はゴールド上昇トレンドを加速させている

ドル建て金価格は史上最高値圏に。

COMEXゴールド日足

米国が利下げサイクルに入るとゴールドは上昇を強めます。
2000年前半のFRBの利下げ開始から利下げ終了時までは金価格は31%上昇、リーマンショック時の利下げサイクルでは39%も上昇しました。パンデミック利下げ時は5%程度しか上昇しませんでしたが、この時は暴落した株式市場が利下げにより猛烈にリバウンドしたため資金は株式市場に流れた印象が強かったですね。さて、9月からいよいよ米国は利下げサイクルに入ります。足元で株式市場は史上最高値圏にあります。

FFレートと金価格~利下げサイクルでゴールド上昇

インドの輸入関税引き下げで実需インドの金買い期待

インドはゴールドとシルバーの輸入関税を7/23から大幅に引き下げることを発表しました。

ゴールド地金15%→ 6%へ(9%)
ドーレ14.35%→5.35%へ(9%)

また長期保有税優遇を36ヵ月から24カ月へ縮小、課税レート20%から12.5%へ引き下げました。これにより、インドのゴールドはディスカウントからプレミアムへと動いています。(インド国内の金価格が国際金価格と比較して割安ならディスカウント、割高となればプレミアム)

インドの金価格は輸入関税引き下げで一気にプレミアムへ

インドでは一般的に、婚姻時に花嫁が花婿に持参金を支払う習慣がありますが、これがインドの文化的なゴールド需要の強さのひとつとなっています。ディワリと呼ばれる収穫祭でもゴールドの購入が増加しますが、インドの旺盛が金買いはインドの貿易収支の赤字の要因となっているため、インド政府はゴールド輸入に高い関税をかけていたのです。

インドの貿易収支 恒常的な赤字はゴールド輸入も一因

しかし、輸入関税の高さからインドでは金の密輸入が増加。お陰で取れる税金もとれなくなってしまっているということで、関税を引き下げる決定を下しました。これで密輸しなくてもインドは正々堂々金を輸入できます。ということで、インドの旺盛な金の実需買いも金価格を押し上げていくと考えられます。

今週の主な予定

26日(月)
中国中期貸出制度(MLF)1年物金利
英国市場はサマー・バンク・ホリデーのため休場

27日(火)
中国工業企業利益(7月)
ナーゲル独連銀総裁、講演

28日(水)
豪消費者物価指数(7月)
マン英中銀委員、講演
ボスティック・アトランタ連銀総裁、経済見通しについて講演

29日(木)
月例経済報告(8月)
ドイツ消費者物価指数(8月)
米GDP改定値(第2四半期)
米新規失業保険申請件数(24日終了週)
ジョルダン・スイス中銀総裁、講演
ナーゲル独連銀総裁、講演
レーンECBチーフエコノミスト、討論会参加

30日(金)
日本雇用統計(7月)
東京都消費者物価指数(8月)
日銀国債買い入れ日程(9月)
外国為替平衡操作実施状況(月次ベース、7月30日-8月28日)
豪小売売上高(7月)
ユーロ圏消費者物価指数(8月)
米個人所得支出(7月)
米個人消費支出(PCE)価格指数(7月)
米ミシガン大学消費者信頼感(8月)
シュナーベルECB理事、講演

週末の米PCEに注目ですが、今週はあまり大きなイベントがありません。ただ、月末週となるためリバランスなど特殊玉にも留意しておきたいですね。

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