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米国市場は落ち着き取り戻したか?今週CPI,小売売上高に注目

通貨先物市場の円キャリーはほぼ解消されたが

8/9日(金)NY引け後に発表されたCFTC建玉明細。IMM通貨先物ポジションの円キャリーは8/6(火)時点で1.1万枚まで減少していました。7/2時点が今回の円キャリーのピークで円ショートネットポジションは18.4万枚にも上っていましたが、前回ほとんど解消されました。

FOREX WATCHRから

円キャリーポジションは果たしてこれが全てでしょうか。これはあくまで通貨先物市場で通貨のトレードをしていたCTAなどの投機筋のポジションにすぎません。円キャリーというのは、金利(コスト)の安い円を借りて、金利の高い通貨を始め、利回り、益回りの良い株、債券などあらゆるリスクアセットに投資する取引のことであり、どこの誰がどのくらいの規模でそのような取引を行っているのか全容は誰にもわからないのです。通貨先物市場のポジションはその縮図として指標とされることがありますが、今回は過去最大規模に円ネットショートポジションが積み上がっていたために注目度が高かったと言えます。この縮図である通貨先物ポジションの円キャリーポジションがほぼ整理されたことで、さらなる円高リスクは小さいと考える向きもありますが、円キャリー取引が米株を押し上げてきたという側面があるなら、米株下落は、まだ整理されていない円キャリーポジションの手仕舞いの連鎖を生むリスクが残されていると見ることもできます。今回の日本版ブラックマンデーは米国株市場の急落をもたらしましたが(雇用統計の悪化がトリガーと見る向きもありますが)急騰したVIX指数は急低下、米国市場の混乱は落ち着きつつあるように見えますね。ここからは米国市場の景気後退リスクとFRBの舵取りが重要。FRBが日銀のような失敗を犯せば米株が本格的に崩れ、日本株、ドル円市場はその煽りを受けることとなると考えています。
通貨市場における円キャリーポジション考察もまちまちで、BNYメロンは100円方向への円高の可能性を予想しています。

キャリートレードの巻き戻しはさらに進む余地があると、BNYメロン・キャピタル・マーケッツが指摘。円は時間と共に1ドル=100円に向かって上昇する可能性がある
JPモルガン・チェースは、キャリートレードの巻き戻しは75%完了したとみており、シティグループは、キャリートレードは危険水域を脱したが、中国の人民元は圧迫されるリスクがあると指摘している。(8月9日 14:28)

100円というのはいささか大げさに感じますが、購買力平価の概念から考えると円安はあまりに行き過ぎており、まだまだ水準訂正があっても不思議ではないのかもしれません。CPIで見た購買力平価は108円。変動相場制が始まってからこの購買力平価の上限をこれ程大きく、長く上回っていることはありませんでした。ただ、通常購買力平価を基準に取引、トレードする投資家はいませんので、これはあくまで参考まで。

国際通貨研究所

日本市場から逃げ出した海外勢は戻ってくるか

再びドル円が100円方向に円高となってしまうと日本株はさらなる下落を強いられ、再びデフレに戻るリスクが高まってしまいます。財務省は円買い介入を行い、日銀は市場のコンセンサスである秋をまたずに利上げに踏み切った、日本は円高を望んでいるのか?と海外勢に誤解されなければいいですが。2024年、バブル時の高値を抜いて42,426円まで上昇した日経平均。日本株上昇のエンジンは海外マネー流入でしたが、海外勢は日本株買いのマネーを全て手仕舞っただけでなく売り越しに転じています。

海外投資家は7月第5週(7月29日〜8月2日)に、株価指数先物を含めて1兆617億円を売り越した。ヘッジファンドなど短期マネーの資金流出が目立ち、2024年初来からの累計で売り越しに転じた。
~7月第2週時点では2.5兆円超の買い越しだった。第3週からの3週間で売越額が3.4兆円となり、全てを吐き出したことになる。

記事中にあるように、オプションの影響が大きかったことも背景。長期運用投資家はむしろこの暴落で買い増ししていたというのは心強い。

長期運用を前提にした年金基金などを顧客に持つ長期投資家は動じていない。現物株に限った年初からの累計額をみると、ピークの5兆円弱からは減ったものの、なお3兆2681億円の買い越しだ。

ただし、安心はできません。世界最大の資産運用会社、米ブラックロックが「日銀の間違いのリスク」に言及し、日本株投資判断の見直しに入ったとあります。海外勢が日本株投資に対する不信感を持ってしまったというなら利上げを早まった日銀の罪は大きい。

世界最大の資産運用会社、米ブラックロックは5日付のリポートで「日銀が政策判断で間違いを起こすリスクが高まるなか(日本株に対する)確信は下がっている」として、日本株への投資判断の見直しに入ったことを明らかにした。検討の上でオーバーウエート(強気姿勢)維持を決めたものの、長期投資家の間でも日本株への警戒はじわりと出ている。

また、短期筋もこのボラティリティではとてもリスクを取れません。日経VIはまだ45.28で高止まり。むしろ日本株を整理しろというサインが点灯し続けている状態です。

米国市場は落ち着きを取り戻しているか?

S&Pオプション市場から算出されるVIX指数は急速に低下、米国市場は落ち着きを取り戻しつつあります。米国株市場にはここからリスクを取れると考える投資家も少なくありません。

VIX指数

景気後退のリスクは高くない、と。確かにアトランタ連銀のGDP予測モデル「GDP NOW」は7-9月期のGDP予想を2.9%としています。(8/8時点)4-6月期のGDPは2.8%でしたが、それを上回る予想です。利下げの必要などなさそうにも見えますね。景気後退の定義は「2四半期連続でマイナス成長」です。7月の雇用統計の失業率の悪化からサームルール発動(1年以内にリセッション入りの可能性)と市場は騒然となりましたが、一体いつからGDPがマイナス成長となるのか、、、?

米国GDP成長率推移


ちなみに日本のGDP推移、1-3月期はマイナスです。今週8/14に4-6月期GDP速報値が出ます。ここでマイナスなら日本は米国の定義でいうなら景気後退に入っているということです。利上げ開始時期としては適当ではないと思われますが、、、。

日本GDP成長率推移

今週の注目は14日に発表される米国7月CPIです。先月発表された6月分CPIは予想を下回り米金利低下、ドル円下落となりました。そこに畳み掛けるように日本の通貨当局の円買い介入があったのは記憶に新しいですね。今回のCPIはややリバウンドする見込みのようです。

7月の米CPI、総合指数とコア指数は前月比0.2%上昇か~
いずれも6月に比べ伸びが加速したとみられるが、前年同月比では引き続き、2021年初頭以来最も鈍い上昇ペース

前回7/11は前月比▼0.1%となったためネガティブサプライズとなりましたが、今回の7月分の予想は前月比+0.2%。それでも9月利下げ予想に変化はないだろうと言うのがコンセンサスのようです。
13日にはPPI企業物価指数、15日には小売売上高が注目されますね。
米国の政策金利動向を占うインフレ指標と、米GDPの7割を占める個人消費動向を占う小売売上高は、下振れのサプライズがあれば再び大幅利下げ催促機運が高まり米金利低下、米株市場の乱高下がありそうですが予想より良かったりすると、むしろ米景気への安心感から米株上昇、米金利上昇、ドル円上昇を招く可能性がありそうです。

13日PPI 前年比 前回2.6% 予想
     前月比 前回0.2% 予想0.2%
コアPPI   前年比  前回3.0%
     前月比  前回0.4% 予想0.2%

14日CPI  前年比 前回3.0% 予想3.0%
    前月比 前回▼0.1% 予想0.2%
コアCPI 前年比 前回3.3% 予想3.2%
      前月比 前回0.1% 予想0.2%

15日小売売上高 前月比 前回0% 予想0.2%  
       コア  前月比 前回0.4% 予想0.1%  

ノーポジです。

今週の主な予定

12日(月)
日本市場休場、山の日振替休日
米NY連銀インフレ期待(7月)
ハウザー豪中銀副総裁、講演
OPEC月報

13日(火)
日本国内企業物価指数(7月)
豪賃金指数(第2四半期)
英週平均賃金(6月)
米生産者物価指数(7月)
ボスティック・アトランタ連銀総裁、経済見通しについて講演

14日(水)
NZ中銀政策金利・オアNZ中銀総裁 記者会見
英消費者物価指数・生産者物価指数(7月)
米消費者物価指数(7月)

15日(木)
日本GDP速報値(第2四半期)
豪雇用統計(7月)
豪消費者インフレ期待(8月)
中国中期貸出制度(MLF)1年物金利
中国新築住宅価格・中古住売価格・不動産投資(7月)
中国鉱工業生産・小売売上高(7月)
英GDP速報値(第2四半期)
米小売売上高(7月)
米NY連銀製造業景気指数・フィラデルフィア連銀景況指数(8月)
ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、イベント講演

16日(金)
英小売売上高(7月)
米ミシガン大学消費者信頼感(8月)


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